新しい時代。新たな仲間。
「ん、んー・・・。そう頑なにならなくても」
「我々勇国には、律国の魔法技術は必要ありません。それだけの事」
「その勇国の技。こちらとの融合で、更なる進化を遂げさせてやるのも、悪くないんじゃないっすか?」
「要りません」
会談は、それで終了。
律国全権大使オウザは護衛のイルマらと共に勇国王会議から退出した。
正装であると同時、防具としての耐魔防刃用ローブを脱ぎ去り、オウザは溜め息をもらした。
「中々。上手く行かないっすね」
「しかし。非常識にも思えるほどの、堅さ。あそこまで固辞する必要もないのでは?」
「もちろんっすよ。おれが勇国側の人間なら、気を持たせつつ会議をもう1年ばかり長引かせて、結局はお断り、みたいにすると思うっす。今回みたいな機会に、お互いの技術視察もしたいもんす。それを率直に断るとか、意味分かんないっす」
取り引き。貿易。なんと呼んでも良いが、今回のそれは、いつものやり取りとは違っていた。
律王の代わりに国際間の表立った行事進行にも携わるオウザの経験にも無い事だ。
取り付く島もないとはこの事。
宿すら手配されていないので、2人はこのまま帰るしかない。逗留したって良いが、向こうさんの機嫌をわざわざ損ねる気もない。
「マジ分かんないっす・・・。いかに勇国が大国の片鱗を見せてるっても。律国が本気で勇国技術を閉め出したなら、そこでオシマイっすよ。ドサなどには、勇国と技術交流をした経験があるんすから。その上で魔法技術がある律国と、本気でやり合う気なんすかね・・・」
帰路の途上。貴人用2階建て大型牛車の客席で、オウザはイルマと会話していた。
魔法技術がある。それはつまり、魔国は一時的にでも律国と組むという事。望むと望まざるとに関わらず。そして剣国は、どちらとも組まない。しいて言えば、庶民レベルでなら勇国商品を買うかも知れないが。剣を取る者なら、律国産を選ぶだろう。
戦士ヴェルグ。そして勇者メイストームのブランドは、伊達ではない。かの名剣バジーも、それなりの信頼度で評判が良い。
勇国が律国と事を構えて得るものは少ない。
そこまでの愚王が・・いや、愚かな議会が居るのか。勇国では、王の力は弱かったな。
「もしかして、勇国は、魔国と秘密裏に条約を結んでいるのでは?魔国が復権次第、相互の結び付きを強め、律国を完全に上回るために」
近衛騎士からオウザ付きの護衛になったサモンの発言。
サモンは若手のホープとして騎士団でも存在感のある人間。オウザと共に世界を巡らせる事で、近衛に刺激を与え、騎士団の引き締めと世界への視点を持たせる。
「いや・・・。まだ、魔国にはそこまでの実力は戻っていない。恐らく、20年後でも難しい。・・・勇国は何を考えているのだろう・・・?」
こちらは魔研のベテラン、ハセガワさんだ。かの魔力自動車の開発者の1人であり、外部機関との交渉に長けた人物だ。ゆえにオウザと共に諸外国に出向いている。魔法学校では、オウザの遠い先輩でもある。
「あの王城の徹底的な秘密主義に何かがある。私はそう感じました」
オウザ付きの護衛。かつては客将の立場であったイルマからすると、降格になるのかも知れないが。これは、実はイルマからの要望によるポジションだ。世界各地を見て回るオウザに付いて回れば、己の剣の冴えは、更に研ぎ澄まされる。
そして、ネイキッドの失踪。
自分が側に居れば。
私が戦士ヴェルグや勇者より上だとは思わないけれど。
剣を振るう事も出来ず、若者の芽が摘み取られるのを黙って見ているなどと。
ネイキッドがさらわれた事実が物語るのは、若い才能の籠絡。律国の戦力を削りつつ、魔軍の戦力を増強する。斬りたいほどに賢い戦略だ。恐らくネイキッドは、魔王に心を掴み取られている。
オウザがそれに本気で対抗出来るかどうかは、不明。
私なら、出来る。
本気の私なら、ネイキッドを殺す事なく確保出来る。その後、ヤヨイ王に清めて頂ければ、それであの少年は助かる。
そのための護衛という役割。
そのイルマは、勇国王城内の雰囲気に違和感を感じた。
ガイドが居るのは理解出来る。律国王城にも、先導役は当然居る。
だが、他の通路への見張り、妨害役を全面に置くのは、異常だ。
何か、ある。
それも、見られるだけで不味いものが。
勇国王城の本質は、議会を兼ねた最先端研究所。
一体、どんな発明をしたというのだ。
「そこっすね。尋常じゃないガードっぷりでしたっす」
オウザもイルマの疑念に同意する。サモン、ハセガワも当然気付いていたので、頷き合う。
車上で勇猛サイダーを飲み交わしながら、一堂は更なる意見交換を深めて行く。
この4人が、律王の信を受けた現在の律国の若手主力だ。




