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決断と選択

【前回の登場人物】

「ディグ・ピクコノ」

(種族)ドリル

(年齢)50

(能力)弱点分析

(概要)ドドリ村の農家で、旅の元保護者。今度は仲間として、同行する。

************************************************



 夜が更けてきた。太陽は沈み、風は冷たい。

 地面に横たわる石像——その表面には、恐怖の表情が刻まれている。


 僕は拳を握り締める。

「……じゃあ、お願いします」


 ギザンは、静かに石像の前へ進む。


「下がっておれ」

 低く言うと、彼は両手を石像に触れた。


 石化部分に、淡い光が走る。硬質だった表面が、ゆっくりと色を取り戻していく。


 ——地面の下から、低い振動。

 モグドンさんとピクコノさん、同族の両者が、同時に息を呑む。


「これが、本来の石化解除……」

「すげ……表面だけじゃねぇ。内部から緩めてるだ」


 ギザンは目を閉じたまま答える。

「石化は“固定”の呪い。ならば、構造を理解すればよい」


 ひび割れが、すっと消える。

「……っ!」


 喉が鳴る。石が、剥がれ落ちたのだ。

 パキリ、と小さな音。そして——


「……っはぁ!!?」

 ゴハートが空気を吸い込んだ!!

「ど、土台モン!? 生きてるか!?」


「ぐえっ……首が……固まって……」

 土台モンも、崩れるように膝をつく。


 僕の視界が滲んだ。

 無事な姿の二人を、もう一度……見れて。

「ゴハート! 土台モン!」

 駆け寄る。

 そのままの勢いで、抱きしめようとして……でも少し止まる。


 ——石化していた部分は、まだ赤い。

 出血したまま、固まっていたのか?


「悪ぃな。俺らが、主人に守られちまった……!」


 ゴハートが苦笑する。僕の声が震える。

 主人とか、使い魔とか……そんなの今はいいよ。


「……戻ってきてくれて、よかった」


 それだけで十分だった。

 土台モンが、照れたように頭をかく。


「マスター。あの時、諦めないでくれて——ありがとうございました」


「……そうだ。汝のおかげで我は復活を果たせた」


 続けてギザンが小さく頷く。

 カルマさんも、微笑んでいた。


「お前が諦めていれば、俺が駆けつける前に死んでいただろう」


 胸が少しだけ軽くなった。

 僕は先の戦闘で何もできていない——そう思っていたけど。


「へへ……お役に立てたようで、良かったです!」



 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎



 少し離れた場所。メドゥーサは、拘束されたまま横たわっている。

 奴は変わらず裸のままで、戸惑うカブ太。まぁ、こればっかりは……仕方ないよな。とも思いつつ、いじめっ子時代はまさに「敵なし」って感じだったカブ太に、こんな弱点があったのか……なんて、どうでもいい考えが浮かんだ。


「おい、何か布を持って来い」

「戦士が狩られ、衣を失うは、日常なり」


 だが、冷静な大人達の言葉で、静寂が戻る。

 まだ、メドゥーサ……、奴の意識は戻っていない。


「どうする?」

 カルマさんが皆に問う。


 殺すのか。監禁するのか。人質にするのか。

 簡単な答えはない。


 ——沈黙。

 そんな中、モグドンさんが前に出た。


「俺が残って処理しとく」

「え?」

「ほら、俺……班長なのに、一番戦闘で役に立ってねぇだろ?」


 冗談めかしているが、目は本気だ。

 でも——情報を隠した敵幹部に対する“処理”って……?


「処理って……まさか」


 僕は不安な顔で彼を見つめる。

 だが彼は、親指を上に突き立て、ニッと笑う。


「大丈夫、こう言うのは慣れてるんだ。俺に任せて……お前らは先に『隊長』と合流しろ!」


 それだけ言うと、メドゥーサを抱えて立ち上がる。

 彼は——覚悟の決まった表情だった。


「大丈夫か? 石化されて逃げられる……なんて、洒落にならないっすよ」


 ゴハートの声。

 だが、モグドンさんは振り返らない。


「英雄殿の件で学んだ。俺のドリルなら、石化を不完全な段階なら——内側から解除できる。『適材適所』ってやつだな?」


「確かにそうだな。あの荒技は汝の力量ありきであった」


 ギザンも否定することなく頷いた。

 ドリル族の伝説……である彼が頷くということは、本当に彼が適任なのだろう。


「だから、こいつは任せて、お前らは先に進め!」


「うんうん、役割分担だべな」


 ピクコノさんが、深く頷く。カルマさんも異論はなさそうだ。


 僕はそんな中、カブ太とメドゥーサを見ていた。

 彼女は非道な敵。でも——中にはメディ先生もいる。


「……目が覚めたら、話せるんでしょうか」

 カブ太も続けて言う。

「先生を……分離させる方法はねぇのか?」


「それは、敵のボス次第だ。叩きのめして、聞き出す他ない」


 カルマさんは短く答えた。

 隣でギザンが、静かに立ち上がる。その顔色はわずかに険しい。


「あまり猶予は無さそうであるな。すぐに出発すべきなり」


 古代人らしい彼の考え。そこに土台モンが釘を刺す。


「ですが……。今はしっかりと、睡眠を取るべきです」

「みんなボロボロだからな……。マスターの家で泊まってこうぜ」


 いやいやいや……


「僕の家じゃ、狭いから泊まれて四人だよ!?」

「じゃ、大人の二人はおらの家に来るといいべ」


 ゴハートの冗談に聞こえない冗談に、ピクコノさんが解決策を出してくれた。

 そこにカルマさんが指示を出し、部屋割りが決まる。


「お、助かります。じゃあ少年組……ゴーストと土台は、カビ助の家で頼むな」

「「はい!!」」


 土台モンは100歳を超えているらしいし、ゴハートも前世は成人だが——?

 二人は僕の家に来たことがあるし、別にいいか。



 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎



 そんな中——

 カブ太が、少し離れた場所に立っていた。


 僕は、その横顔を見る。


 ——彼は、元々ただの村人。

 世界を救うために必要な、ドリル族ってわけでもない。危険な旅だってことは……先のメドゥーサとの戦いで、お互い身に沁みているはず。だからこそ、これ以上……僕達に関わるべきではないのだろう。


「これで、いいのか……」


 もし奴からメディ先生を分離するための条件がメドゥーサ本人から聞き出せて、すぐに実行できた場合、彼らはすぐに会えるだろうし……戦闘面でも、心強いモグドンさんもいる。だからやはり、カブ太は村に残るべきだ。


「いや……」


 僕がどうこう言うべきではない、か。

 彼自身の“選択”を、尊重するとしよう……。




https://kakuyomu.jp/users/SandInHarumaki/news/2912051599976082622


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