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襲いくる強敵・Ⅲ

今回はまた、ドラゴンマスク視点のお話です。

************************************************ 


 

 ここは親友が市長を務める街、ラッシャイタウン。

 復旧したてながらもこの大陸で、一二を争う都会街……だった。


 それが奴ら、『ダークスター団』のせいで——

 人が消え、流通は途絶え、近辺の村は苦労しただろう。空き巣だらけで、盗賊による被害も尋常ではなさそうだ。肝心な時に限って、ドド……いや、市長もしばらく行方を眩ませている。


 ——奴らのせい?

 いや……僕たち『探検隊』がこの街を拠点にしたせい、だろう。


「……ケジメをつけよう」


 静まり返った僕たちの拠点。今は、僕しか残っていない。

 緊急連絡システムを見るに、モグドンからの連絡が途絶えていたから——三日前までここにいたシャドは、カビ助くんたちの救援に向かわせた。どうか無事でいてくれるだろうか。


 石化した隊員はもちろん、当時調査に出ていた隊員も、帰ってきていない。

 今から、散り散りになった『探検隊』を復旧しなければ。


 そうして、“決戦”への戦力を集めなければ——


 今は、そんな大変な時。一秒たりとも無駄にできない。

 なのに、この復旧時間を……探検隊の隙を。的確に狙いにくる来客が、訪れた。


 ——石の床を、重い金属が擦る音。


「まさか、本当に来るとはね」


 誰が来るのか、事前に分かっていた。シャドの仲間たちの『糸電話』によって、遠隔から報告を受けたから……だ。奴らは今、ジャックが『空間転移』を失っているおかげで、敵襲には自らの足で出向かなければならない。つまりは対策の余地が生まれたのだ。


 カビ助くんには本当、感謝しなくちゃな。


 ——暗い通路の向こうから現れたのは、どす黒い甲冑の男。

 三日月の装飾が揺れ、二本の刀が鈍く光っている。


「『探検隊』の隊長……! 今日こそ殺す」

「……来たか」


 “私”は仮面を深く被り、その奥で、静かに息を吐く。

 こいつは……『ダークスター団』に雇われた殺し屋、武蔵。


 何度も戦い、そして毎度決着がつかなかった相手だ。

 正直、単純な力比べでは僕より強い。その上感情がないらしく、交渉が効かないときたものだ。……でも今までは、逃げるだけで良かった。


 ——だが、今回は引くわけにはいかない。

 この場所は、みんながもう一度集まるためのもの。誰であろうと、壊させるわけにはいかない。


 武蔵は私を見ると、わずかに口角を上げた。


「土足で上がり込んで、すまない」

「感情がないのに、礼儀は知ってるんだな?」

「昔、叩き込まれた」


 その言葉と同時に、空気が重く沈んだ。

 その言葉からは、辛い過去が見えるのに——奴の声から、感情は何も読み取れなかった。


「ジェム。あいつは『殺すこと』しか頭にないようだ」


 脳内で、シルヴァさんの声が響いた。

 『悪感情を見透せる』彼が言うのだから、間違いないのだろう。


「本当に、一人で良かったのか?」

「まあ……これしか手がなかったんです。『闇の暴走』相手なら、シャドが適任ですから」


 ——やるしかない。

 私は手を掲げ、周囲の“弾”を感知する。


「頼む……カタツムリたち」


 床、壁、天井。

 静かに潜んでいた無数のカタツムリが動き出す。


 武蔵の目が、わずかに細くなった。

「気味の悪い能力だな」


「思ってもないくせに……よ!」

 手を振り下ろし、武蔵の方へと“弾”を飛ばす。

「くらえ。『蝸牛制御(マイ・コントロール)』!!」


 だが、次の瞬間——武蔵の姿が消えた???


 速い……そう思った、次の瞬間。

 突然奴は、私の目の前に現れた。


 ブンっ、と刀を振り下ろす音。


「っ……!」

 私は慌て、仮面の力を解放する。

 すると——背中から、ドラゴンの翼が広がる。爪を大きく伸ばす。


 ギィン!! 刀と爪がぶつかり、火花が散る。


「おい、ジェム——見ろ」

 シルヴァさんの声が再び。


 言われた通りに武蔵を見ると——

 奴の刀から、どす黒い闇が噴き出していた!?


「その力は……っ!!」

 距離を取りながら、言う。

副種族(サブ)に『ダーク族』を? 以前は無かったな」


「ああ——そうだな」

 武蔵は刀を軽く振る。


 ザンっ! 闇の斬撃が、飛んだ。

 私は翼で空へ跳び、避ける。だが斬撃は壁を切り裂き、石が崩れ落ちた。間違いなく1発でもモロに喰らえば、致命傷だろう。


「人を斬りすぎたのか、こんな力が付いたんだ」

「簡単に言ってくれるなぁ……!」


 彼の言葉には、感情がなかった。

 人を斬りすぎた、なんて言葉でも——声色は、ただ事実を述べているだけ。


 上に命令されたからといえ、許される行為ではない。


 私は低く言う。

「悪いが、今日はお帰り願おうか」


 今から、私の……いや、僕らの“全力”を見せる。

 ——そうすれば、奴といえど撤退を選ぶはずだ。


「おい……もう“使う”のか?」

 察したシルヴァさんが囁いた。


 ——大丈夫です。今回は、“見せる”だけ。まだ全快ではないと、分かってますよ。

 僕は仮面を外し、構える。


「それが素顔か?」


 武蔵も二本目の刀を抜いた。

 闇の力に、あの二刀流——敵は手強い、けど!


「こんな所で負けるわけにはいかない」


 『探検隊』の拠点を守る者として。

 そして——いつか来る、“決着”の時のために。


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