表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
103/135

開戦・旋回・大海戦!

 ——ザバァァァァッ!!

 海面を割って、魚人たちが一斉に飛び上がる。


 濁った瞳。鱗に覆われた肉体。

 人の形をしているのに、そこには意思の熱がない。


「失せろォォォォォ!!」

 ホゲさんの咆哮が、海そのものを震わせた。


 その瞬間。

 ——海が、盛り上がる。


「……え?」

 僕は目を見開いた。

 ホゲさんの周囲。水面が、不自然に膨れ上がっていく。

 波じゃない。もっと巨大な、“海そのもの”の動き。


 次の瞬間——

 ドォォォォォン!!


 海が、爆ぜた。


「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」


 視界が、一瞬で空になる。

 敵の攻撃? いや——

 違う。ホゲさんが……浮いたんだ。


 あの巨体が。山みたいな身体が。

 海を突き破るように跳ね上がった。

 その衝撃だけで、飛びかかってきた魚人たちが吹き飛ぶ。


「振り落ちんなよォォ!!」


 腹に響く声。

 次の瞬間、巨体が海面へ叩きつけられる。


 ——バゴォォォォン!!


 衝撃波。海面が円形に弾け飛び、巨大な波が周囲へ広がっていく。


「ぎゃああああ!!」

「うわ、波が入ってきたァァ!?」


 探検隊員たちが、まとめて飲まれる。


 だが。侵入してきた魚人たちの方が被害を大きく喰らっている。

 遠方から接近していた別働隊の船まで、丸ごとひっくり返っていた。


「……これが、水中班長!」

 思わず、呟く。


 足場が揺れる? いや——

 この人そのものが、戦場なんだ。


「へっ、海の上で俺に勝とうってかァ?」

 ホゲさんが笑う。


 その声と同時に。巨体が、海へ沈んだ。


「ちょっ……!?」

「ゴボゴボボっ!?」

「俺らを置いてどこ行くんすか、班長!?」


 味方側がざわめく。

 僕らは広い海のど真ん中に置き去りにされたのだ。


 だが……次の瞬間。

 ドゴォォォォォン!!


 遠くの海面から、波が突き上がった。

「…………!?」

 魚人たちの足場ごと、水柱が吹き飛ぶ。上下の感覚が、壊される。

 海中から突き上げられたホゲさんの頭部が、そのまま魚人の群れを跳ね飛ばした。


「しっかり掴まってろ!! 波が来るぞ!!」

「空中班! 逃げ遅れたものがいたら救え!!」


 モグドンさんが皆に指示を出す。フウロウさんが対応する。

 そして……

 ホゲさんの尾が、振り抜かれる。


 ——ズガァァァァァン!!


 海が、割れた。いや……違う。

 “壁”が、叩きつけられた。数十メートル級の波。横殴りの海そのもの。

 魚人たちが悲鳴を上げる暇もなく、まとめて呑み込まれていく。


 そして……その衝撃は、当然こちらにも届いてしまう。


「うわあああああ!!」


 ゴハートが僕の腕を掴む。

「マスター、踏ん張れ!!」


 視界がひっくり返った。

 身体が、海に引きずられ、大きく傾く。


 僕は必死に仲間にしがみついた。

 他の隊員たちも、空中班のトリ達に掴まっている。


「班長ぉー! やりすぎっすよ!?」

「空中班、ありがとう……」


 海水が叩きつける。

 一瞬、息ができない。しがみつくことすら困難だ。


 なのに——班長たちは、戦っている。


「散れェ!!」

 モグドンさんの拳が近づく魚人を叩き潰す。

 地響きみたいな衝撃。魚人の身体が弾け飛び、そのまま海へ沈んだ。


 上空ではフウロウさんが翼を広げる。

「——行くぞ、『風刃』」

 空気が裂ける。

 見えない刃が、海面を滑るように走り、魚人たちをまとめて吹き飛ばした。


 師匠も静かに動く。

 黒い閃光。それだけで、三体の魚人が同時に崩れ落ちた。


「強い。皆さん……強すぎる!」


 これからの決戦でも、彼らは間違いなく要になる。

 僕も、作戦会議では……あの中に入って。作戦の要とさせてもらった。ジャックを倒して……街を救った“英雄”だから。

 でも……なのに——!


