襲いくる強敵・Ⅲ
今回はまた、ドラゴンマスク視点のお話です。
ラッシャイタウン。
この大陸で、一二を争う都会街……だった。
奴ら、『ダークスター団』のせいで——
人が消え、流通は途絶え、近辺の村は苦労しただろう。
空き巣だらけで、盗賊による被害も尋常ではなさそうだ。
——いや。
僕たち、『探検隊』がこの街を拠点にしたせい、か。
「ケジメをつけよう」
静まり返った僕たちの拠点。
——今は、僕しかいない。
モグドンからの連絡が途絶えたから——
シャドは、カビ助くんたちの救援に向かわせた。
石化した隊員はもちろん、当時調査に出ていた隊員も、帰ってきていない。
今から、散り散りになった『探検隊』を復旧しなければ。
そうして、”決戦”への戦力を集めなければ——
そんな大変な時なのに、石の床を、重い金属が擦る音。
——来客が訪れた。
誰が来るのか、事前に分かっていた。
シャドの仲間たちの『糸電話』によって、報告を受けたから。
奴らが『空間転移』を失ったおかげで、対策の余地が生まれたのだ。
——暗い通路の向こうから現れたのは、どす黒い甲冑の男。
三日月の装飾が揺れ、二本の刀が鈍く光っている。
「『探検隊』の隊長……! 今日こそ殺す」
”私”は仮面の奥で、静かに息を吐く。
「……来たか」
『ダークスター団』に雇われた殺し屋、武蔵。
何度も戦い、そして毎度決着がつかなかった相手。
今までは、逃げるだけで良かった。
——だが、今回は引くわけにはいかない。
武蔵は私を見ると、わずかに口角を上げた。
「土足で上がり込んで、すまない」
「感情がないのに、礼儀は知ってるんだな?」
「昔、叩き込まれた」
その言葉と同時に、空気が重く沈んだ。
その言葉からは、辛い過去が見えるのに——
奴の声から、感情は何も読み取れなかった。
「ジェム。あいつは『殺すこと』しか頭にないようだ」
シルヴァさんの声が頭に響いた。
——悪感情を見透せる、彼が言うのだから間違いないのだろう。
「本当に、一人で良かったのか?」
「まあ……これしか手がなかったんです。『闇の暴走』相手なら、シャドが適任ですから」
——やるしかない。
私は手を掲げ、周囲の”弾”を感知する。
「頼む……カタツムリたち」
床、壁、天井。
静かに潜んでいた無数のカタツムリが動き出す。
武蔵の目が、わずかに細くなった。
「気味の悪い能力だな」
「思ってもないくせに……よっ‼︎」
手を振り下ろし、武蔵の方へと”弾”を飛ばす。
『蝸牛制御』
だが、次の瞬間——
武蔵の姿が消えた。
——速い。
と思った次の瞬間、奴は私の目の前に現れた。
ブンっ‼︎
刀を振り下ろす音。
「っ……!」
私は慌て、仮面の力を解放する。
——背中から、ドラゴンの翼が広がる。
そして、爪を大きく伸ばす。
ギィン!!
刀と爪がぶつかり、火花が散る。
「おい、ジェム——見ろ」
シルヴァさんの声が再び。
言われた通りに武蔵を見ると——
奴の刀から、どす黒い闇が噴き出していた。
「……その力は⁉︎」
私は距離を取りながら、言う。
「副種族に『ダーク族』を? 以前は無かったな」
「ああ——」
武蔵は刀を軽く振る。
ザンっ!
闇の斬撃が、飛んだ。
私は翼で空へ跳び、避ける。
斬撃は壁を切り裂き、石が崩れ落ちた。
「人を斬りすぎたのか、こんな力が付いたんだ」
武蔵は淡々と言った。
「簡単に言ってくれるなぁ……!」
あの言葉には、感情がなかった。
——ただ事実を述べているだけの声。
上に命令されたからといえ、許される行為ではない。
私は低く言う。
「悪いが、今日はお帰り願おうか」
今から、私の……いや、僕らの”全力”を見せる。
——そうすれば、奴といえど撤退を選ぶはずだ。
「おい……もう”使う”のか?」
察したシルヴァさんが囁いた。
——大丈夫です。
今回は、”見せる”だけ。まだ全快ではないと、分かってますよ。
僕は仮面を外し、構える。
「それが素顔か?」
武蔵も二本目の刀を抜いた。
闇の力に、あの二刀流——
敵は手強い、けど!
「こんな所で負けるわけにはいかない」
『探検隊』の拠点を守る者として。
そして——
いつか来る、”決着”の時のために。
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