第4話 入団式
翌日。
陽翔はまだ体の疲労が残る体を引きずりながら、
暴黒の獅子の拠点に向かった。
昨日の手合わせの悔しさと、契約書にサインしてしまった現実が頭の中をぐるぐる回る。
「……本当に、俺で大丈夫なのか?」
心の中で自問しながらも、
足は自然と拠点の扉へ向かっていた。
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拠点の大広間。朝の光が木の床を淡く照らす。
近衛がゆったりと立ち、皆を見渡す。
「さて、今日から新しい仲間が加わる。
陽翔、まずは一言自己紹介してくれ」
陽翔は少し顔を赤らめ、深呼吸する。
「え、あ、はい……!赤月陽翔です。
人に魔法が撃てませんが、これから精一杯頑張るつもりです!よろしくお願いします!」
団員たちは笑顔や軽い拍手で迎える。
「おい、声が小さいぞ!」と烈がからかい半分に言う。
優しそうな男性がゆっくり立ち上がる。
「僕は雨夜薫です。副団長を務めています。
陽翔くん、困ったことがあれば、いつでも僕に相談してくださいね」
紺髪を七三に分けた髪型に丸縁メガネをかけ、
穏やかな笑みを浮かべている。
落ち着いた雰囲気で先輩として頼れる存在感があった。
「私は守谷澪です。
前線と回復を担当してるの。
怪我したら私が治すから、遠慮しないでね」
薄紫がかったピンクの髪と瞳、
グラマラスな体型とお姉さん気質の、
柔らかい立ち振る舞いが初対面でも安心感を与える。
気が強そうな女性がら腕を組み、ぴしっと立つ。
「鋼崎千景。
近距離から遠距離まで万能に動けるわ。
……何かあったら言いなさい」
小柄で華奢な体型、灰髪のショートに黄色い瞳。
少しツンとした雰囲気がある。
轟烈が腕を振り上げて元気に手を振る。
「昨日ぶりだな!俺は轟烈!
陽翔!また手合わせしような!」
近衛が大きく深呼吸して立つ。
「改めて……俺は近衛一真、団長だ。
陽翔、ここではみんな、お前の力になる。
困った時は俺を、皆を頼れ。
任務でも普段でも、俺たちは……一緒にやっていく仲間だ」
そして月島が優しく微笑み、陽翔に手を差し伸べる。
「私も改めまして、月島結菜。
ここのオーナーです!と言ってもそんな畏まらなくていいから安心してね。
困ったことがあったらいつでも相談してね!」
柔らかい笑顔と落ち着いた声が、大広間に温かい空気を作っていた。
陽翔は胸が温かくなり、笑顔で答える。
「はい……皆さん!よろしくお願いします!」
近衛が大きく手を広げ、声を張る。
「よし、それじゃあ入団式のメインだ。
陽翔に隊服を渡す」
目の前に置かれたのは、黒を基調にした精悍なデザインの隊服。
胸元には「暴黒の獅子」の紋章が刺繍されている。
紋章は横を向くライオンの顔だけが描かれ、
たてがみは鮮やかな金色で縁取られている。
黒い隊服とのコントラストが力強く映える。
ライオンの鋭い瞳は薄紫の糸で刺繍され、光を受けるたびに微かに輝き、威厳を放っていた。
「これを着れば今日からお前も正式な団員だ」
陽翔は慎重に手に取り、しばらく見つめた。
「……ありがとうございます……!」
近衛は軽く頷く。
「動きやすさと耐久性も考えて作られている。
基本的に任務時は必ず着用だ」
「はい!」
近衛がにっこり笑い、手を広げて言った。
「よし、陽翔。ほら、あっちで隊服に着替えてこい」
陽翔は少し緊張しながらも指示に従い、
更衣スペースへ向かう。
袖を通し、肩を整え、ズボンを履き、ベルトで腰を締める。
鏡に映る自分を見て、
胸が高鳴る──黒い隊服と金色の紋章。
そして新しい仲間としての自分の姿。
「……かっけえ……」
自然と小さな声が漏れた。
更衣スペースから戻ると団員たちの視線が一斉に集まる。
烈は目を丸くして手を叩いた。
「おお! 陽翔!似合ってるじゃねぇか!」
薫は静かに微笑み、頷く。
