果物の妖精
【前回の登場人物】
「スライム博士」
(種族)ライトモン
(年齢)22
(能力)体の変形
(概要)探検隊の地上班長。「自称」マッドサイエンティスト。
「ようこそ、探検隊の皆さん。我らが『フルーツの森』へ‼︎」
僕たちは博士の案内のもと、何とか無事に目的地へ辿り着いた。
道中、山賊に襲われたりもしたけど……博士とゴハートの敵ではなかった。
そして肝心の「フルーツの森」。
どんな場所なのか不安だったけど、なぜかとてつもなく歓迎されている!
「驚いたかな? しかしこの森は元々、お世辞にも環境がいいとは言えない状態でしてねぇ」
スライム博士の説明は、皮肉が効いている。
それを察したのか、森の長老さんが代わりに説明を継いでくれた。
「そんな状況を、ドラゴンマスク様と、ご友人のラッシャイ市長様が変えてくださったんです。それから我々は探検隊の皆さんを尊敬しております‼︎」
この森に住んでいるのは、「フルーティア族」というらしい。
彼らは果物などに意思が宿った妖精のような存在で、「ゴースト族」と同じく別次元の種族だった。
そんな時に彼らに最適な環境が隊長らによって完成したことにより、この森に移住してきたのだという。
「僕も隊長のことは尊敬してるけど、様で呼ぶほどすごい恩なのですね……!」
僕がそうつぶやくと、遠くから大きな声が響いた。
「その通りだ! 『探検隊』の新人、お前なんかよりあの方を尊敬している‼︎」
その声の主を見るとスライム博士はため息を漏らした。
「やれやれ。モルモットくんが余計なことを言うから、やかましいのが来ましたねぇ……」
「華麗に参上した我が名は『りんご隊長』‼︎ あの方に憧れた同士達が集まる『果霊隊』の隊長である!」
りんご隊長……。変わった子というのが一目でわかった。
「りんご君、ワタシたちは汚染調査に来たのだよ。今は君に構ってる暇はない」
スライム博士がそう吐き捨てると、森の長老さんはふと思いついたかのように言った。
「……では、この者に案内させましょうか?笑」
「……はい? 今なんと?」
「ちょっと待て、じじぃ⁉︎」
対立する両者は同じように動揺する。
ま、まあ……今日はもう遅いから汚染調査は明日からになるそうだ。一旦冷静になってもらおう。
◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎
宿泊施設に案内してもらう前に、集落を少し見せてもらったがドドリ村に似たのどかな雰囲気だった。
しかし森林を大切にしているのか、村は木々と一体化していて……集落の面積自体は、ドドリ村より大幅に少ない。というかそもそも人口が少ないみたいだった。別の次元にわざわざやってくるような人は少ないのかな?
もしかして、都会から田舎に移住するような感覚なのだろうか。
そして数分後、僕ら三人は宿屋「PA-in」に到着した。
「ふう、疲れた〜。やっと腰を下ろして休めるね」
「今日はずっと歩きっぱなしだったからな……。まあ、俺は浮遊してただけなんだけど……!笑」
僕とゴハートがだべっていると博士が言った。
「はいはい、種族の差による自慢ほど無益な会話はありません。早く夜食を食べにいきましょう」
まあ、確かに埋まることのない差だけどさ……。無益って。言い方どうなんすか。
とはいえ、別次元の種族が振る舞うご飯は僕も早く食べてみたいな。
「すみません。ディナーのメニューを見せてもらえますか?」
博士が受付の女性に声をかけると、一枚の紙がもらえた。
あれ? 種類これだけ?
「申し訳ございません。フルーティア族は『光合成』で栄養を摂る種族でして……来客様へのお食事の文化が進んでいないのです。ですのでこのくらいしか……」
驚いた。光を浴びるだけで食事の必要がないって、すごいな。
そんな中、博士は以前にも来たことがあるのか、さらっと注文を決めた。
「ではワタシは『柑橘系フルコース』で。モルモットたち、どうしますか?」
「えーと、待ってくださいね」
「マスター、俺にも見せてくれ。一体どんな料理が……って……あ?」
よくよく見ると、メニューには生の果物だけしか載っていなかった。
嘘だろ……。そうか……加工の文化がないのか!
