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第二曲 夜ニ歌エバ 3
「オーマ。たー君がネコ缶、食べない」
リビングの床に手と膝をついて、シアが言った。
「猫又だからな。猫の餌は喰わないか」
「何を食べるの?」
猫を抱いて、近づいてくる。
「さあな。腹が減れば自分で餌を探すさ」
「こんなに小さいよ」
「小さくても魔物だ」
シアの腰に手を伸ばして、抱き寄せた。膝の上に坐らせ、貌を寄せる。
唇に触れる前で止めた。
「そいつ、外に出しておけ」
シアは片手に猫を抱いていた。
「どうして?」
「オスだから」
「変なの――」
くすくす、とシアが笑う。
鼻を鳴らして、唇を重ねた。猫に眼を向けると、猫が、み、と鳴いて、シアの手から離れた。眼を閉じたまま、シアの手が動く。後を追うような動きだった。その手を掴むと、シアが眼を開いた。
紫色の眼がドウマを映す。
一瞬驚いたように見開いたが、すぐに微笑するように眼を閉じた。
シアの身体をソファに横たえると、部屋の隅で猫が、みゃあ、と啼いた。




