サバイバル生活
【前回の登場人物】
「ドラゴンマスク」
(種族)ムシ
(年齢)18
(能力)?
(概要)「探検隊」の隊長。カビ助の命を救う。
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結局どれだけ歩いても出口は見つからない。僕は、えんえんと森をさまよっている。
『……これも、冒険か』
とは言ったものの……普通に、命の危機じゃないか⁉︎
この森の名前すら分からない。
分かっていれば、そもそも迷っていないはずだ。
見渡す限り、森。どこまで行っても、森・森・森。
ヒトどころか、ムシ一人とも出会わない。かなり特徴的な森のはずなのだが。
——僕は、今まで引きこもっていた。
だから、見える風景と知識が、まるで結びつかない。
「……ゴホッ」
胸の奥が、じわりと痛む。
「薬の効果も切れたのか……? また、苦しくなってきた……!」
もう、無理に脱出を目指すより、助けを待った方がいいかもしれない。
最悪の場合、ここでサバイバルすることも考えないと?
——やるしかないのか?
「たしか人間は、何も食べなくても三日は……」
自分に言い聞かせるように呟き、僕は覚悟を決めた。
「……まずは、焚き火だ」
そうは言っても。引きこもりの僕に、サバイバル経験なんてあるはずがない。
知識も、せいぜい幼い頃に父さんから聞いた話くらいだが——
それでも、何もしないよりはマシだ。
僕は、ドリあえず枝を拾い集めながら、食べられそうなものを探すことにした。
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——数時間後。
いつの間にか、日が傾いていた。
普通の人なら、心細くなる時間帯だろう。
「〜〜♩」
でも、僕は一人に慣れている。
長時間の作業の末、素朴ながら、拠点らしきものは完成した。
「……うん。よくやった、僕」
鞄とタオルを組み合わせた、冷たい寝床。
火のついていない薪の山。
どれも未完成だけど、基礎知識があったからこそここまで辿り着けた。
「不思議だな……」
小さく笑う。
「父さんの土産話が、こんなところで役立つなんて」
一生引きこもってばかりで、生涯を終えるものだと思っていた。
やっぱり、知識に無駄なものなどないのか。
とはいえ……
「どうやって、火をつけるんだ?」
確か……
枝を擦り合わせて、摩擦で火を起こす、だっけ?
その理屈はわかる。わかるよ。
だけど——。
「無理だろ、普通……」
引きこもりの僕に、そんな根性があるわけがない。
それでも、やらない選択肢はなかった。
「……やるしか、ないか」
そう決意して、両手で棒を握りしめる。
だが、そんな時。
「火なら、オレがつけてやろうか?」
突然、どこかから声がした。
「……っ⁉︎ だ、誰⁉︎」
驚きで心臓が跳ねる。
だが同時に、胸の奥が一気に軽くなる。
声が聞こえた。ってことは!
――やっと、人に会えた!!
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「……木の上に、いたのか……!」
声の主は、驚くことに上から降りてきた。
真っ赤な体。黄色いクチバシ。背中には、燃え盛る羽根。
——この特徴は、まさか。
「ああ。自己紹介しとくか」
胸を張る。
「オレは『トリ族』のファイアブルだ」
「トリ族……!」
なるほど、木の上にいるわけだ。
DR星でも、「ヒト族」とほとんど関わりのない種族。
本で見ただけの存在が、まさか目の前にいるなんて。
「で、お前は?」
「ぼ、僕はカビ助。この森で迷ってて——」
助けを求めるつもりで、事情を説明する。
トリ族なら、空を飛べる。村の方角くらい、すぐ分かるはずだ。
「と、いうことなんだ。ちょっと手を貸してくれないかな?」
……そう、思っていた。
「あぁ!?」
ファイアブルは、突然声を荒げる。
「ひっ……!?」
「呑気だな、ヒト族。まさかオレが……他種族をタダで助ける、お人好しだとでも思ったのかぁ!?」
「……え?」
言葉が、喉に引っかかる。
——困っている人を助ける。
そんな常識は、誰にでも通じるわけじゃなかった。
「だが、取引といこう」
ファイアブルは、にやりと笑った。
「オレがお前を助ける。その代わり——」
嫌な予感がした。
何とか、話の空気を変えたい。
あ、トリだけに、取り引き……?
いや、やめておこう。冗談が通じる相手ではなさそうだ。
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そして——取引の結果。
僕は、彼の指示を聞くことになりました。
「よろしく……」
「まあ、お前ら『ヒト族』はなぁ」
ファイアブルは、愉快そうに言う。
「暖を取らなきゃ、すぐ死ぬ。従うしかないだろうなぁ?笑」
……うざい。
何だか釈然としない。本当に無事で帰れるのか?
いやでも、いきなり襲ってこないだけ、まだマシ……なのか?
ファイアブルは取引の説明を始めた。
「お前にやって欲しいことは"敵の殲滅"だ」
ん……?
いきなり、物騒な単語だな。
「この森じゃ、縄張り争いが絶えねぇ。オレたち以外にまだ二つ、敵組織が残ってる」
嫌な言葉しか、聞こえてこない。
「——そいつらを潰すのに、協力してもらう」
「ちょっと待て……!」
僕は思わず叫んでいた。
「敵の殲滅って……。それ、僕に"人を殺せ"って言ってるのか⁉︎」
冗談じゃない。いくら命の恩人でも、それは——。
「甘いな、ヒト族」
ファイアブルは、冷たく言い放つ。
「嫌ならいいんだぜ? そのまま出口も分からず、野垂れ死ぬだけだ」
「……っ!」
喉が、詰まる。
——まだ、死にたくない。
それだけは確かだった。
「分かった……」
そう答えた時、胸の奥が重くなった。
こうして僕は、ファイアブルの後をついていく。
他種族を助けるためでも、正義のためでもない。
——生きるために。
人を殺すかもしれない、その可能性から目を逸らしながら。




