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074 :// 来賓準備 -2-

「んー……まず、問題は南魔国が使者を送る目的だよね。

 色々可能性はあるけど、最悪のケースを考えるなら、戦争の下調べだと思うんだよね」

「あの南魔王と!?」

「うん。いや、最悪の場合ね?」


 シルフェアナの動揺に釣られて、場に緊張が走る。


「南魔国の立場で考えるとさー。すごい遠くで、金になるものを製造している場所を発見した。

 そしてその場所が、簡単に行き来出来るようになった。

 そうなった時に、その利益を最も効率よく享受するなら、侵攻して資源も技術者も制圧して自分の手駒にしちゃうのが早いかなと」

「オレたちに戦いを仕掛けてくるのか……?」

「いや、すぐに仕掛けては来ないと思うよ。一応、対等な取引関係って言ってもらったし」

「オレも同意見だ。幸いにも……南魔王直々に、クロアとバーチェークの派手なバトル見たんだってな?

 そんなら簡単にルミナディアが落ちないこたぁ、わかったはずだ。

 まだこっちの総戦力も割れてねーしな、あっちの被害も考えて慎重になんだろ。

 ちんちくりんの小娘にしちゃあ、でけぇ魔術を見せたのは本当にいい動きしたもんだぜ」


 おお、とバーチェークが感心する。


「まぁ短い付き合いだけど、ソルマンはそこまで短絡的じゃないと思うよ」

「西魔国だったらすぐにでも侵攻に来てただろーぜ」


 バリランがケッ、と忌々しげに吐き捨てた。

 西魔国の政治犯として追放されていたので、色々と恨みがある様子だ。


「つまりさ、ルミナディアは侵攻するには難しい強さを持っているとか。

 ここの資源と技術は南魔国で運用するより、ルミナディアの人間に任せた方がメリットがあるとか。

 そう思わせたいよね。それがルミナディア自治区としての政治的な対応ってところかな」


 クロアのまとめに、皆が頷いた。


「なるほどね……なかなか難しいわね?」

「オレは暴れりゃいーんだな?」

「魔獣でも来たらね?

