プロローグ「期待値はいつでもそこに在る」
この物語は前作「ドリラッシャイ」の少し未来の話です。未読でもなんとなく読めますが、世界観の設定などは分かりづらいので前作を読むことを推奨します。
ゲホっ……、ゴホっ……
「はぁ……はぁ…………」
苦しい。だが僕は、もうこの苦しみに慣れている。
ここはDR星という惑星の「ドドリ村」という場所だ。この村は一部の住居が未だに藁でできているほどの辺境の地だ。とはいえ最低限の施設は整っていて、学校だってある。
「学校か……。前に行ったのはいつだったっけ」
僕の名は「カビ助」……いや、こんなのは本名じゃない。本当の名はもう忘れてしまった。僕は生まれた頃からある重病を患っていて、身体中にカビが生えている。そのせいで村のいじめっ子からそう名付けられ、周りにもその名が定着してしまったのだ。まあ、別にどう呼ばれようがどうでもいいんだけど。
プルルルル……プルルルル……
電話か。一体誰から……? いや、そんなの分かりきったことか。
「ゲホっ……、もしもし?」
「ああ、カビ助か? わかってるとは思うが……そろそろ授業日数がまずいぞ。辛いとは思うが、そろそろ補講を受けに来い」
「先生……。分かりました。今から行きますよ……はぁ」
はぁ……。よし、今日は久しぶりの冒険だ。
「苦しいし……周りからの目もウザいけど…………。いつか、運命は変わるはず‼︎」
僕はティッシュが散乱した自分の部屋を後に、扉を開けた。
そして玄関には靴とランドセルと、お父さんの写真立て。
「じゃあ、行ってきます! お父さん‼︎」