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第六場 最後のチャイム

三人、鞄を持って出口へ向かう。

誰も教室を出ない

奏太「行かへんの?」

雪弥「お前が先行けよ」

奏太「何で」

雪弥「何となく」

栞「じゃあ三人で出よ」

三人、扉の前に並ぶ

誰も開けない

雪弥「……なあ」

栞「何」

雪弥「卒業してもさ、三人でいよう、とか言うと何か重いやん」

栞「うん」

雪弥「否定しろよ」

奏太「重い」

雪弥「お前らほんと嫌い」

笑い

雪弥「だから、約束とかせんでいい」

二人を見る。

雪弥「連絡せんくなるかもしれんし」

栞を見る

雪弥「何年も会わんかもしれん」

奏太を見る

雪弥「声、忘れるかもしれん」

奏太、目を伏せる

雪弥「でも」

教室を振り返る

雪弥「ここにいたことまで、なくなるわけやないやん」

栞「うん」

奏太「なくならへん」

チャイムが鳴る

三人、同時に顔を上げる

三人、黙って聞く

チャイムが止む

雪弥「……こんな音やっけ」

栞「ずっとこんな音やった」

雪弥「そっか」

長い間。

奏太、扉を開ける。

奏太「じゃあ」

一歩出る、栞も続く

雪弥だけが教室に残る

栞「雪弥?」

雪弥、誰もいない教室を振り返る。

雪弥「……もう一回くらい、普通の日が欲しかったな」

二人、答えない

雪弥、教室を出る

扉を閉めようとするのを栞が止める。

栞「待って」

教室へ戻る

黒板の前、「卒業おめでとう」のメッセージ

その下に、小さくチョークで書く

【また明日】

雪弥「明日、卒業式やけど」

栞「ええねん」

奏太「何が?」

栞、黒板を見つめる。

栞「今日の私たちは、明日も明日が普通に来ると思ってたってことで」

雪弥「……そっか」

三人、黒板を見る。

奏太、静かに教室の電気を消す


廊下へ出る三人の声

奏太「駅まで?」

栞「うん」

雪弥「コンビニ寄ろ」

栞「また?」

雪弥「最後なんやしええやん」

栞「自分で言った」

雪弥「うるさい」

奏太「何買う?」

雪弥「肉まん」

栞「もうないんちゃう?」

雪弥「あるやろ」

奏太「なかったら?」

三人の声が遠ざかる。

雪弥「じゃあ何でもええわ」

栞「それ一番困るやつ」

奏太「じゃんけんで決めよう」

雪弥「何を?」

笑い声

足音

少しずつ遠ざかる


舞台には誰もいない教室だけが残る

黒板にスポット

しばらく誰もいない舞台を見せる


暗転……と思わせて


遠くから雪弥の声。

雪弥の声「あ、俺、教室に傘忘れた!」

栞の声「明日取れば?」

雪弥の声「……そっか」

静寂

もう一度、小さな笑い声

その声も遠ざかっていく

誰もいない教室

黒板の『また明日』だけに淡い光が残る

ゆっくり暗転。


――終――

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