「うん、いい感じだね」
澪は胸元の紋章を指さしながら言った。
「この紋章がいいのよねぇ。皆同じだから仲間って感じ」
千景は腕を組んで、少しツンとした表情を作る。
「……なかなか悪くないじゃない」
月島は穏やかに微笑み、陽翔の肩を軽く叩く。
「とっても似合ってるよ、陽翔くん。
今日から本当に仲間だね」
近衛はゆったりと笑い、両手を腰にあてる。
「よし、これで今日から正式な団員だ。
さあ、これから一緒にやっていくぞ」
陽翔は胸が温かくなり、仲間たちの視線を受けて自然と笑顔になる。
「はい……よろしくお願いします!」
大広間には、少しだけ緊張と、たくさんの期待が混ざった、温かい空気が流れた。
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大広間の隅では烈と千景が何やら言い合いをしていた。
澪はその様子を苦笑しながら眺め、
薫は机に向かって静かに書類を整えている。
穏やかで、どこか家族のような空気。
昨日まで想像していた“荒れた底辺クラン”とは
あまりにも違っていた。
陽翔は、月島の方へ視線を向ける。
「……月島さん。ひとつ、聞いてもいいですか」
「はい?」
「なんで……こんなに普通で、いい人たちなのに
悪い噂が立ってるんですか」
月島は一瞬だけ言葉に詰まり、
それからゆっくり息を吐いた。
「……噂、間違ってない部分もあります」
陽翔は思わず、言葉を失った。
「暴黒の獅子は……
もともと本当に噂通りのクランでした。
実力の低い人も多くて、任務も失敗続きで……」
視線の先で近衛が団員たちと何気ない会話をしている。
「それでも近衛さんは、見捨てなかったんです」
月島は、少しだけ遠い目をした。
「一年前……
この拠点が、魔人に襲われたことがありました」
「当時のメンバーで、
魔人を討伐できる実力者がいるはずもなく
被害はただただ増えていく一方でした」
「そのとき、近衛さんは偶然居合わせて……
迷わず、助けに入ってくれたんです」
壊された建物。
逃げ惑う人々。
混乱の中で、ただ一人前に出た男。
「……その惨状を見て、私、思ったんです」
月島は胸元に手を当てる。
「このままじゃ、何も変わらない。
弱い人は、ずっと切り捨てられたままだって」
彼女は、クランを変えようとした。
無茶な依頼を断り、最低限の規律を作り、
“弱くても守れる組織”を目指した。
「でも……誰も、ついてきませんでした」
理想論だと笑われ、
お前らにはついていけないと背を向けられ、
一人、また一人と脱退していった。
「気づいたら、残ったのは……
近衛さんと、私だけでした」
静かな沈黙が落ちる。
「それでも近衛さんは言ったんです。
『これでいい。最初からやり直そう』って」
月島は小さく笑った。
「任務を受けるより先に、仲間を集めようって」
無理に仕事を取らず、評価を取り戻すよりも、
“信頼できる人間”を集めることを選んだ。
「そして薫さんと澪さんが加わって、
そのあとに千景さんと烈さんが来ました」
そして今。
陽翔がここに立っている。
「だから……この一年……
暴黒の獅子はほとんど任務をしていません」
月島ははっきり言った。
「評判が更新されることもなく、
昔の“底辺クラン”って印象だけが……
残ったままなんです」
「だから……暴黒の獅子は今も“底辺”って言われてます」
悔しそうに月島は、はっきりと言った。
「過去が、そうだったから」
陽翔は、胸元の獅子の紋章を見る。
横を向いた獅子の顔と、金色のたてがみ。
誇示するでもなく、吠えるでもなく、
ただ静かに前を見据えている。
「……でも」
月島は、ほんの少しだけ誇らしげに微笑んだ。
「〝これから〟は違います」
陽翔はゆっくりと頷いた。
噂は、過去の影。
そして暴黒の獅子はまだ、変わり続けている途中なのだ。
