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異世界復讐代行『その恨み、晴らして見せます』  作者: 馬汰風
第一部「龍の会の日、復讐代行屋は夜を待つ」
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第二話

 いつから龍の会がこの国に生まれたのか、それを知るものは数少ない。

 わかっていることは、龍の会とは悪党の命を競り(・・)にかけている。

 その競り(・・)に参加するのは圭だけだ。他の3人はどこで開催されているか知らない。

 そのため、龍の会で何が行われているか、ラーフィリスは圭から聞いた話でしか知らなかった。


──悪趣味な会だよ。 悪党の命を幾らまで下げられるかを競る(・・)んだ。


 圭が不機嫌な顔で言っていたのをラーフィリスは思い出す。


──競り(・・)っていうのは、値段を上げていくんじゃないの?


 彼女がそう質問すると、圭は皮肉気に頬を釣り上げた。


──普通はな。 でも、龍の会では逆なんだ。


──この者の命は連合銀貨何枚か?100なのか?


──いやいや、もっと下げられる、そんなに価値がある命ではない。


──では90か?


──いやいや、もっとだ、もっと下げられる。


 身振り手振りを交えながら不快そうに圭は語った。

 この競り(・・)で最も安い値段をつけたものが、復讐代行の仕事を受けることができる。地球で言うところ、競合入札が一番近いだろう。

 値段を下げる事で、悪党どもにこういっているのだ。『お前の命は、そんなに高くないぞ』と。


 いずれにせよ、これだけ情報を調べ、依頼が出たにせよ金額勝負で勝てなければ意味がない。安い金額で仕事を受けても、儲けが出て安全に終わらせるには、事前の下準備が大事だった。


 ラーフィリスは圭に言われ、居場所がつかみにくいカイルの行動を調査していた。

 殺しをするなら全員同時、1人でも後回しにすると、警戒されて逃げられてしまう可能性がある。そうなったら、今度は自分たちが獲物になる番だ。龍の会は失敗を許さない。


「これは良い品ですね、これはどちらから?」

「お目が高いね。 これはあの商家から購入したものさ」

「なるほど、流石は名高い」


 聞き込みをした結果、居場所が判明したカイルを、ラーフィリスは遠くから監視していた。市場の出店で商品を確認しながら、和気あいあいと話をしている。その様子は、まるでまっとうな商人の卵のように見えた。


 女衒という職業は専属ではなく、それ以外にも仕事を持っている事が多い。大抵の場合は、仕事の時間を自由に決められる冒険者が選ばれる。というかその性質から、犯罪者の多くは冒険者ギルドに所属していた。そのため、冒険者ギルドについてあだ名は悪徳の温床である。

 カイルも大多数と同様に、冒険者ギルドに所属しているらしいが、あまりまじめに仕事をしてはいないようだ。

 冒険者ギルドでは、所属しているギルド員を6段階評価しており、上からS、A、B、C、D、Eランクといった具合に呼ばれている。カイルはEランク冒険者だ。


 冒険者ギルドもさすがに自分たちが悪徳の温床と呼ばれているのは把握しているらしく、Eランク冒険者とはもっとも信頼できない事を前提に仕事がふられる。依頼主が安かろう悪かろう屑かろうで、1日ソロヴァ銀貨2枚程度で、馬鹿でもできる仕事をEランク冒険者に任せる。

 Eランク冒険者はマージンとして大銅貨6枚をギルドに回収されるため、その日の食事代ぐらいしか賄うことができない。

 代わりに、ギルドは様々な仕事斡旋する。それが冒険者ギルドに登録する価値だ。どんな屑でも登録したその日から仕事を得られるのは冒険者ギルドぐらいだろう。

 そして依頼主も、屑とはいえそこら辺のモグリを雇うよりはマシな人材を借りることができる。最低限として金だけ受け取って逃げることはないし、依頼者を殺すなどの次元が違う問題が発生したときは、冒険者ギルドの手によって始末してもらえる。


 そういった冒険者ギルドにカイルは所属しているが、最近は積極的に女衒として働いているようだ。


「あそこの売り場の元は確か……白絹屋の婚約者のところか」


 今日のカイルは昨日までの服装と異なり、上品そうな服を着ている。マイク機織りで仕立てたのか、新品の服を着たその様子は、まるで良家の息子だ。

 彼は聞き込みや、情報収集をしながら白絹屋の婚約者の妹──すなわちリコに近づこうとしているようだ。


 そのことに気づき、ラーフィリスはぞっとした。1人を殺したというのに、何も気にせず次を探そうというのだろうか。

 笑顔で女性と話すカイルが、彼女にはただ気持ち悪かった。


──ラス、この稼業は地獄だ。 どんなに崇高な言葉を並べても、人間が悪意でできたタンパク質の塊だって感じさせられるからな


──タンパク質?


──ああ、いやこっちの話だ


 圭の力になりたいと、ラスが復讐代行の道を選んだには2年前のことだ。彼は断ったが、彼女がどうしてもというと、渋々と認めた。


(ほんとmケイさんの言うとおりだ……)


 この仕事をやるたびに、人間の汚い部分を見せつけられていた。


──この稼業は足抜け禁止、死ぬまでやめられない……けど、ラスは特別だ。 いつでもやめていいぞ。


 事あるごとに彼は言っていたが、彼女はやめる気はなかった。


(足手まといになるなら、同じ仕事やっている意味がない)


 ラーフィリスは強い意志を持って、カイルの足取りを追い続けた。



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