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偽りの名

【前回の登場人物】

「ゴハート」

(種族)ゴースト

(年齢)9 ※転生してからの歳

(能力)人魂を呼び出す

(概要)カビ助の気持ちが増幅して召喚された。カビ助の自殺を止める。


「土台モン」

(種族)?

(年齢)173

(能力)土台の設定変更

(概要)ゴハートが連れてきた、新たな仲間。


 僕は「カビ助」。幼い頃にこのあだ名で呼ばれ続けて、人との関わりが少なかったため……死んだ両親以外は、本当の名前を知っていない。そして、僕は「憧れの人」が自分と同じく偽名を使っていることを勝手に喜び、情報ひとつを鵜呑みにし、勝手に失望してしまっていた。


 ーー彼は「誰もが羨むような英雄」の名を、自ら隠していたから。


 だが今は彼のことが少し理解できたような気がする。

 身に余る名は、偏見を生む。強敵を倒したという肩書きはーー


「っ……うわああああああ! 速すぎますうううううう!!!」


「敵幹部を追い詰めた新入隊員よ。お前の実力はこんなものか?」


「マスター……!」


「時速180km。ジェットコースターの約1.2倍の速度です」


 僕は仲間と共に、メサ地帯の空中を突き進んでいる。

 土台モンを運んでいるのはゴハート。そして僕を運んでいるのはーー


「空中班長『フウロウ』。この速度であのスタミナ……恐ろしいぜ」

 ゴハートが呟いた。


 一体なぜこんなことになってしまったのか。話は数分前に遡る。




 ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎




 僕はドラゴンマスクさんと合流し、再び探検隊の一員として彼の指示を受けることになった。

 テントに戻ると、例の男性が安堵の表情で僕を見つめた。


「無事……だったのか」

 その言葉には、自殺未遂への怒り……そして僕の精神への心配も含まれていた。彼はそれを口に出すのが恐ろしくて、この一言だけで済ませたのだろう。


 うう……! 命懸けで救ってもらった恩人に対して、本当に、僕は何をやってるんだ。


「申し訳……ありませんでした……。え、と……?」

 そういえば、彼の名前をまだ聞いていなかった。


 僕の気持ちを察したのか、ドラゴンマスクさんが彼に耳打ちした。

 その数秒後、彼は僕に向き直り、答える。


「『カルマ』……そう呼んでくれ」


「ありがとうございます、隊長。えと……あんなことをしておいて、不躾(ぶしつけ)な質問なのですが……」

 僕は、無礼を覚悟でずっと気になっていたことを問う。


「カルマさん……は、僕に『死なれては困る』『約束がある』と言ってましたよね。それって……?」


 僕の言葉に、カルマさんは黙り込む。

 そして代わりに話したのは、またしても隊長だった。


「おい、そろそろ話してもいいんじゃないか……?」


 カルマさんは隊長に対してはすぐに返した。


「いや……今は立ち直ったばかり。もう少し先でなければ……」


 ……本当に、仲がいいんだな。

 カルマさんは探検隊ではないようだが……やっぱり、昔の仲間だったのかな?


「あのぉ……?」


 蚊帳の外、という感覚を久々に味わった。

 ……土台モンさん、さっきはこんな気持ちだったんですね。すみません。


「ああ、すまないね」

 隊長が微笑む。


 いや、謝罪し始めたのは僕の方なのですが……!


「君たちには、今すぐ行って欲しい任務がある」


 任務……? 久しぶりの響きだな。

 でも、このタイミングだと、カルマさんの話を誤魔化そうと用意されたものに見えるけど……?


 ーーだが、違った。

「カビ助くん。君はまだ精神が安定していない」


 ……僕のための任務だった。


「そこでだ。君には旅行がてら、『ある場所』に行ってもらいたい」


「『ある場所』……? それに……」

 僕のことならもう大丈夫、そう言おうとして止めた。


 今は、モノを言える立場じゃないーー。

 僕はそれほどの迷惑をかけてしまったのだ。


「精神を安定させるには、気分転換が必要だよ。そして……」

 隊長は、ゴハートと土台モンさんの方を見た。


()()()()何気ない時間は、さらに効果的だ」


「…………!」


 その言葉には、重みがあった。経験談か……?

 やはりドラゴンマスクさん……この人は、その若さで人生を何周もしているかのようだ。ミツバから聞いた話では、「伝説の一族」と出会うまではただの少年だったそうだが……それにしては、達観し過ぎている。


「分かった。マスターのことは、俺らに任せてください」

 ゴハートが力強く頷いた。


 そして僕と土台モンさんも頷き、旅支度を済ませる。






「では、出発致します!」

 僕らは隊長らに別れを告げようとする。


「いや……少し待ってくれ。紹介したい人物がいるんだ」




冒頭の説明は次回に続きます



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