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故郷も隊では道の駅

【前回の登場人物】

「カビ助」

(種族)ヒト

(年齢)14

(能力)感情を巨大化させる

(概要)この物語の主人公。過去よりも現在を重視するように決断した。


 ドドリ村は、相変わらずだった。

 赤土の道。低く並ぶ家々。風に削られた岩壁と、その影に根を張る作物たち。

 記憶の中にある光景と、一つも違わない。


 ――なのに。


「……懐かしい、はずなんだけどな」

 そう呟いた声が、やけに遠くに聞こえた。




 村の入り口で、僕らは足を止めていた。

 険しい地形は抜けたため、引率役はフウロウさんではない。今は――


「よし、ここがドドリ村だな!」


 地面を軽く踏み鳴らしながら、モグドンさんが振り返る。

 地中班長「モグドン」。分厚い腕と大きな体格に似合わず、笑顔がやたらと爽やかなナイスガイだ。

 スライム博士とは同期らしく、あの博士にすら軽口を叩いていた。


 この人も、「ドリル族」なのに僕らがピクコノさんを勧誘する必要がある理由ーー

 複雑な事情があるのかもしれないが、いつしか聞いてみても良いのかも。


「久々の帰郷だろ? 緊張するよな。でも……大丈夫だ」


 そう言って、彼は親指を立てる。その仕草だけで、不思議と肩の力が抜けた。


 ーーフウロウさんとは正反対のタイプだ。やはり空中に生きるものと地中に生きるものでは、思想に大きな差が生まれるのだろうか。

 常に最悪を想定し、隙を削ぎ落とす人と、安心を前提にして、仲間を前に進ませる人。


 どちらが正しい、という話じゃない。

 ただ……今の僕には、モグドンさんの存在がちょうどよかった。真実を知り、覚悟を決めた後のメンタルには……安心のできる背中が助かる。


「ありがとうございます」


「おう。まあ、気を張るなよ。まずは村の空気、吸っとけ」


 …………!

 言われて、深く息を吸い込む。


 乾いた土の匂い。どこかで回る風車の音。

 遠くから聞こえる、子供たちの笑い声。


 何一つ、この場所は変わっていない。

 それなのに……胸の奥が、わずかにざわついた。


「こんなに、狭かったっけ」


 古びた作りの家々。優しく挨拶をくれる老人たち。冷たい目の学園生たち。障害物のない、純粋な空。


 ーー以前は、これが「世界の全部」だった。

 同年代は嫌いだったが、治安は良く、図書も充実していて……疑いようもなく十分な場所だった。


 ーーだけど、今は違う。

 実際に見た都会は想像よりも壮大で、知らないうちに世界には悪の組織が迫っていた。本だけでは知ることのできない情報があり……体験できない感情もある。田舎村は心休まる小さな世界だが、僕の世界は今も広がり続けることを目指していた。


 ここにあるのは、知っている風景であって戻る場所ではない。

 僕が変わった。それだけの話だ。


「ん? どうした、マスター。顔色が悪くなってるぞ」

 ゴハートが、ひょいと顔を覗き込む。


「いや……。ただ、村ってこんな感じだったかなって」


「ああ、それな」

 彼は苦笑して、頷いた。


 そして、土台モンが微笑んでくれる。

「それは、マスターが成長した証拠ですね」



 その一言で、胸のざわつきが、少しだけ形を変えた。

 不安じゃない。後ろめたさでもない。


 これは――

 前に進んだ者が、通る感覚なんだ。


「心の準備はできたか? 行こうぜ」

 モグドンさんはそう言って、村の中へ歩き出す。


「ここはお前の故郷だ。でも今日は立ち寄る日だ」


 その背中を見ながら、僕は一歩、足を踏み出す。

 僕はもう、周りの冷たい視線も受け入れる。仲間がいる限り、閉じこもりはしない。


 変わらない村。変わってしまった自分。

 その間に生まれた、小さな違和感は――村人たちにはどう映るのだろう。




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