「こんなんじゃ腹にたまらねえぜ……」
「まあ、仕方ないか……。僕はこれにします、『ぶどう&マスカット ミックス』」
その後、ゴハートは大食いなのかメニューの全てを頼もうとしたが博士に止められていた。
なんでも「探検隊の予算はワタシの研究費のため節約しなさい」だとか。自分勝手な理由だが……まあ博士の発明品はすごく役に立つことをこの旅で知ってしまった僕らに反論する勇気はなかった。
「そういえば、ゴハートってご飯食べる必要あるの? 幽霊なのに」
僕は前々から気になっていたことを尋ねた。昔読んだ本には「幽霊に実態はないので物に触れることが……」みたいなことが書かれていたから。
「それ、よくある間違いだぜ。俺たちは幽霊じゃなくて『ゴースト族』なんだ。マスターの知る幽霊とは前提が違う。幽霊ってのは人間の恐怖が偶像化したものであって、存在してはいない。それに対して俺たちは、別次元に確かに存在している。だから実態もあるし腹だって減るさ」
ふーん、ちょっと難しいけど何となく分かった気がする。
そんな雑談をしていると、あっという間に注文の品がやってきた。
「お待たせ致しました。『柑橘系フルコース』『ぶどう&マスカット ミックス』『丸ごとりんご』でございます」
「おお〜……ありがとうございます〜」
声には出さなかったが、何というか……普通の見た目だ。まあ文化の違いは仕方ない。
そう思いつつ僕はぶどうを口に入れると、なぜだか疲れが急に取れた。
「え、何だこれ! めちゃくちゃ美味しい……⁉︎」
「そうだな、美味い! でも……俺はなんか急に腹を下してきた……」
僕らが新鮮な味に驚いていると、スライム博士が冷静に解説してくれた。
「これらは『フルーティア族』の能力によって生成された果実ですね。彼らは自身と同じ種の果実を自在に成長させることがきるのです。さらに、そうしてできた実には作者の個性にあった効果が付与されます」
なるほど……これが彼らの能力……! 「ムシ族」の能力と似ているが操る対象が違うんだな。
それにしてもおかげ様で、今日の疲れはほとんど取れた。今日はぐっすり眠れそうだ。
まあ、ゴハートは便秘だったのか……今夜はトイレに篭りきりになりそうだ。笑
◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎ ◻︎
「くそ……。なんで我がこんな奴らの道案内をする羽目に……!」
そうぼやきながらもやってくれるんだな……? やっぱり変わった子だ。笑
翌朝。僕らはりんご隊長と合流し、早速汚染調査へ出発した。
もうかれこれ一時間は歩いているが、汚染のおの字もない。本当に綺麗な森だ。
「で? 調査する場所はまだ着かないのかよ?」
ゴハートが急かすとりんご隊長は怒りながら答える。
「案内してやってんのに文句かよ……‼︎ もうじき着くから待てよ、ゴースト族!」
「わかったよ……!」
こんな感じで時々二人は喧嘩し、その度に僕は笑う。
そんな中、博士は嘲るように言った。
「すぐ着く割には、ワタシの汚染物質レーダーは反応しませんがね……?」
「え……? もしかして隊長、方向音痴?」
僕がそう言うと、りんご隊長は顔を真っ赤にして(元々赤いけど)焦り散らかした。
「ちちちちげぇし⁉︎ ……てか、そんなレーダーあるならもっと早く言えよ! ほんっと、タチの悪い博士だな!」
まぁ……それは本当にそう。
だがこれはまた遭難パターンか? トリの森を思い出すな。
しかしそんな時、スライム博士が前に出る。
「大丈夫です。ワタシの力があれば遭難はしない」
そう言って博士は自身の身体を変形させ、上空へと頭を伸ばした。
なるほど、これで汚染ガスが漏れている場所を見つければいいわけか。あれ、じゃありんご隊長の案内いらなかったのでは……? やっぱりタチの悪い博士だ。
そう思いつつも僕は博士を冗談まじりにおだてる。
「おお! すごいですね‼︎ それで、どのくらい離れてましたか?」
「おおぃ! 我の方向音痴度合いを探ろうとすんじゃねぇ!」
りんご隊長の必死な訴えは博士の耳には届いていないようだった。
フルーティアの設定は友達から貰いました。
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