表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/170

超獣たちの転移事情

今回は土台モン視点のお話です。時系列は少し前。

********************************************



 異界の空は、今日も静かだった。

 ボクは座標も曖昧な、「モンスター族」が住み着く天空城で瞑想していた。


「……そろそろか」

 胸の奥で小さく軋む感覚を覚えていた。


 数式が、揺れている。世界の構造が、ごく僅かにだが乱れ始めている。

 ——呼び出しの前兆だ。


「お、珍し。お前さんがそんな顔しとるの」


 そんな時。背後から、気の抜けた声がした。

 振り返ると、同族が、冷たい床に腰掛けていた。


 フォルムは可愛らしいが、どこか雑で、力の入った存在感。

 彼の名は「工事モン」。


「……気づいてるんでしょう?」

「そらまあな。ワイも一回、呼ばれとる身やし?」


 彼は関西弁で、からからと笑う。


「で? どんなマスターや?」

「まだ、断片しか……でも、かなり不安定だ」


 ボクは空を見上げた。

 歪みは、感情を媒介にしている。純度が高すぎて、逆に危うい。


「絶望と……諦めが、混ざってる」


「ほー。そらまた厄介やな」

 工事モンは顎を掻きながら言った。


「ワイの元主人(マスター)もな、最初はそないな目しとったで」

「え……その人は、どうなったの?」


 ボクは不意に問いかけたが——一瞬、沈黙が落ちる。

 どうやら、まずい話だったらしい。


 それを確信させるものとして……彼はそのまま、話を切り替えた。

 

「お前の主人は……ワイの元主人の、お友達の、師匠の、息子さんや」

「何だそれ……、近そうで結構遠くないか?」

「はは、そうやな。しっかし……どんな奴かは、聞いとらんな」


 工事モンはそう言ったが、ボクは何となく知っていた。

 いや……正確には、“感じて”いた。


「彼は、運命を変えたくても、()()()()しかできないみたいだ」


 呆れるでしょう? 僕ですら面白いと思ってる。

 だから——陽気な彼からは、笑い声がすると思っていた。


 しかし工事モンは大人しい声で、目を細める。


「ええやん。それ」

「え?」

「一人で世界変えようとする奴より……よっぽどマシや」

「…………?」


 やはり、前の主人に、何かあったのか? 気になる。

 だがそれを聞く間もなく、工事モンは立ち上がる。


「ほな、行ってこい。呼ばれたら戻れんかもしれんで?」


 異界の種族は、別次元へ影響を与えすぎる。

 だからこそ異界に生まれるのだし、移住しても他種族とはあまり関わらない者たちもいる。

 よって……一度均衡を崩してしまえばボクらには責任が降りかかる。

 つまり……戻るには、“後始末”が必要だ。


 工事モンは「素材を別の物に精錬する能力」を持つ。

 そしてそれは物理法則を超越すれば——次元の記憶から、彼の存在自体を消すことも可能だ。だからこそ一度召喚された身でありながら、帰ってきている。


 ——しかし、ボクの能力では記憶までには干渉できない。

 ()()()って奴だ。


「戻るつもりはないよ」

 ボクは、歪みへと一歩踏み出す。

「彼の世界は、まだ危うい。なら――」


「お前が支える、っちゅうわけやな」

 工事モンは背中越しに、優しく手を振った。次の瞬間、世界が裏返る。


「良いマスターやとええな」

「……うん」


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