表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/169

期待値はいつでもそこに在る

 ゲホっ……ゴホっ……!


 喉の奥が焼けるみたいに痛い。肺がうまく動かない。息を吸うたびに、身体の奥で何かが軋む。

「はぁ……はぁ……っ……」

 苦しい。

 けど、この苦しさには……もう慣れている。


 ここは『DR星』の片隅、「ドドリ村」。この大陸の辺境と呼ばれる場所で、藁の家なんかもまだ残っているド田舎だ。

 ……なのに、学園設備だけは十分過ぎるほど揃っているという。


「学校、か……」

 前に行ったのは、いつだったっけ。


 僕の名前は「カビ助」。でも、これは本名じゃない。

 生まれつきの病気で、身体中にカビが生える。そのせいで付けられた渾名が、いつの間にか定着してしまった。


 ——まあ、今さらどうでもいい。




 プルルルル……プルルルル……

 そんな時、机に置かれていた固定電話の音が鳴り響く。


「電話?」

 一体誰から……?


 いや……考えるまでもないか。担任の先生一択だ。

 僕は受話器を手に取る。


「ゲホっ……もしもし……?」


『ああ、()()()か。分かっているとは思うが……そろそろ授業日数がまずいぞ』


 ——やっぱり、か。


『辛いのは分かる。だが補講を受けに来い』

「分かりました。今から行きますよ……」


 通話を切る。溜息混じりに、ガチャリと受話器を戻した。


 ああ、“カビ助”、ね。

 別に——何と呼ばれようが、どうでもいいんだけど。


「……はぁ」


 正直、外に出るだけでもキツい。息は苦しいし、視線は痛いし、いいことなんて一つもない。

 それでも——僕にとっては。


「久しぶりの……“冒険”だ」


 うん、自分でも何を言ってるのか分からない。

 ただ、部屋の中にいるだけの毎日よりは、少しマシな気がした。


 いつか。

 本当に、いつかでいいから。


 ——運命が、変わる日が来るはずだ。


 僕はティッシュが散乱した部屋を後にし、扉に手をかける。

 玄関には、履き慣れた靴とランドセル。そして——


 『父さん』の、写真立て。


 少しだけ、立ち止まる。

 当然、写真の中の父さんは、何も返さないけど。


「……行ってきます、父さん!!」


 僕は笑って扉を開ける。

 外の空気は、少しだけ冷たかった。



______________


この物語の舞台は、地球と異なる不思議な惑星です。

そのため、次話に『DR星設定資料』を掲載しております。意味の分からない単語と遭遇した際は、そちらをご参照ください。読み飛ばしても構いません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