 でも私がいる限り、ルミナディアに魔獣来なそうだなー」

「クロアが南魔国行った日、めちゃくちゃ魔獣出てきて楽しかったぜ」

「一部の子たちがイキイキしてたわねェ~」


 クロアが出掛ける度に、ルミナディア近辺にも大量の魔獣が出てきて祭りになるらしい。

 どおりで帰る度に、魔獣肉の在庫が大幅に増えている訳だ。

 天然魔獣避け体質が、こんなところでマイナスになるとは。

 クロアがルミナディア不在になればいいだけだが、それはそれで使者対応が心配である。


「強さの証明ってのは難しいから置いといて。とりあえず、一番注意したいところはベルガだと思う」

「あ~。そうだな」

「そうね……ベルガに何かあると、魔導具作りが大変だものね?」

「大変どころか、無に帰すレベルだねー。

 ベルガがいないとうちの魔導具は成り立たないってこと、なんとしても隠したかった……けど、流石にバレると思うんだ」


 今まで南魔国では、さもクロアが技術者であるという雰囲気を出してきた。

 しかしあちら側の人間がルミナディアに来るなら、誤魔化しきれないだろう。

 ベルガミュアが魔導具作りの主たる者だとは住民全員が知っていて、現在、このルミナディアには正直者が多いのだ。

 間違いなくバレる。


「最大にして唯一の技術者が誘拐でもされちゃったら、ルミナディアは終わりね……」

「シャレにならん」


 ルミナディア崩壊の危機である。


「んで考えたんだけど。魔導具は全て私の企画で、ベルガは私の手足となって作成しているだけ……っていうことにしようと思う」

「それって、今までとなんか変わるのか?」

「あっちの注意が私に集中するようになる。

 魔法も使えないベルガじゃ、それこそ誘拐とかアレコレに対応しづらい。

 攻撃魔術が使える私ならまだ対応出来る可能性が高いし、万一何か起きても、私の方が替えが効くしさ」 

「……クロア。その言い方はイヤよ。やめてちょうだい」


 オルウェンの睨みがすごい。


「ゴメンゴメン。……まぁそんな簡単に、やられないよ私も。たぶん。

 とにかくこれなら、変にウソじゃないから住民みんなも順応出来ると思うんだよね。

 魔導具について使者から質問された時のアンサーが、『魔導具作ってるのはベルガだよ』から、『魔導具作ってるのはベルガだよ。クロアの指示で』とか。

 『魔導具の仕組みに一番詳しいのはベルガだよ』から、『魔導具の仕組みに一番詳しいのはベルガだよ。クロアに言われてるから』になる。

 そーすると、誘拐されるのも私になると思わない?」

「物は言い様ってこのことね……。クロアちょっと怖いわ」

「元からやれることは少ねえ。申し訳程度だが、やって損はしないんじゃねーの。ヘイトは一カ所に集まってた方が動きやすいってもんだ」

「クロア本当に、気をつけてちょうだいね」

「オルウェンに頼んだ住民への対応、その時にまとめてこのこと伝えてもらっていい?」

「OKよ。いい感じに言っておくから任せてェ」


 オルウェンの渾身のウィンクから、ハートが飛んできた気がするのでクロアはさっと避けた。

 隣のバーチェークが動いたのも、きっと何か同じように察知したのだろう。


「さて、と。他にみんなから無ければ、今回はお開きにして対応の具体案はお持ち帰りの宿題にしたいと思うんだけど、どう?」

「そうね。すぐにひらめくものでもないわね」

「異議なし」

「おう」


「では、本日のルミナディア意思決定評議会は解散!」



          ■□



「忙しいのにごめんね、バーチャーム」

「そんなことになったんだね。もちろん僕に出来ることは頑張らせてもらうよ」

「僕も考える……!」


 つい先日出来上がった株式会社シロネ商会の執務室に、建築担当のバーチャームに来てもらった。

 まだテーブルと椅子程度しかない質素な中で、クロア、バーチャーム、シグが額をつき合わせる。


「迎賓館・仮だけど、こんな感じのどーかなってのデータ作ってきた」


 ニャスタが魔導ディスプレイを出して、事前に作成したデータを表示する。

 間取り図と、3D映像だ。

 形とサイズは一軒家程度のもの。


「部屋が2つに……このロフトというのは?」

「こっちの立体映像見るとわかると思うんだけど、メインルームだけ2階建てみたいな高さでしょ?

 普通の2階建てと違って、1階から2階が見える状態ってこと」

「はぁ~すごいデザインだなぁ」


 しげしげと3D映像を回転させたり、拡大させるバーチャーム。

 ロフト付き物件と言えば、故郷で憧れる人も少なくない。

 必然的に天井が高くなって開放感があるし、ワンルームのような狭い家のロフトでも秘密基地感があってワクワクする。

 閃いた瞬間に、コレはいけると確信したアイディアだ。


「んで、メインルームじゃない2部屋の屋上を庭にする」

「地面じゃなくて、建物の上に庭? 斬新だ」

「すごい、カッコイイ」

「フフフ」


 バーチャームとシグの言葉に鼻高々するクロア。


「ただ内装は特にアイディアなくてね-。

 テーマは“特別感”だから、既存の枠にとらわれないアイディアあったらどんどん言って欲しい」

「じゃあこの庭のところ、ガラスで天井作ろうよ」

「ガラスの天井……」


 シグの言葉で、想像する。

 透けて見える空を眺めながら、庭でゆったりゴロゴロ。


「……採用! 強度が怖いけど、魔導樹脂コーティングでいける気がする」

「いいねぇ、面白くなってきたぞ……! いっそ庭に果物の木でも植えたらどうかな?」

「何ソレ、果物付き物件? やばい、くっ……やっちゃう?」


「それならその木に———」

「じゃあライトをさ———」




 その日は、過去イチ盛り上がった。


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