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課題4 : 実戦の自信

【前回の登場人物】

「カビ助」

(種族)ヒト

(年齢)14

(能力)感情を巨大化させる

(概要)この物語の主人公。戦闘技術の指導を受け終えた。


「ディグ・ピクコノ」

(種族)ドリル

(年齢)50

(能力)弱点分析

(概要)ドドリ村の農家で、旅の仲間。シャドに伝言を頼まれる。


「ギザン・トライアングル」

(種族)ドリル・スシ

(年齢)42

(能力)構造を見極め、回転させる

(概要)約三千年前の英雄で、旅の仲間。石化解除の任務から帰還した。


 

 疲れた。ずっと寝ていたい。

 シャド師匠の修行の後に、筋トレを行う……。

 自分で決めた事とはいえ、流石に身体への負担が酷い。


 引きこもり生活から冒険に出たとはいえ——

 僕は今まで、体を大きく動かす戦闘をしていなかった。

 そんな状態から、こんな毎日。


 だが、そんな寝言は言ってられない。


 ——もう、二週間だ。

 早く、強くならなくちゃ……!

 ミツバを、早急にジャックから解放できるように。



 そんな時……

 何者かに肩を揺すられる感触。同時に、声が響いた。


「おい、カビ助くん! 起きてけろ!」


 この訛り口調は……

「うぅん……ピクコノさん?」


 任務から帰ってきたのか。

 今は寝かせておいて欲しいんですけど……?


「街が大変なんだべ!」


 その言葉を聞き、僕は咄嗟に身体を起こす。

「もしかして……敵襲ですか⁉︎」


 ピクコノさんは一瞬目を丸くしつつも、すぐに状況を伝えてくれた。


「んだ。今はシャドくんが食い止めてくれてっから……急いで向かってほしい」


「師匠が……⁉︎ 了解です」


 僕は頷き、クレーターを駆け上った。

 すると——

 ピクコノさんはその場で、倒れ込んだ。


「……限界だったんですね」


 街からここまで……地中を掘って来てくれたのか?

 彼の能力は弱点分析が主であり、モグドンさんのような”穴掘りの専門家”ではない。


 それでも、僕に急いで伝えるために——!

 その想いに、応えなくては。




 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎




 街の出入り口は敵に封鎖されていたが——

 僕は”能力”を用いて、塀の上から侵入することに成功した。


 ラッシャイタウン。

 家の壁が崩れ、瓦礫が山のように積もっている。


 ただでさえ街の人々は誘拐されたのに、建物まで——!

 ダークスター団……探検隊を潰したいからといえ、やり過ぎだ。


 怒り。それと同時に、心配の気持ちが湧いてくる。


 隊長が、この街に……各地の隊員を集めたと聞いているけど……?


「みなさん……無事でいてください……!」



 だが、そう願った時。


 ——甘い匂いが、鼻をかすめた。

「……?」


 どこか、懐かしいような匂い。

 思わず足が止まりそうになる。


 だが——

 次の瞬間、違和感に変わった。


 甘いのに、気持ち悪い。

 吸い込むほど、頭がぼんやりしていく。


「……なんだ、この匂い……⁉︎」


 胸がざわつく。

 嫌な予感しかしない。


 街の奥へ飛び込む。


 そして——

 目にした光景に、言葉を失った。


 白い。雪か?

 視界の先が、異様に白い。


「は……?」


 次の瞬間、悲鳴が届いた。


「あああああああ!!」


「っ……!」

 それを聞いた瞬間、体が勝手に動いていた。


 そうして、視界に入ったのは——


 白い粉に覆われた人々。

 動けず、固まりかけたまま、目だけが必死に動いている。


 その中の一人の前に——

 巨大な影が二つ。


 黒と赤の、巨大な蟻。

 無言のまま、ただ破壊を続けている。


「……は?」

 思考が、一瞬止まる。


 だがすぐに、理解した。

「クローン……!」


 拳を握る。

 だが……動けない隊員さんに、小さく赤い蟻が群がっていくのが見えた。


 ——助けないと終わる。全部。

 その現実だけが、頭の中で響く。


「デカい蟻は後回し、か……!」


 僕は、群がる蟻に”技”を放とうと構える。

 だが、その時——


「『黒舎利弾(シャドー・シャリボム)』」


 ドォン!

 上から黒い爆発が、降り注いだ。


 この技は……!


「師匠⁉︎」

 見上げると、師匠が住宅の屋根上に立っていた。


「……やっと来たか。カビ助」


 その姿を見た瞬間——

 張り詰めていた何かが、少しだけ緩んだ。


「助かりました。協力して、対処しましょう!」


 僕が雑魚から隊員さん達を助けて、師匠がリーダーらしき二体を倒す。

 相当手強そうな相手だが、師匠なら余裕だろう!

 ——いざとなれば、僕も援護に回れるし。


 絶望的な状況に、希望が見えた。

 だが、そんな時に師匠は口を濁した。


「あの敵は……ジェムの元仲間で、得体の知れない能力を持っている」


 隊長の、昔の仲間のクローン……!

 いや、それにも驚いたけど。


「師匠……どうしたんですか⁉︎ いつになく弱気じゃないですか⁉︎」


 よく見ると、師匠の身体にも白い粉が纏わり付いていた。

 ——まさか、あのせいで……?


 僕は心配の目で見たが、彼は声色を変えなかった。


「違う。これは泣き言じゃなく、助言だ」


 助言……? 僕に……?

 デカい方の強さを説明したってことは、まさか——!


「お前一人でやってみろ」


「……え?」

 僕は振り向く。


「隊員のことは俺に任せて……お前は修行成果を実践し、強敵を倒すんだ」


 師匠は腕を組んだ。

「何があっても、俺は手を出さない」


「こんな状況で、修行……⁉︎」


 僕は二匹の巨大な蟻を見る。

 黒いアリ。赤いアリ。

 どちらも無言。ただ、こちらを睨んでいる。


 ——怖い。

 正直、めちゃくちゃ怖い。

 隊長の知り合いといえば、今のところ化け物みたいな強さの人しか聞いてない。


「修行なんて言ってる場合じゃないですよ‼︎」


 今も、隊のみなさんが——!


 僕は師匠に向け、叫んだ。

 だが彼は鋭い目つきで僕を一瞥し、子アリに技を放つ。


「俺がいない戦場でも、お前はそうやって泣き叫ぶのか?」


「あ……」


 実戦が、何よりの訓練。気持ちを鍛えられる。

 僕は、絶望してはいけない。強くなる必要がある。

 シャドさん……師匠から、教わったこと。


 そして——

『”守りたいモノ”の事だけを考えろ』


 隊長の言葉が、頭をよぎる。


 見る影もなく崩壊した住宅街。

 毒を受け苦しむ隊員さん達。

 これから帰還するであろう隊長や、ゴハートたち。

 そして——

 余裕そうに見えて、疲弊している師匠。


 僕は覚悟を決め、息を吸った。

「……やります」


「最後の修行だ、カビ助」


 師匠は、振り向きざまに言い放つ。

 その声色からは、僕への強い信頼が感じられた。


()()()()()()


「……了解!」


 僕はもう、敵から目を逸さなかった。





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