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混乱

【前回の登場人物】

「カルマ」

(種族)スシ・ダーク

(年齢)18

(能力)闇を纏ったイカ

(概要)伝説の一族。カビ助に"真実"を伝える機を見計らっている。


 

 仮眠から目を覚ます。

 ゴハートと土台モンのいびきが聞こえた。


 土台モンのほうは、どこかわざとらしい音に聞こえる。

 きっと、彼なりの配慮なのだろう。


「よし……行くか」

 僕は、カルマさんに会う覚悟を決めた。


 テントの扉を開けて外に出ると、冷たい風が頬を打つ。


 時刻は深夜0時を過ぎている。

 それに、高台で野営しているのだ。当然といえば当然だ。


「寒っ……! 早くあっち入ろう……」

 思わず独り言が漏れる。


 僕はカルマさんのテントの前に立った。


 ——彼の“悔恨”とは、一体なんなのだろう。


 僕に関係すること。

 そう思うと、聞くのが余計に怖かった。


 寒い。早く中に入りたい。

 そう思っているはずなのに、僕の足は動かなかった。


「うう……待たせちゃカルマさんに悪いな。さすがにもう行こう……」


 心の中で数を数える。

 3、2、1——


 僕は扉を開ける。




 カルマさんのテントの中。


 そこには捌かれた魚と、調理器具が並んでいた。

 寝袋はすでに片付けられている。


 代わりに置かれているのは、ランタンと椅子が二つ。


 一つは空席。

 そしてもう一つには——


 カルマさんが座っていた。


 神妙な面持ちだった。

 目の下にはクマができている。


 一睡もしていないのかもしれない。


「あの……お待たせしました?」


「大丈夫だ。俺も今来たところだ」


 いや……嘘だろ。

 あんたのテントなんだから、ずっと居たでしょ……?


 カルマさんは寝不足で気が動転しているのかもしれない。

 それに、前から思っていたけど——


 この人、ちょっと不器用だ。

 戦闘や料理の腕はすごく器用なのに、こういうところは妙にぎこちない。


『天は二物を与えない』というのは本当なのだろうか。


 ……いや。

 ”二物”は、与えられてる気がするから違うか?


 ……いけない。

 僕まで気が動転してきた。


「それで……話っていうのは何ですか?」


「ああ——」


 僕の言葉を聞いた瞬間、カルマさんの表情が変わった。


「まず、俺の名について話そう。長くなるが……いいか?」


 練習でもしていたのだろうか?

 妙に整った言い回しだった。


「ええ。大丈夫ですよ」


 この状況で突っ込むのも野暮だ。

 僕はそれとなく答える。


「察していると思うが、『カルマ』という名は偽名だ。お前のために作った」


「はい」

 偽名だということは、もちろん分かっていた。


 でも——

 “僕のために作った”?


 あの頃の僕は、“本名を明かした隊長”に強い怒りを抱いていた。

 だから、偽名を名乗れば喜ぶと思ったのだろうか。


 それとも——?


 カルマさん、いや”男性”は重い声で言った。


「俺の本名は——『シャド・リーラッシャイ』」


 一瞬、間を空けて尋ねられる。


「……聞き覚えがあるんじゃないか?」


「すみません。ないです」


「そうか……」

 彼は小さく息を吐いた。


 『リーラッシャイ』の方は、もちろん知っていたし……

 『(シャドー)』をもじった名であることにも別に驚きはしないけど?



「『エト』は話していなかったんだな」


「エトさん……?」


 その名前を聞いた瞬間、胸の奥がざわついた。


 父さんの死を伝えてくれた男性。

 ——その名前だ。


 なんで、ここでその名前が出るんだ。


 嫌な予感がした。


「シャドさん……まさか……」


 僕の声は震えていた。


 男性、いや”シャドさん”は、目を逸らさなかった。


「ああ。俺が()()()()()()()()『ダーク族』だ」

 低い声だった。


「……は?」

 一瞬、言葉の意味が理解できなかった。


 ランタンの火が、わずかに揺れる。


 その言葉は、ひどく簡単に落ちた。

 まるで、ずっと前からそこに置いてあった石ころを弾いたみたいに。

 信じられない。だけど全ての辻褄が合ってしまう。


「——嘘だ」

 僕の口から、勝手に言葉が漏れた。


 シャドさんは何も言わなかった。


 否定もしない。弁解もしない。

 ——ただ、こちらを見ていた。


 その視線が、妙に静かだった。


「……なんで?」

 喉がひりつく。


「なんで、父さんを……?」


 最後まで言葉にならなかった。


 怒りなのか、失望なのか、

 それとも——?



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