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第九話 物資の確保。


衣食住。

この三つは生物にとっては切り離せないモノである。


食と住処は現在進行形で、対処している。

となると、次は着る物等である。


着る物は文化や素材の入手難度、気候によって変化するモノである。

野生に居る魔物にとって、加工するという概念は元々ない。

精々が人間を襲った時に手に入れるか、草木などで隠す位である。


しかし、人化進化したホブゴブリンやハイオーク等は人に近い姿になって居る。

そして世界中から集められた人族も居る。

物資を作る、もしくは手に入れる必要が出てくるのである。


もちろん、奴隷だった人族にも作れる者は居るのだが、まだまだ足りない状況である。

それ以外の物資も不足がちである。


物資を手に入れるには外貨が必要である。

外貨は得る必要が出てくるという事だ。


「不足がちな物資をどうやって手に入れるか?という問題か。」


「はい。手っ取り早いのは外貨を用意し購入してくるというモノです。」


「外貨か。」


「もしくは、成長を促し、この中で解決できるようにしていく事ですね。」


「奴隷だった者の中には鍛冶をしていた者やドワーフなどもおりますが、ホブゴブリン達もドワーフ程ではないにしろ、器用な者もおりますので、習得する者が出て来ておりますが、それでもまだまだ時間はかかるでしょう。」


「そうか。」


物資を潤すのも統治者の使命であるが、まだこの国を外に発表するタイミングではない。

困るのは、全て民である。


「無いのなら、ある所から貰えば良い。」


「はい?」


「悪徳商人など腐る程、この世界に蔓延っておろう。」


「なるほど。」


「悪徳商人狩りといこう。」


「「「「はっ!」」」」



◇◇◇◆◇◇◇



「えっ?グエン商会が破産した?」


「ああ。どうも詐欺にあったらしい。」


「嘘だろ?あれだけ悪名高いグエンが、詐欺に会うなんてあり得るのかよ?」


「噂じゃ、グエン会長がサインしたのは、二束三文の偽物で、大量の物資を奪われたそうだ。」


「マジか?そもそも金銭のやり取りじゃ無いのかよ?」


「ああ。グエン会長は持っている金と借金してまで手に入れた金で、大量の絹を買いあさって交換したのが、全て偽物だったって話だ。」


「何と交換したんだ?」


「さぁな?騙されるくらいだから、よっぽどの品だったんだろうぜ。」


「アイツは女好きって噂があったから、そっち関係か?」


「かも知れないな。」


「馬鹿だねぇ~。」


「どうせ、欲でもかいたんじゃねぇぁ?」


「そうかもしんねぇな。まぁ、ザマーみろ!と、思うだけだけどな。」


「たしかにそうだな。がははは。」


街のいたる所でそんな話が出回った。

ただの町人が話しているのだから、誰もが知っている話なのだろう。


「ふふふ。悲しむ者は居ないみたいですね。」


「ああ。アイツは悪名高い商人だったからな。」


「ふふふ。そうですわね。喜ぶ者は居ても悲しむ者は居ませんわね。」


垂れかかるギャネックを片手を腰に回して支えて歩くナベリウス。

傍から見れば、アツアツのカップルである。


「次はどちらに?」


「そうだな。同じ様に悪名高い奴が居る場所は分かっている。そこに向かう。」


「今度は何処に連れて行って下さるのですか?」


嬉しそうに微笑むギャネックの頭を撫でるナベリウス。

二人は、そんな会話を楽しみながら街を出て行った。



◇◇◇◆◇◇◇



取引相手は分からないが、詐欺にあった商会は、悪名高い商会であり、安堵する者が居ても、解明してやろうとする者は居なかった。それは貴族であっても、王族であっても同じであった。


皆が安堵するだけ。噂は広がるも、事実は闇の中。

権力を失う悪名高い商会は、誰もが嬉しいだけだった。

そしてその取引相手に渡ったハズの物資も取引後に見たモノは居ない。

商売の神様の仕業では無いか?罰が当たったのだ。と言われる始末。

追求はされなかったのである。


それは、国が代わっても同じであった。

世界中で起こった出来事であったのだが、【神の御業】で終わってしまう。

損をしたのは悪名高い商会だけだったからでもあるのだろう。


それに詐欺にあった商会は潰れるしかなかった。

借金をして店を取り上げられたり、持っている権利を手放したりしなければならない商会ばかりだったからである。

しかも、金銭を奪われたのではなく、物々交換による契約だった。

金銭が所在不明になったわけでは無いので、足がつかない。

大量の物資が忽然と消えただけ。その後を追っても物の一つも見つからない。

人の手で起こせるレベルの事件では無かったのだ。

忽然と大量の物資が跡形もなく、無くなるのは非現実的と言える。


その上、悪名高い者を助ける存在は無く。悪名高い商会が潰れただけであった。

スカッとした者が多く、更には【神の罰】との噂も流れたために、国としての追求も行われなかったのである。


そして、その後は当面の間、悪名を恐れる風潮が起こり、あくどい商売をする者は激減した。

世界中から悪名高い商会が居なくなった事により、商人達は真っ当な商売をする者が増えた事実。

それらの事実は間違いないのだから。


≪悪い事すると罰が当たる。≫

このセリフで、子供たちに教育する親達が増えたというのもまた効果覿面のようだ。


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