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人に向けて魔法が撃てない俺はニートになろうとしたら底辺クランに入団させられました  作者: いぬぬわん


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第24話 2人の実力

訓練場へ到着後

七瀬はふと思い出したように手を叩いた。


「……あ、そや」


全員の足が止まる。


「戦る前に一個ええ?

烈くんの魔法、ちょっと見してくれん?」


「は?」


烈が眉をひそめる。


「なんでだよ」


七瀬は悪びれもせず、にこっと笑った。


「ええから、ええから」


「……俺は爆破魔法だ」


短く言い切ると、烈はハンマーを握り直す。


「見りゃわかる」


そう言って一歩踏み込み、ハンマーを振り下ろした。


ドンッ!!


地面が弾け、衝撃波が走る。

爆音と共に、砕けた地面が舞い上がった。


「おぉ……」


七瀬が目を細める。


「なるほどなるほど。

ハンマーに魔力乗せて、着弾点を爆破するタイプやな」


烈がちらりと睨む。


「見りゃわかるだろ」


「いやいや、見るのと“理解する”のはちゃうで?」


七瀬はそう言いながら

何気ない仕草で烈の腕に触れた。


ほんの一瞬。


「……?」


烈が怪訝な顔をした、その瞬間。


七瀬の右手に、淡いオレンジの魔力が灯る。


「ほな、ついでに自己紹介しとこか」


全員の視線が集まる。


「僕な、他人の魔法をコピーできんねん」


「……は?」


「コピー?」


陽翔が思わず声を漏らす。


七瀬は軽く肩をすくめた。


「条件は簡単。

相手の魔法を見て理解して、触れるだけ」


そう言って、右手を掲げる。


次の瞬間。

七瀬の手元で、小さな爆発が起きた。


ドンッ。


規模は烈より一回り小さいが、確かに同質の爆破。


「……マジかよ」


烈が目を見開く。


「ただしな」


七瀬は人差し指を立てる。


「色んな魔法を〝同時〟につこうたりはできへん」


そう言って、軽く笑った。


「それに威力も本家の七割くらいやな。

せやから、あんま過信せんといてな」


(……制限付きのコピーか)


陽翔はそう受け取った。

だが、それでも充分すぎる。


(コピー魔法……しかも条件が割と軽い)


七瀬は視線を姫華へ向ける。


「ほな、そろそろ始めよか。

そっちは3人でかかっておいで」


「あ?舐めてんのか?」

ハンデを貰うことが許せない烈。


「ちゃうちゃう。

そっちのほうがわかりやすいやろ色々」


烈をいなすように一歩引きマジックルーム起動する。


姫華はすでに武器の大太刀を抜き、圧を放っていた。


「ったく……新人とは思えねぇ圧な!」


「せやねん、ゴッツイやろ」


次の瞬間。

姫華の周囲に、灼熱の炎が渦を巻く。


「時間も惜しいので始めますよ」


一気に距離を詰めるその動きに、陽翔の背筋が粟立った。


(速い……!)


炎を纏った刀が、千景へ向かう。


「っ――!」


千景が剣を生成し受け止める。

鉄が赤熱し、表面が溶け落ちる。


「……っ、鉄が……!」


「私は炎属性。相性最悪ですね」


姫華の声は冷静だった。


「どれだけ生成しても無駄です、燃やしますから」


(天敵……)


千景が歯を噛みしめる。


一方、陽翔は姫華の動きから目を離せずにいた。


(強いとは思ってた……

でも、ここまでとは……)



同級生。

とても同い年とは思えない。

分かっていたことだが立ち位置が、明らかに違う。


「気ぃ抜いてたら、置いてかれるで?」


七瀬の声が背後から飛ぶ。


振り向いた瞬間。

オレンジ色の魔力を拳に纏い、振り抜いた。


────ドンッ!!


爆風が陽翔を掠める。


(これが……コピー……!)


「おいおい、避けたやん」


七瀬が楽しそうに笑う。


「ほな次、もうちょい本気で行こか」


その瞬間、

訓練場の空気が一段、重くなった。


3人が悟る。


これは“確認”じゃない。

完全に、試されている。


爆風が訓練場を薙いだ。


「っ───!」


陽翔は地を蹴って後退する。

間一髪で直撃を免れた。


(速い……反応も、間合いの詰め方も)


七瀬は笑ったまま、距離を詰めてくる。


「ええ動きやなぁ。やるなぁ陽翔くん」


軽口とは裏腹に、踏み込みは鋭い。

烈の爆破と同質の魔力が、七瀬の拳に宿っている。


(烈さんの魔法を……ここまで自然に――)


次の瞬間。


「オラァァ!」


視界の端で、影が弾けた。


「俺を忘れてんじゃねぇよ!!」


烈が割り込む。


両手で握ったハンマーを、渾身の力で振り下ろす。


ドンッ!!!