「すまんかったなァ……置いてっちまって」


 その時、真下の海中に大きな影。

 ホゲさんが援軍の撃退から帰還したのだ。彼は勢いよく浮かび上がり……再び僕らを乗せた。


「お疲れ、ホゲ。いい判断だったよ」

「隊長ォ……! そこは怒られるかと思ったぜェ……」

「いや……敵の数が尋常じゃなかったから、あれは仕方ない」


 実際、ホゲさんがいなければ……こちらの戦力は大きく削られていただろう。

 僕らを運ぶために、一睡もしていないし……? 本当に、すごい人だ。


「だが油断するな。敵の気配をまだ感じる」


 フウロウさんの呟き。

 彼の言葉にハッとしたホゲさんは、敵の位置を皆に伝える。


「左舷側だァ!! まだ来るぞォ!!」

 

 巨大な体から発せられる声はよく通る。状況報告にはもってこいだ。

 そして……左の海面から、新たな魚人たちが飛び上がる。


「まだこんなにいるのか!?」


 戦いは……終わらない。ホゲさんも明るく振る舞っているが、やはり寝不足。

 いつかは体力に限界が来る……!!


「やるぞ、マスター!!」

 ゴハートが叫ぶ。


 土台モンも、ギザンも頷いていた。

「ボクらも手伝いましょう!」

「我らで……数を減らそうぞ」


「右の奴を止めるんだべ!!」


「え……!?」


 ピクコノさんの声で、右を見る。

 数人の魚人が、隊員の一人へ飛びかかっていた。


 僕は反射的に飛び出す。

「やめろ!!」


 助けなきゃ。僕がやらなきゃ。

 そう思った瞬間。


「待っ——!」

 ゴハートの制止。


 でも、遅い。踏み出した瞬間……足場が揺れた。

「うわっ!?」


 ホゲさんが急旋回したのだ。

 僕の身体が大きく崩れる。そして……そのまま。


 ——ザバッ!!

 海面へ、落ちかけた。


「マスター!!」

「くっ……『凝固』!」


 溺れそうな僕の周りの海が、一瞬で氷に変形。

 足場ができ、踏みとどまれた。土台モンが能力で、助けてくれたんだ。


 ギリギリでギザンに腕を掴まれ、引き戻された。

 ——心臓が、凍る。


「な、何やってんだよ!?」

 ゴハートが怒鳴る。

「今のホゲさんの動き見えてなかったのか!?」


「ご、ごめ——」

 言葉が詰まる。


 違う。僕は、助けようとしたんだ。

 でも——?


「気をつけなァ!!」


 ホゲさんの声。

 振り向くと、巨大な魚人が僕へ飛びかかってきていた。


「…………!」

 避けられない。


 そう思った瞬間。

 ——ドォン!!


 横から、巨大なドリルがぶつかる。

 ギザンの攻撃だった。


「まったく……まだ危ういぞ」


 魚人が吹き飛ぶ。彼の放つ技は破壊力が段違いだ。

 ……僕は息を呑む。


「カビ助、まだ“一人で全部やる”のか?」

「っ……!」


 その瞬間。また魚人が現れる。

 今度は、別方向。しかも三体同時。


 無理だ。一人じゃ、間に合わない。

 だったら……。


「ゴハート!!」

 僕は、仲間を頼る。


「了解! あんたは前だけ見てろ!!」

 続いて、土台モン。

「横はボクらがやります!!」


 ——繋ぐ。

 頭の奥で、何かが噛み合った。


 一人で全部やる必要なんて、ない。

 任せきるんじゃない。僕も自分にできることが増えた。

 それを使って……仲間の力を“繋ぐ”んだ。


「……ゴハート!! 右を止めて!!」

「おう!!」


「土台モン、足止め!!」

「任せてください!」


「僕が——中央を叩く!!」


 自分でも驚くくらい、自然に声が出た。


 仲間が動く。魚人の動きが止まる。

 そこへ……僕が、飛び込む!


 全力を叩き込む。

「『人魂・シュート』!」


 ——バリィッ!!

 中央の魚人が吹き飛んだ。


「俺の技……? やるじゃねぇか!」

 ゴハートが笑う。


 その瞬間——海が、静まった。


 誰もが、ほんの一瞬だけ息をつく。

 だが……。


「まだだァ!!」

 ホゲさんの咆哮。

 遠くの海面が——黒く、盛り上がっていた。

 

 魚人のクローンたちの群れが、遠くからまた、襲いくる。

 その数は……先程ホゲさんが撃退したものより多かった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