異常人物
今回はモグドンさん視点のお話です。時系列は少し前。
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ドドリ村の外れ。使われなくなった倉庫の中。
薄暗い室内で、俺は腕を組んでいた。
床には——縄でぐるぐる巻きにされた女。
敵幹部、メドゥーサ・レイブン。
髪は乱れ、目はどこか焦点が合っていない。
だが、その口元だけは妙に笑っている。
俺はため息をついた。
「……で、どうなんだ?」
腕を組んだまま、奴を見下ろす。
「お前の中から『メディ先生』とやらを戻す方法は!?」
当然——返事はない。
メドゥーサは、ただ笑っていた。薄気味悪い笑いだ。
「教えてくれりゃあ助かるんだがな」
俺は頭をかく。
「カビ助が悲しむんだよ。その先生がいないと」
——また沈黙。俺は舌打ちする。
そうすると、メドゥーサはふと口を開いた。
「……ふふ」
声は小さい。消耗したからか?
「わたくし、知らないことは答えられませんの」
舌足らずな喋り方だった。
一つだけ分かることがある。
——こいつは、信用ならない。
俺は顎に手を当てる。
「うーん……」
多少は……荒いこともするべきかもしれん。
俺は倉庫の隅へ歩いた。
こういうのはいくら慣れても苦手だ。
俺の役割は基本的に——穴を掘る。筋トレする。部下を守る。
この三つだからな。
だが、今回は事情が違う。
部下の恩師を助けるためだ。
倉庫の隅に置いてあるのは——ペンチ。ハンマー。ロープ。
……まあ、いろいろだ。
そして、振り返る。
「できれば使いたくないんだがな」
メドゥーサは、くすくす笑っている。
「ふふふ……地中班長さん、怖い方ですね」
——嘘つけ。まるで怖がっていない。
俺の覚悟をバカにしている顔だ。
「……どうとでも言え」
少し考え、俺は“拷問”を開始した。
まずは軽く脅してみる。
——俺はペンチを持ち上げた。
「安心しろ。死なせはしない」
メドゥーサの前にしゃがむ。
ペンチをカチカチ鳴らす。
「爪から始めるぞ」
「ふふふ」
メドゥーサは未だに微笑み続ける。
——この状況で、何がおかしい?
だがその時。ポケットが震えた。
プルルルル。プルルルル。
「ん?」
俺は電話機を取り出し、応答する。
相手は——お、隊長か。
「もしもし!」
『モグドン。話を聞いたよ。ドドリ村に残ってるんだって?』
「おう。捕まえた幹部の見張りしてますぜ」
『そうか——』
隊長は一瞬、間をあけて続ける。
『悪いが、メドゥーサを連れて今すぐ集合して欲しい』
「……集合?」
俺は眉を顰めた。
ラッシャイタウンで、何か起きたのか?
『敵の動きが分かった。全員で仕掛けようと思う』
ああ——なるほど。
いよいよ決戦、というわけか。
『頼んだよ』
「了解だ」
ならば、これ以上言葉はいらない。
俺は電話をポッケにしまった。
「さて……待たせたな」
俺は拷問を続けようと、振り返る。
縛られたメドゥーサは、まだ笑みを崩していない。
こいつ、まだ“希望”があると思ってんのか?
「石化光線は無駄だぞ」
俺が光線を喰らったところで、“核”を即座に見つけ出し——ギザン殿のように、内側から破壊すれば問題ない。
だからこそ、俺がお前を引き受けているんだ。
連行の道中で——逃げられることもあるまい。
俺は再びペンチを構えた、のだが……その瞬間。
俺は、倉庫の扉に近づく気配を感じた。
ギィィ……と音を立て、扉が開く。
身構え、振り向く。
こいつを助けに来た“敵”の可能性がある!
「……誰だ?」
だが、そこに立っていたのは“敵”ではなく——知り合いの人物。
フルーティア族の移送を引き受けた時以来会ってなかった、俺の親友。黒い博士帽を被った、丸っこい生物。……『スライム博士』だった!
「久しぶりだね、モグドン」
「なんだ、お前かよ……!」
喉の奥から声が出る。
何だよ、驚かせやがって。でも実際、ありがてぇ助太刀だ。
「ふふふ、『2対1』ですか」
メドゥーサは呟いた。
まだ笑みを崩さねぇとは……縛られて、その上に数的不利なのに。
——敵ながら、大した人物だ。
「その通りです」
博士も隣で頷いている。
「もう“希望”は捨てろよ、外道女!」