爆音と衝撃。

地面が砕け、七瀬の足元が大きく抉れた。


「おっと!」


七瀬は軽く跳ねて後方へ退く。

爆風を受け流しながら、感心したように口笛を吹いた。


「いやぁ、ええ威力や。

本人が使うと、やっぱ迫力ちゃうな」


「余裕ぶっこいてんじゃねぇ!」


烈が前に出る。


「陽翔!

こいつは俺が抑える!千景のフォローしろ!!」


「……っ、了解!」


陽翔は一瞬だけ七瀬を見る。


七瀬はにやりと笑って、烈に向き直った。


「男前やなぁ。

ほな、相手したるわ」


次の瞬間、烈が踏み込む。


「オラァァ!!」


連続する爆撃。

ハンマーを振るうたび、着弾点が弾け

衝撃波が訓練場を揺らす。


七瀬は後退しながら、最小限の動きでかわす。


(……避け方がうまい)


陽翔は走りながら、烈と七瀬の動きを横目で捉える。


(“どう来るか”を読んでるんだ……)


一方その頃。


「……っ!」


千景の前に、炎が迫る。


姫華の大太刀が、炎を纏って振るわれる。


「くっ……!」


千景が即座に鉄を生成し、盾を形作る。


だが――


ジュッ……!


鉄が赤熱し、表面が溶け落ちた。


「……っ、ほんと厄介ね……!」


「あなたの魔法は私の前では無意味です」


姫華は淡々と言い放つ。


「完成後直ぐに溶かされると、対応が遅れる」


千景は歯を噛みしめる。


(分かってる……!

だから――)


陽翔が駆け込む。


「千景さん!」


部分強化をした拳が姫華の間合いに割り込む。


「────っ」


姫華は即座に距離を取る。

大太刀を構え直し、炎が再び刀身を包む。


「助かったわ、陽翔」


「不意打ちだったのに避けられましたけどね」


陽翔は息を整えながら思う。


(同級生だぞ……。

俺と同じ、新人のはずなのに千景さんが後手に回るなんて……)


────────


ドンッ!!


烈の爆破と、七瀬の爆破が正面からぶつかった。


爆風が相殺され、衝撃波が拡散する。


「へぇ……」


七瀬が目を細める。


「そのバカ正直さ、嫌いやないで」


「うるせぇ!」


烈が吠える。


「舐めてると、ぶっ潰すぞ!!」


「おー怖い怖い」


七瀬は肩をすくめる。


「でもな────」


烈が踏み込んだ、その瞬間。


七瀬の動きが、一段階速くなった。


(速っ!?)


烈の爆破を、紙一重でかわし、懐へ潜り込む。


拳が振るわれる。


ドンッ!!


至近距離での爆破。


烈が吹き飛ばされ、地面を転がる。


「ビンゴや!」


「チッ……!」


烈はすぐに立ち上がるが、息が荒い。


七瀬は笑ったまま、指を鳴らした。


「ほらほら、烈くん!気張りやぁ

まだええとこ見せてもろてないで」


「……クソが!」


烈と七瀬の戦いが一方的になってきた頃、

一方で千景、陽翔ペアも押されていた。


姫華は大太刀を構えたまま

深く踏み込む様子を見せない。

代わりに、左手を静かに前へ差し出した。


「……まずはこれで……」


次の瞬間。


掌の上に、炎で形作られた小さな鳥が生まれる。

揺らめくように羽ばたき、空中に三羽。


「火焔・炎鳥えんちょう


甲高い音と共に、炎の鳥が一直線に飛び出した。


「来る!」


千景が即座に鉄を生成し、薄い盾を前に展開する。


ドンッ!!


一羽目が盾に触れ、小規模な爆発。

衝撃と熱が同時に襲い、千景の体が一歩押し戻される。


「っ……!」


(二発目が――)


残る二羽が、時間差で迫る。


陽翔は前に出かけて、すぐに踏みとどまる。


(触れたら爆発するタイプか……!)


瞬時に判断を切り替え、地を蹴って横へ回避。


「千景さん、後ろ!」


千景は歯を食いしばり、生成を切り替える。

盾ではなく、地面に鉄杭を突き立てる。


炎鳥が鉄に引っかかるように触れ────。


ドンッ!!


爆発。


爆心が前方へ逸れ、熱と衝撃が

二人の横をかすめて抜ける。


「……なるほど」


姫華が静かに呟く。


「爆発点を自分たちから離す判断。

対応は悪くないですね」


(上から目線すぎるだろ、コイツ……)


陽翔は息を整えながら、姫華を見る。


(けど強い。

動きに無駄がない。

魔法の選択も、間合いの取り方も……)


同級生。

同じ“新人”。


それでも、前線に立つ者としての完成度が違う。


姫華は大太刀を持ち替え、刀身に薄く炎を纏わせる。


「でも────」


炎の揺らぎが、空気を歪ませる。


「次は、避けるだけでは済みません」


千景は鉄を生成しながら、低く息を吐く。


(溶ける前提で……生成速度を上げるしかない……!)


「千景さん、俺が‘’隙‘’を作ります!

