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異常人物

今回はモグドンさん視点のお話です。時系列は少し前。

************************************************


 ドドリ村の外れ。使われなくなった倉庫の中。

 薄暗い室内で、俺は腕を組んでいた。


 床には——縄でぐるぐる巻きにされた女。

 敵幹部、メドゥーサ・レイブン。


 髪は乱れ、目はどこか焦点が合っていない。

 だが、その口元だけは妙に笑っている。


 俺はため息をついた。

「……で、どうなんだ?」


 腕を組んだまま、奴を見下ろす。


「お前の中から『メディ先生』とやらを戻す方法は!?」


 当然——返事はない。

 メドゥーサは、ただ笑っていた。薄気味悪い笑いだ。


「教えてくれりゃあ助かるんだがな」

 俺は頭をかく。


「カビ助が悲しむんだよ。その先生がいないと」


 ——また沈黙。俺は舌打ちする。

 そうすると、メドゥーサはふと口を開いた。


「……ふふ」

 声は小さい。消耗したからか?

「わたくし、知らないことは答えられませんの」


 舌足らずな喋り方だった。

 一つだけ分かることがある。


 ——こいつは、信用ならない。


 俺は顎に手を当てる。

「うーん……」


 多少は……荒いこともするべきかもしれん。

 俺は倉庫の隅へ歩いた。


 こういうのはいくら慣れても苦手だ。

 俺の役割は基本的に——穴を掘る。筋トレする。部下を守る。

 この三つだからな。


 だが、今回は事情が違う。

 部下の恩師を助けるためだ。


 倉庫の隅に置いてあるのは——ペンチ。ハンマー。ロープ。

 ……まあ、いろいろだ。


 そして、振り返る。


「できれば使いたくないんだがな」


 メドゥーサは、くすくす笑っている。

「ふふふ……地中班長さん、怖い方ですね」


 ——嘘つけ。まるで怖がっていない。

 俺の覚悟をバカにしている顔だ。


「……どうとでも言え」


 少し考え、俺は“拷問”を開始した。

 まずは軽く脅してみる。

 ——俺はペンチを持ち上げた。


「安心しろ。死なせはしない」


 メドゥーサの前にしゃがむ。

 ペンチをカチカチ鳴らす。


「爪から始めるぞ」

「ふふふ」


 メドゥーサは未だに微笑み続ける。

 ——この状況で、何がおかしい?


 だがその時。ポケットが震えた。


 プルルルル。プルルルル。


「ん?」


 俺は電話機を取り出し、応答する。

 相手は——お、隊長か。


「もしもし!」

『モグドン。話を聞いたよ。ドドリ村に残ってるんだって?』

「おう。捕まえた幹部の見張りしてますぜ」

『そうか——』


 隊長は一瞬、間をあけて続ける。


『悪いが、メドゥーサを連れて今すぐ集合して欲しい』

「……集合?」


 俺は眉を顰めた。

 ラッシャイタウンで、何か起きたのか?


『敵の動きが分かった。全員で仕掛けようと思う』


 ああ——なるほど。

 いよいよ決戦、というわけか。


『頼んだよ』

「了解だ」


 ならば、これ以上言葉はいらない。

 俺は電話をポッケにしまった。


「さて……待たせたな」

 俺は拷問を続けようと、振り返る。


 縛られたメドゥーサは、まだ笑みを崩していない。

 こいつ、まだ“希望”があると思ってんのか?


「石化光線は無駄だぞ」


 俺が光線を喰らったところで、“核”を即座に見つけ出し——ギザン殿のように、内側から破壊すれば問題ない。

 だからこそ、俺がお前を引き受けているんだ。


 連行の道中で——逃げられることもあるまい。


 俺は再びペンチを構えた、のだが……その瞬間。

 俺は、倉庫の扉に近づく気配を感じた。


 ギィィ……と音を立て、扉が開く。

 身構え、振り向く。

 こいつを助けに来た“敵”の可能性がある!


「……誰だ?」


 だが、そこに立っていたのは“敵”ではなく——知り合いの人物。

 フルーティア族の移送を引き受けた時以来会ってなかった、俺の親友。黒い博士帽を被った、丸っこい生物。……『スライム博士』だった!


「久しぶりだね、モグドン」

「なんだ、お前かよ……!」


 喉の奥から声が出る。

 何だよ、驚かせやがって。でも実際、ありがてぇ助太刀だ。


「ふふふ、『2対1』ですか」

 メドゥーサは呟いた。

 

 まだ笑みを崩さねぇとは……縛られて、その上に数的不利なのに。

 ——敵ながら、大した人物だ。


「その通りです」

 博士も隣で頷いている。


「もう“希望”は捨てろよ、外道女!」



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