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第三章「初めての仲間」

前章の登場人物まとめ

・「ファイアブル」:炎の翼を持つトリ族。

・「焼機灼鬼」:ファイアブルの所属する団体の首領。

・「波奇羽鬼」:氷の翼を持つ団体の首領。

・「武危夢鬼」:剛の翼を持つ団体の首領。


青白い光はやがて真っ赤な心臓になり、その周りを真っ白な布が包み込んでいった。


「……助けに来たぜ、マスター!」


これはまさか……いや、間違いなく、「幽霊」だ。

幽霊が僕を迎えに来たのか……? いや、でも「助けに来た」って言ってるし……。


「君は一体…………?」

「オレの名は『ゴハート』。簡単に言うと、あんたの能力で呼び出された存在だ」


…………? 意味がわからない。

でも、彼が「希望」だということは確かみたいだ!


「なんだ? テメェは……。俺たちの邪魔をするんじゃねぇ!」


しかし喜んでいる暇はない。突然の光に驚いていた武危夢鬼たちが、再び襲ってきた。

少しだけ希望が見えた……。今の僕が戦う理由は、それだけで十分だ!


「『ツルピカフラッシュ』!」

「っっ……また光か!」


武危夢鬼たちファイト一族が目を塞いでいる間に、僕らは脱出を計った。

しかし、巨大樹の出口の前にはアイス一族が立ち塞がる。彼らは氷の反射板を構えていた。


「あなたたちの光は対策済みです。武危夢鬼さんのようにはいきません」

「くそぉ……。腕っぷしだけじゃ当然奴らには敵わない。どうすれば……」


さらにそんな時、背後から足音が聞こえた。

…………やはり、希望のあとにはそれ以上の絶望がやってくるようだ。


「悪いがお前を、逃すわけにはいかないんだ」

「ファイアブル……! 僕はお前たちを許さないぞ……‼︎」


前方にアイス一族、後方にはファイア一族、怒りに燃えるファイト一族。まさに八方塞がりというやつだ。ゴハートとかいう幽霊が来たところで、運命は変わらなかった……。

…………あれ? そういえば彼はどこで何をしているんだ?


「諦めるのはまだ早いぜ、マスター!」

「……この声は! 上空にいるのか⁉︎」

「『ゴースト族』なんだから、当然だろ? マスターが時間を稼いでくれたおかげで、大技の準備は整った! 覚悟しろ、軽薄なトリどもめ‼︎」


よかった……僕の出した勇気は、無駄なものじゃなかったんだ! 初対面の幽霊に「マスター」と呼ばれるのはなかなか慣れないが……


「『ゴースト・ヒストリー』‼︎」


彼が自身の心臓に手をあて、そう叫ぶと、あたりには莫大な数の青白い炎が浮かび上がった。

これは、人魂ってやつか……?


「また光の攻撃ですか……? 我々にはもう効きませんよ!」

「炎ならオレたちファイア一族が食べちまうぜ……」


奴らはそう言うが、ゴハートの技はきっとただの光じゃない。初めて会ったはずなのに、僕にはなぜか彼に対する信頼感があった。

僕の期待通り、数秒後には人魂たちから声が聞こえてきた。


「許さない……」「よくも、僕たちの家族を……!」「お前らのせいで、一族は滅んだ‼︎」

「うちはファイア一族に燃やされた」「俺は氷で生き埋めに……」「私は降参したのにひたすら殴られた!」「森から出ていけ……!」「消えろ‼︎」「復讐してやる……!」


どうやらこれは、死者たちの声を届ける技のようだ。いや、実体がある……⁉︎


「『ゴースト・ヒストリー』は通常、一瞬だけ死者と会話できるだけの技。戦いに使うものではないんだがな……! お前たちは無駄な殺生をしすぎたんだ」


人魂たちはトリたちへと怒りの炎を散らす。その炎は特殊なのか……ファイア一族でさえも、防ぐことはできていなかった。


「「くそぉ……ちくしょぉぉぉぉおおおお‼︎」」

「……自業、自得だな」「今のうちに逃げよう……!」



……あれから数時間後。ゴハートの案内で、僕は無事にドドリ村に帰ることができた。


「ゴハート…………君は、これからも僕のもとに居てくれるの?」

「その件なんだがマスター。重要な話をしないといけない……!」


……やっぱり、幽霊は長く現実世界にいてはいけないのか……?

僕は寂しそうに見つめると…………ゴハートは舌を出して笑った⁉


「実はオレ…………、元の世界に戻る方法が分からないんだ!」


ええ…………?