美味しい所は任せます!」


「……言うじゃない」


陽翔は姫華に向かって走り出す。

陽翔は深く踏み込む。


(ここだ……!)


魔力を脚部に集中。

俺の〝とっておき〟


「────瞬雷しゅんらい


一瞬だけ、地面が弾ける。


爆発ではない。

雷による“加速”


視界が流れ、距離が消える。


(速っ――)


姫華の瞳がわずかに見開かれた。


(避けきれない……)


瞬時に判断。

姫華は回避を捨て、大太刀を前に出す。


「――っ!」


陽翔の拳が、刀身を叩く。


ガギンッ!!


直撃ではない。

だが、速度が乗った部分強化の一撃が、大太刀ごと姫華を押し飛ばす。


炎が散り、姫華の体が後方へ流れた。


「……っ」


着地と同時に、姫華は即座に体勢を立て直す。

足を踏み替え、重心を落とし、呼吸を整える。


(今の……魔法?)


内心の動揺は、表に出さない。


だが――


その“一瞬”が、致命的だった。


「喰らいなさい……!」


千景の声。


地面から、複数の鉄の棘が一斉に生成される。

一本一本は細い。

だが数が違う。


(生成速度が上がってる……!?)


姫華が反応した時には、すでに遅い。


「……っ!」


炎で溶かす前に、次が来る。

次を焼けば、また次が来る。


「……キリがない……!」


(溶ける前提なら────

その速度を上回る程、生成すればいい……!)


鉄は溶ける。

だが、その前に役目を果たせばいい。


一本が足元を掠め、

一本が大太刀を弾き、

一本が視線を遮る。


姫華の動きが、確実に制限されていくが

千景の額に汗が滲み

鼻血が出て視界が一瞬、滲んだ。

それでも千景は歯を食いしばる。


‘’生成速度を上げる‘’


言うは易しだが、そもそも生成速度が速い千景の

生成速度をもっと上げるのは負担が大きく

多用は出来ないが新人に負けたくないという

千景プライドがこれを成立させていた。


(……なるほど)


姫華は、はっきりと理解した。


(この2人……連携が上手い)


陽翔は“突破口”。

千景は“制圧”。


「……いい連携ですね」


姫華はそう言いながら、

それでも一歩、前に出た。


炎が、再び刀身に集まり始める。


「ですが」


視線が、二人を射抜く。


「私は1人で全ての役割を果たせる」


戦場の温度が、さらに上がる。


千景の“本領”が引き出され、

陽翔の“切り札”が垣間見えた今。


不知火姫華もボルテージを上げ空気が変わる。


姫華の周囲に集まる魔力が

明らかに質を変えていく。


炎が、揺らがない。

燃え盛るというより、研ぎ澄まされていく。


「……っ」


陽翔の喉が鳴る。


「なんだよ、この魔力……!」


肌が、ひりつく。

本能が告げていた。


触れたら終わる。


「これは、まずいわね……」


千景が小さく呟く。

額に、はっきりと冷や汗が浮かんでいた。


「……これで終わらせます」


姫華は大太刀を、ゆっくりと構え直す。


刀身に纏った炎が、花弁のように分かれ始める。


「火焔・炎刃────」


その瞬間。


「ストップストップ!!」


横合いから、軽い声が割り込んだ。


次の瞬間、

炎と二人の間に、七瀬が割り込んで立っていた。


「そこまでや、ヒメちゃん」


姫華の眉が、わずかに動く。


「七瀬……?」


「それ以上いったらな、訓練ちゃう」


七瀬は苦笑しながら、両手を上げる。


「合同任務前にそれは、流石にアカンて」


「……」


姫華は数秒、沈黙する。


そして、ふっと息を吐いた。


刀身の炎が、すっと霧散する。


「……そうですね」


視線を外し、姫華は大太刀を下ろした。


「少し、熱くなりすぎました」


張り詰めていた空気が、わずかに緩む。


その時。


「……え?」


陽翔が、ふと違和感に気づく。


「烈さんは……?」


視線を巡らせる。


少し離れた場所、砕けた地面の向こうに。


「……」


烈が、仰向けに倒れていた。


ハンマーは手放し、

胸が上下しているが、完全に戦闘不能。


「……そんな……烈さんが負けた……?」


七瀬が頭を掻く。


「ついつい熱ぅなってしもて……

ちょっと意地悪してしもたけど」


「…………」


陽翔は言葉を失う。

この人、疲弊してない。

つまり、全然本気なんかじゃなく

烈さんを倒したんだ……!


七瀬はそんな視線に気づき、にっと笑った。


「でもまぁ……」


七瀬は肩をすくめた。


「ここまでやな」


姫華も、千景も、陽翔も。

誰もが理解する。


勝敗は、もう動かない。


合同任務前の“確認”は、

完全に格の差を刻みつける結果となっていた。


静まり返る訓練場に、

七瀬の軽い声だけが響く。


「さてさて……

ほな箱根、気合入れて行こかー」



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