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人に向けて魔法が撃てない俺はニートになろうとしたら底辺クランに入団させられました  作者: いぬぬわん


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第5話 決意②

千景の集中治療を始めて数十分、近衛と雨夜が本社へ戻ってきた。


近衛は荒い呼吸のまま、千景の治療を外で待っている陽翔たちを見て、静かに問いかける。


「何があった……?」


雨夜は陽翔の顔をまっすぐに見つめ、眉を少しひそめた。


「陽翔くん……大丈夫?」


陽翔は胸の奥でくすぶっていた悔しさと焦燥を思い出し、力強く答える。


「すいません!俺のせいで千景さんが……!」


雨夜は少し驚いた表情を見せ、そして柔らかく微笑む。


「陽翔くん、落ち着いて。ゆっくり息を吸うんだ」


「でも……!」陽翔は思わず声を上げる。


雨夜は優しく、しかし確かな声で続ける。


「大丈夫、大丈夫。ほら、吸って、吐いて」


陽翔は深く息をつき、肩の力を抜く。

「……はい」


「で、何があった」


落ち着いた陽翔のタイミングを見計らって、近衛が再度、静かに問いかける。


「実は────────」


────────────────


陽翔は一通り経緯を説明した。

謎の男の事や千景が助けてくれたこと、自分は何もできなかったこと、全てを。


「…………そうか」


「でも、本当に皆生きててよかった……!」


「あぁ、よくやったよ、お前らは」


近衛と雨夜に励まされ、陽翔は少し胸をなでおろす。

二人とも、千景が澪に治療されているなら大丈夫だと信頼しているらしく、安堵の息をつく。



「団長、雨夜さん……俺、強くなりたいです!」



「強くなりたい──その気持ちは分かるよ」


雨夜は穏やかに陽翔の肩に手を置き、真っ直ぐに目を見つめる。


「でも……今日は無理しちゃダメだ。体をゆっくり休めることも、強くなるためには大事だから」


「で、でも……!」陽翔は言葉を続けようとしたが、雨夜の優しい視線に押され、言葉が途切れる。


雨夜は微笑みながら続ける。


「無理をしても強くはなれないよ。今はとにかく休んで、明日から頑張ろう」


「……はい」



「千景の治療が終わったら、陽翔くんも澪に治してもらうといいよ」


「いや……大丈夫です」


「安心して、澪は回復のエキスパートだからすぐに痛みも引くと思うよ」


「俺は……この痛みを、絶対に忘れたくないんです……!

今日の悔しさも、俺の弱さも……全部……!」


ここで簡単に痛みを治してもらうなんて陽翔には到底できない。

自分の無力さを自身の心に刻み込むために。


「…………そうか」



雨夜は陽翔の固い意思を汲んでそれ以上は何も言ってこなかった。


少し沈黙が流れ、午後の光がビルの窓から差し込む。

陽翔は胸の奥で、まだ焦りと悔しさがくすぶっていることを自覚しつつも、確実に前を向き始めていた。



「じゃあ、行こうか、送るよ」


雨夜に促され、陽翔は自宅へと向かうためビルを後にした。

街の音や人々の声が、午後の柔らかい光の中に溶け込む。

足取りはまだ重いが、胸の奥には小さな火が灯っている──今日の痛みを力に変える決意の火だ。


「絶対に強くなってやる……!」


陽翔は小さく拳を握り、前を見据える。

雨夜がそっと隣を歩く安心感と温かさに支えられながら、午後の街を抜け、自宅までの道を静かに進んでいった。


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