「それってつまり、これからも友達でいてくれるってこと……?」

「そうだぜマスター。だが『友達』なんて関係じゃない。っていうか……オレが帰れないって聞いたら、普通は笑うところだろ? まさか友達が他にいないなんてことは……?笑」


…………ゴハートは、黙り込む僕を見て、再び真剣な表情をした。


「…………悪かった、マスター。まずは、オレのことについて話そう……」

「謝らなくていいよ……。話を続けて?」


ゴハートはうなずいて、この世界に来た経緯を説明し始めた。



DR星には様々な種族が生活している。基本的に知られているのは「ヒト族」「ムシ族」「トリ族」「ドリル族」「スシ族」「ダーク族」「ライトモン族」の七種だ。しかし、この世界とは別の次元、つまりゴハートが元いた世界にもまた、別の種族が存在しているのだという。ゴハートはそのうちの一つ、「ゴースト族」というわけだ。

別次元の存在は通常、こちらの世界に来ることはない……。しかし、何かしらの能力でこちら側から呼び寄せることはできるらしい。



「ということは……僕が君を、呼び寄せたの⁉︎」

「そうさ。『ヒト族』の能力は『自身の特定の何かを巨大化させること』。おそらくマスターは自身の感情を無意識に巨大化させ、それがオレを呼び寄せたんだ」

「じゃあ君は僕のせいで……。なんかごめん…………」

「ああ……いや、マスターは悪くないぜ。悪いのは元の世界に戻る方法を覚えていないオレの方だからな……。だから、オレのことは気にしないでくれ。それに、オレは戻ることができたとしても、まだ戻るつもりはない!」


「え……? なんで……⁉︎」

「マスターは、『生きたい』という感情でオレを呼び寄せた。なのに友達は一人もいないって言うし、頼れる人がいないだろう? そんな状態では身体だけでなく精神もいつかは病に侵される……。それを止めるのが、呼び寄せられたオレの使命だからだ」


ゴホっ、ゲホっ……。急に、現実を突きつけれた。

つまり、僕が友達……いやそれ以上の関係を作って、満足して「生きる」ことができるようになるまでは、ゴハートは元の世界に帰る事はできない。

……そんなの無理だ。僕は、ドリあえず現実逃避しようと思った。


「……わかったよ。これからどうするべきか、少し考えさせてくれ」

「そうか……ヒントが欲しいならマスターの家族に聞いてみるといいぜ」


……は? 何を言っているんだ、こいつは……!

僕は現実を突きつけられた後なのもあって、その言葉に腹が立った。


「僕に家族なんていない‼︎ 一人っ子だし、母さんは物心つく前に死んだ。それに、お父さんだって……三年前、死んだんだ‼︎ 死人に会えとでも……⁉︎ ……あ」

「そう。あんたにはオレがついている」



……死人に会える技、「ゴースト・ヒストリー」は死人の肉体が近くにあることが条件らしい。というわけで僕らは、帰宅よりも先にドドリ村の墓地へと向かった。


「一応言っとくが、この技で会えるのは一人につき数分までだ。これが親父さんに会うラストチャンスになるが……良いんだな、マスター?」

「…………うん。覚悟はもうできてる」


僕らはお父さんの墓の前で、手を合わせる。この文化はDR星が日本と貿易をしているからこそ伝わったものであり、その日本もまた、別の国から学んだ文化であるらしい。まるで命の輪廻転生のように、文化もまた脈々と伝わっているのだ。


「いくぞ、マスター。『ゴースト・ヒストリー』!」

パァァァ……!


……僕は目を開けた。お父さん、話したいことがいっぱいあるんだ。

目の前には懐かしい背中が……あれ? 誰も、いない…………?

隣にいたゴハートを見ると、頭を抱えて塞ぎ込んでいた。


「オレの技が失敗した……? いや、違う。この手応えはまさか……!」

「ゴハート? お父さんには……ゴホっ! 会えない、の?」

「……聞いてくれマスター。おそらくこの墓地には……」


ゴハートは青ざめた表情で、低い声でつぶやいた。


「遺骨が、ひとつも残っていない」

「え………………?」


つまり、お父さんに会うことはできない……? ヒントなしでこれから……。

いや、そんなことはさほど重要ではない。頑張れば自力でどうにかできる問題だ。

一番の問題は…………!


「誰かが、お父さんの遺骨を盗みやがったってことか……‼︎」


僕が抑えきれない怒りを抱えていると、ゴハートが肩に手を置いた。


「落ち着け、マスター」

「こ……こんな状況で、落ち着いてられるかよ!」

「……オレは、あんたの使い魔だ。あんたが『生きる』ためならどこへだって着いて行く。マスターが父親と会えるように、犯人から遺骨を取り戻そう!」

「はっ…………‼︎」


今の僕は、一人じゃなかった。感情のままに動いては、彼に迷惑だ。


「ありがとう、ゴハート。でも『使い魔』なんてやめてくれ」

「でも『友達』ってわけにもいかないぜ。いつかはいなくなるんだから」


いなくなるから友達じゃないってのも変な話だが、僕のしもべのつもりでいるゴハートを納得しないだろう…………あ、そうだ。この言葉があった。


「僕らは…………志をともにする『仲間』だ!」

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