「……っと! なんか重くなってきたな!」
烈がぱんっと手を叩き、明るい声を上げた。
「まあ要するにだ! 昔はいろいろあったけど、
今はちゃんと前向いてやってます、って話だろ?」
場の空気が、ふっと緩む。
澪が苦笑しながら烈を見る。
「もう……でも、間違ってはいないわね」
「だろ? 暗い顔してても何も変わらねえ」
烈は笑いながら肩をすくめた。
千景が小さくため息をつく。
「……あんた、雰囲気ぶち壊す天才ね」
「壊すのは得意だぜ!」
そんなやり取りに、自然と空気が和らいでいく。
薫は書類をまとめ終え、静かに口を開いた。
「陽翔くん。今の話、急に重かったと思うけど……
無理に全部理解しなくていいからね」
陽翔は少しだけ戸惑いながらも、頷いた。
「はい……ありがとうございます」
近衛は腕を組んだまま、一同を見渡す。
「よし、顔合わせは済んだ。あとは、これからだ」
団員たちがそれぞれ動き出す。
大広間は少しずつ、賑やかさを取り戻していった。
陽翔は、その様子を少し離れた場所から見ていた。
騒がしくて、落ち着かなくて、
それでも——妙に安心する空気。
胸元の獅子の紋章に、そっと視線を落とす。
「……よし」
小さく息を吐き、陽翔は一歩踏み出した。
ここから始まる、このクランでの日常へ。
「……陽翔くん」
静かな声がした。
振り向くと薫が少しだけ柔らかい表情で立っていた。
紺色の髪を整え丸縁の眼鏡越しに穏やかな視線を向けている。
「ちょっと、いいかな?」
「は、はい」
陽翔が頷くと、薫は広間の端、
窓際の落ち着いた場所へと歩き出した。
朝の光が差し込み、床に淡く影を落としている。
「さっきの話……急に重たいことを聞かせてしまって、ごめんね」
薫はそう言って、軽く苦笑した。
「いえ、大丈夫です」
「そう? ならよかった」
少し間を置いて、薫は続ける。
「君がここに来る前の暴黒の獅子は、
正直言って……あまり誇れる状態じゃなかった」
その言葉には、否定も飾りもなかった。
薫は少しだけ言葉を選ぶように、視線を落とした。
「……さっきの話、ひとつだけ付け加えるなら」
陽翔は黙って耳を傾ける。
「僕はね、近衛さんに救われて、ここにいる」
淡々とした口調だったが、
その言葉には揺るぎがなかった。
「昔、判断を誤って……自分ひとりじゃ、どうにもならない状況に陥ったことがある。
そのとき、手を差し伸べてくれたのが……近衛さんだった」
薫は静かに息を吐く。
「強いだけじゃない。
〝守る〟ということを、迷わず選べる人だ」
そして、眼鏡越しに陽翔を見る。
「だから僕は、あの人の背中を信じている。
副団長をやってるのも、その延長だよ」
少し照れたように、薫は笑った。
「……尊敬してるんだ。心からね」
陽翔は、その言葉を噛みしめるように頷いた。
「だからね。君が『人に魔法が撃てない』って言ったとき、
それを理由に拒む人はいなかった」
陽翔は、少し驚いたように目を瞬かせた。
「君の実力とか魔法が撃てないとか関係ない。
人を無条件で助けれる君を、僕達は信じる」
薫は優しく微笑む。
「無理をしなくていい。困ったら、僕に言って。
副団長としてじゃなくてもいいから」
その言葉は、静かで、押しつけがましくなかった。
「……ありがとうございます」
陽翔は、素直にそう答えた。
「うん。じゃあ……」
薫は少しだけ表情を崩し、肩の力を抜く。
「今日は顔合わせだけだし、このあと烈くんに捕まる前に、逃げておいた方がいいかもね」
「え?」
「十中八九、無駄に絡まれるから」
その一言に、陽翔は思わず笑ってしまった。
遠くの方で、烈が誰かに大声で話しかけているのが聞こえる。
「……本当ですね」
二人は小さく笑い合いあった。
「陽翔ー!手合わせしようぜー!」
背後から、いきなり腕が首元に回された。
「わっ……!?」
「昨日の動き、結構良かったんだよな!
