襲いくる強敵・Ⅲ
今回はまた、ドラゴンマスク視点のお話です。
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ここは親友が市長を務める街、ラッシャイタウン。
復旧したてながらもこの大陸で、一二を争う都会街……だった。
それが奴ら、『ダークスター団』のせいで——
人が消え、流通は途絶え、近辺の村は苦労しただろう。空き巣だらけで、盗賊による被害も尋常ではなさそうだ。肝心な時に限って、ドド……いや、市長もしばらく行方を眩ませている。
——奴らのせい?
いや……僕たち『探検隊』がこの街を拠点にしたせい、だろう。
「……ケジメをつけよう」
静まり返った僕たちの拠点。今は、僕しか残っていない。
緊急連絡システムを見るに、モグドンからの連絡が途絶えていたから——三日前までここにいたシャドは、カビ助くんたちの救援に向かわせた。どうか無事でいてくれるだろうか。
石化した隊員はもちろん、当時調査に出ていた隊員も、帰ってきていない。
今から、散り散りになった『探検隊』を復旧しなければ。
そうして、“決戦”への戦力を集めなければ——
今は、そんな大変な時。一秒たりとも無駄にできない。
なのに、この復旧時間を……探検隊の隙を。的確に狙いにくる来客が、訪れた。
——石の床を、重い金属が擦る音。
「まさか、本当に来るとはね」
誰が来るのか、事前に分かっていた。シャドの仲間たちの『糸電話』によって、遠隔から報告を受けたから……だ。奴らは今、ジャックが『空間転移』を失っているおかげで、敵襲には自らの足で出向かなければならない。つまりは対策の余地が生まれたのだ。
カビ助くんには本当、感謝しなくちゃな。
——暗い通路の向こうから現れたのは、どす黒い甲冑の男。
三日月の装飾が揺れ、二本の刀が鈍く光っている。
「『探検隊』の隊長……! 今日こそ殺す」
「……来たか」
“私”は仮面を深く被り、その奥で、静かに息を吐く。
こいつは……『ダークスター団』に雇われた殺し屋、武蔵。
何度も戦い、そして毎度決着がつかなかった相手だ。
正直、単純な力比べでは僕より強い。その上感情がないらしく、交渉が効かないときたものだ。……でも今までは、逃げるだけで良かった。
——だが、今回は引くわけにはいかない。
この場所は、みんながもう一度集まるためのもの。誰であろうと、壊させるわけにはいかない。
武蔵は私を見ると、わずかに口角を上げた。
「土足で上がり込んで、すまない」
「感情がないのに、礼儀は知ってるんだな?」
「昔、叩き込まれた」
その言葉と同時に、空気が重く沈んだ。
その言葉からは、辛い過去が見えるのに——奴の声から、感情は何も読み取れなかった。
「ジェム。あいつは『殺すこと』しか頭にないようだ」
脳内で、シルヴァさんの声が響いた。
『悪感情を見透せる』彼が言うのだから、間違いないのだろう。
「本当に、一人で良かったのか?」
「まあ……これしか手がなかったんです。『闇の暴走』相手なら、シャドが適任ですから」
——やるしかない。
私は手を掲げ、周囲の“弾”を感知する。
「頼む……カタツムリたち」
床、壁、天井。
静かに潜んでいた無数のカタツムリが動き出す。
武蔵の目が、わずかに細くなった。
「気味の悪い能力だな」
「思ってもないくせに……よ!」
手を振り下ろし、武蔵の方へと“弾”を飛ばす。
「くらえ。『蝸牛制御』!!」
だが、次の瞬間——武蔵の姿が消えた???
速い……そう思った、次の瞬間。
突然奴は、私の目の前に現れた。
ブンっ、と刀を振り下ろす音。
「っ……!」
私は慌て、仮面の力を解放する。
すると——背中から、ドラゴンの翼が広がる。爪を大きく伸ばす。
ギィン!! 刀と爪がぶつかり、火花が散る。
「おい、ジェム——見ろ」
シルヴァさんの声が再び。
言われた通りに武蔵を見ると——
奴の刀から、どす黒い闇が噴き出していた!?
「その力は……っ!!」
距離を取りながら、言う。
「副種族に『ダーク族』を? 以前は無かったな」
「ああ——そうだな」
武蔵は刀を軽く振る。
ザンっ! 闇の斬撃が、飛んだ。
私は翼で空へ跳び、避ける。だが斬撃は壁を切り裂き、石が崩れ落ちた。間違いなく1発でもモロに喰らえば、致命傷だろう。
「人を斬りすぎたのか、こんな力が付いたんだ」
「簡単に言ってくれるなぁ……!」
彼の言葉には、感情がなかった。
人を斬りすぎた、なんて言葉でも——声色は、ただ事実を述べているだけ。
上に命令されたからといえ、許される行為ではない。
私は低く言う。
「悪いが、今日はお帰り願おうか」
今から、私の……いや、僕らの“全力”を見せる。
——そうすれば、奴といえど撤退を選ぶはずだ。
「おい……もう“使う”のか?」
察したシルヴァさんが囁いた。
——大丈夫です。今回は、“見せる”だけ。まだ全快ではないと、分かってますよ。
僕は仮面を外し、構える。
「それが素顔か?」
武蔵も二本目の刀を抜いた。
闇の力に、あの二刀流——敵は手強い、けど!
「こんな所で負けるわけにはいかない」
『探検隊』の拠点を守る者として。
そして——いつか来る、“決着”の時のために。




