偽りの名
【前回の登場人物】
「ゴハート」
(種族)ゴースト
(年齢)9 ※転生してからの歳
(能力)人魂を呼び出す
(概要)カビ助の気持ちが増幅して召喚された。カビ助の自殺を止める。
「土台モン」
(種族)?
(年齢)173
(能力)土台の設定変更
(概要)ゴハートが連れてきた、新たな仲間。
僕は「カビ助」。幼い頃にこのあだ名で呼ばれ続けて、人との関わりが少なかったため……死んだ両親以外は、本当の名前を知っていない。そして、僕は「憧れの人」が自分と同じく偽名を使っていることを勝手に喜び、情報ひとつを鵜呑みにし、勝手に失望してしまっていた。
ーー彼は「誰もが羨むような英雄」の名を、自ら隠していたから。
だが今は彼のことが少し理解できたような気がする。
身に余る名は、偏見を生む。強敵を倒したという肩書きはーー
「っ……うわああああああ! 速すぎますうううううう!!!」
「敵幹部を追い詰めた新入隊員よ。お前の実力はこんなものか?」
「マスター……!」
「時速180km。ジェットコースターの約1.2倍の速度です」
僕は仲間と共に、メサ地帯の空中を突き進んでいる。
土台モンを運んでいるのはゴハート。そして僕を運んでいるのはーー
「空中班長『フウロウ』。この速度であのスタミナ……恐ろしいぜ」
ゴハートが呟いた。
一体なぜこんなことになってしまったのか。話は数分前に遡る。
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僕はドラゴンマスクさんと合流し、再び探検隊の一員として彼の指示を受けることになった。
テントに戻ると、例の男性が安堵の表情で僕を見つめた。
「無事……だったのか」
その言葉には、自殺未遂への怒り……そして僕の精神への心配も含まれていた。彼はそれを口に出すのが恐ろしくて、この一言だけで済ませたのだろう。
うう……! 命懸けで救ってもらった恩人に対して、本当に、僕は何をやってるんだ。
「申し訳……ありませんでした……。え、と……?」
そういえば、彼の名前をまだ聞いていなかった。
僕の気持ちを察したのか、ドラゴンマスクさんが彼に耳打ちした。
その数秒後、彼は僕に向き直り、答える。
「『カルマ』……そう呼んでくれ」
「ありがとうございます、隊長。えと……あんなことをしておいて、不躾な質問なのですが……」
僕は、無礼を覚悟でずっと気になっていたことを問う。
「カルマさん……は、僕に『死なれては困る』『約束がある』と言ってましたよね。それって……?」
僕の言葉に、カルマさんは黙り込む。
そして代わりに話したのは、またしても隊長だった。
「おい、そろそろ話してもいいんじゃないか……?」
カルマさんは隊長に対してはすぐに返した。
「いや……今は立ち直ったばかり。もう少し先でなければ……」
……本当に、仲がいいんだな。
カルマさんは探検隊ではないようだが……やっぱり、昔の仲間だったのかな?
「あのぉ……?」
蚊帳の外、という感覚を久々に味わった。
……土台モンさん、さっきはこんな気持ちだったんですね。すみません。
「ああ、すまないね」
隊長が微笑む。
いや、謝罪し始めたのは僕の方なのですが……!
「君たちには、今すぐ行って欲しい任務がある」
任務……? 久しぶりの響きだな。
でも、このタイミングだと、カルマさんの話を誤魔化そうと用意されたものに見えるけど……?
ーーだが、違った。
「カビ助くん。君はまだ精神が安定していない」
……僕のための任務だった。
「そこでだ。君には旅行がてら、『ある場所』に行ってもらいたい」
「『ある場所』……? それに……」
僕のことならもう大丈夫、そう言おうとして止めた。
今は、モノを言える立場じゃないーー。
僕はそれほどの迷惑をかけてしまったのだ。
「精神を安定させるには、気分転換が必要だよ。そして……」
隊長は、ゴハートと土台モンさんの方を見た。
「仲間との何気ない時間は、さらに効果的だ」
「…………!」
その言葉には、重みがあった。経験談か……?
やはりドラゴンマスクさん……この人は、その若さで人生を何周もしているかのようだ。ミツバから聞いた話では、「伝説の一族」と出会うまではただの少年だったそうだが……それにしては、達観し過ぎている。
「分かった。マスターのことは、俺らに任せてください」
ゴハートが力強く頷いた。
そして僕と土台モンさんも頷き、旅支度を済ませる。
「では、出発致します!」
僕らは隊長らに別れを告げようとする。
「いや……少し待ってくれ。紹介したい人物がいるんだ」
冒頭の説明は次回に続きます
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