もう一回やろうぜ、今度はちゃんと縛るからよ!」
力は軽い。
締める気などまるでない、ただの悪ふざけだ。
赤く刈り上げた髪に、鍛えられた肉体。
烈は年上らしい余裕を浮かべたまま
無邪気に笑っている。
「ちょ、烈さん……!」
「……離しなさい」
明らかに機嫌の悪い声だった。
烈の腕が、ぴたりと止まる。
振り向くと、腕を組んだ千景が立っていた。
小柄な体に灰色のショートヘア。
鋭い黄色の瞳が、烈を真っ直ぐ射抜いている。
「何よ朝っぱらから。新人に絡むのやめなさい」
「絡んでねぇって。可愛がってるだけだろ?」
「そういうのを絡むって言うの」
千景はため息をつき、烈を睨む。
「それに……あんた、
昨日の掃除当番、サボったでしょ」
「はぁ!?」
烈が大げさに声を荒げた。
「サボってねぇし!
昨日はルール違反の罰で筋トレしてたんだよ!
時間なかったんだっつーの!」
「だからって免除になるわけないでしょ」
「理不尽かよ!」
「自業自得でしょ!」
二人の言葉がぶつかり合い、ぱちぱちと火花が散る。
「……もう、朝から元気ね」
少し呆れたような、それでいて柔らかい声。
澪が二人の間に歩み寄った。
紫がかった薄ピンクの髪が、肩の上でふわりと揺れる。
穏やかな薄ピンク色の瞳が、言い合う二人を包み込むように細められた。
「掃除の件は、あとでちゃんとやればいいでしょ。
今日は顔合わせの日なんだから」
「……ふんっ」
「……ちっ」
千景と烈が同時に視線を逸らす。
澪はくすっと小さく笑った。
「ほら。二人とも、深呼吸」
その一言で、張り詰めていた空気がふっと緩む。
薫は机の書類を整えながら慣れた様子で小さく息を吐いた。
近衛は腕を組んだまま、その様子を静かに見ている。
どうやら、これも日常の一部らしい。
「……あんたは、気にしなくていいから」
千景がちらりと陽翔を見る。
険しい表情のままなのに、その瞳だけは不思議ときつくなかった。
「烈は放っておくと、調子に乗るだけだから」
「おい!」
烈がすかさず突っ込む。
「今の絶対余計だろ!」
「事実でしょ」
「ちくしょう!」
そのやり取りに、陽翔は思わず小さく笑ってしまった。
騒がしくて、くだらなくて、でも、不思議と落ち着く。
昨日まで、噂でしか知らなかったクラン。
今はもう、その中に自分が立っている。
陽翔は、無意識に肩の力が抜けていることに気づいた。
(……悪くない)
誰かが怒鳴っていて、誰かが呆れていて、
それでもちゃんと誰かが止めてくれる。
そんな当たり前の光景が、ここにはあった。
ここから始まるのは、戦いだけじゃない。
こうした日常も含めての、“暴黒の獅子”なのだと。
副団長
26歳
雨夜 薫
176cm
65kg
細マッチョ。
紺色の髪を頬までの長さで七さんで分けている。
丸渕の透明なメガネ。
優しそうな顔をしている。
基本的に性格は穏やかで優しく
暴黒の獅子の良心
口下手な団長に変わって言葉でフォローする。
団長に救われ団長を尊敬し一生ついていくと
決めている。
名前:鋼崎 千景
年齢:23歳
性別:女性
身長 :155cm
体型:華奢・ぺちゃぱい
性格:ツンツンしてるが、本質は誰より優しい
能力:鍛成(鉄属性)武器や盾を錬成する能力
髪色、灰色
瞳 黄色
顎下くらいのショートヘア。
守谷 澪
25歳
170cm
グラマラスで女性らしい体型。
髪色 紫がかった薄ピンク
瞳 薄ピンク
能力 活性 体の組織を活性化させ回復する。
巨乳で女性らしい体つき。
無意識に人を惹きつける雰囲気を持ち、距離感が近い。
仕草や声色に色気があるが、本人に自覚は薄い。




