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異世界血ート剣客 拙者・葵光剣は異世界に貢献するでござる!  作者: 鬼京雅
二幕・異世界転生せし新選組動乱編
23/33

新選組二番隊組長・永倉新八との戦い

 エイプリルの町の中央地区から移動し西の町へ着いたでござる。

 ここでは中央とは違い、普通に生活しているでござるな。

 どうやら、案外普通な生活をしていて土方殿が潜伏している気配は無いでござる。

 あの人がいれば、住人に否応無く緊張感を与え、仕草や視線にブレが生じる者が出る。

 辺りを見渡す拙者はミツバに言う。


「……どうやら西は外れのようでござるな。ここの住人は特に緊張感も無く普通でござる」


「そーだね。じゃあ、東に行く? でも沖田と戦った騒動でバレてるから東に行ったら西に逃げられるかもね。そーすると厄介だよねー」


「あの土方さんはそんな面倒な事はしないでござるよ。邪魔と感じたら先制して殺しに来る……そう、あの男のように」


 しかし、ある男が遠くから歩いて来て西町の住人は大急ぎで室内に入る。

 抜き身の刀を持つ、全身の筋肉を躍動させるような男はその獣のような両目を拙者に向けているでござる。どうやら、あの男が西町のボスなのかもしれぬでござるな。


「ミツバ、下がっているでござる。あの男は拙者が相手する。ミツバは拙者達をどこかで監視してるであろうザキヤマを警戒してくれ」


 自分の首筋を抑えるミツバは上目遣いで言う。


「血は……いいの?」


「相手には活動限界がある。時間をかけずに終わらせるでござるよ」


 切り札である〈血ート剣客モード〉は簡単には使えぬ。敵もどんな事をしてくるかわからぬ以上、こっちも余力を残しておかなければならない。こっちに増援は無いでござるからな。そしてミツバは拙者と距離を置き、周囲を警戒するでござる。そして、拙者はその猛獣のような男を見た。


「いょう、アオイ。元気そうじゃねーか」


 新選組二番隊組長・永倉新八ながくらしんぱち殿は口に細長い草をくわえながら言う。

 誰よりもガムシャラに剣を撃ち込んで行き、その勢いのまま相手を死骸にする豪腕の持ち主・新選組二番隊組長永倉新八。

 神道無念流しんとうむねんりゅうの使い手で、多摩の試衛館しえいかん時代からの近藤局長の仲間でござった。性格は実直で荒く、天下に鳴り響いた池田屋事件の後に近道局長が仲間を同士と見ずに家臣として扱うようになり増長した時、会津中将松平容保様あいずちゅうじょうまつだいらかたもりさまに掛け合い、「増長した近藤を切腹させろ!」と言った人物であった。

 新選組との別れは、鳥羽伏見の戦いで敗北し、江戸へ戻ってから再起を図ろうとしたが、近藤局長や土方副長のやり方と合わずそこで別れた。

 故に、永倉殿がどこまで生きたのかは知らない。

 細い草を噛み、その苦味を味わう永倉殿は言う。


「輪廻転生とかよくはわからんが、俺はどうやら生き返ってしまったらしいな。新選組の中でも生まれた年の天保から大正まで十の時代を生きて、幕末から文明開化の世界まで見て畳の上で死ねた俺がこうしてまた若い身体で復活するからには、戦うしかないよな?」


「人に問いを求めずとも、その目と殺気は戦う以外の答えを持ち合わせてはいないでござろう」


 そう、永倉殿は問いをしているが拙者には答えは求めていない。

 正に野獣でござる。


「へっ、わかってるじゃねぇか。敵であってくれて感謝する。一度、俺は真剣でお前と斬り合ってみたかったんだよ」


「出来れば刃を交えず、このまま拙者を通して欲しいが、永倉殿を倒さねば前へは進めぬようでござるな。新選組隊士は敵前逃亡は士道不覚悟」


「そうだ。そして、一度刃を抜いたら相手を殺すまで戦わないとならねぇ。あの鬼は相変わらずの鬼だからな」


 ニィ……と笑い、細長い草を更に噛んだ。

 その苦い味を楽しむかのように殺気が増す。

 そして、周囲を警戒するミツバを見る永倉殿は言う。


「お前、女を変えたのか? そりゃそうか。この世界にはあの女は居ないもんな」


「……その話は今は関係ない。語るならば剣にしてもらおうか」


「相変わらずの激情家だな。つつくとすぐに優男の面が外れる。稀代の激情と言ってもいいな。女の話は戦いながらするか。お前は女の話になると過激で素敵だぜ」


「……」


 そして静かに怒りを溜める拙者は言うでござる。


「沖田殿が中央地区。永倉殿が西となれば、土方殿は東地区でござるか?」


「あん? んなもん知らねーよボケが。知りたきゃ、俺を倒す事以外無いぜ? 死ぬのはお前だがな」


「そうでござるな。それが一番容易く、簡単な聞き方でござった」


「言うねぇアオイ。俺も舐められたもんだぜ。組長への口の使い方から教えてやらねーとならんか。ガアァァァァァム!」


「……凄まじい気合い。さて、やるでござるか」


「お前のその澄ました顔。刻んでやるぜ」


 そして、拙者と新選組二番隊組長永倉新八との戦いが始まった。





「ガアァァァァァム!」


「つうっ!」


 ギインッ! と鋼鉄すら斬りそうな重い一撃を拙者は受けた。

 手首が痺れ、足が多少地面に沈むでござる。


「重い……流石は永倉殿。示現流並の重い一撃でござるな。このまま受けに回っていたら腕が痺れて動かなくなるでござる!」


「そうかよボケがぁ!」


「ぐふっ!」


 拳で突然殴られたでござる。

 全くこの人は……!

 腰をひねり、永倉殿は叫ぶ。


「死ね――アオイっ!」


「――くっ!」


 遠心力を生かした永倉殿の横一文字斬りは拙者の背後の岩を斬った――。


「隙有り!」


 拙者は飛び上がり流星斬の構えに出た。

 腕が伸びきり、頭上を見る永倉殿は呟く。


「あん? どこに隙がある? つらぁ!」


 その斬った岩を蹴り上げ、上空の拙者にぶつけて来たでござる!


「馬鹿力でござるな!」


「この異世界でパワーは増してるからな。百鬼夜行ひゃっきやこうモードになれば、もっと妖気は上がるぜ」


「つまり、今より強くなるでござるか。やってられぬと思いつつも、その永倉殿を倒したいでござる!」


 拙者の蹴りと、永倉殿の拳がぶつかり互いの背後に飛んだ。

 左腕を抑える永倉殿は拙者の蹴りの重さを笑っているでござる。

 痛みで笑うなど、やはり新選組の組長クラスは面白いでござるな!

 しかし、昔よりも冷静さを感じさせるその永倉殿に問う。


「永倉殿は多少、変わられたようだ。それは、明治と言う官軍が作りし新時代を味わったからでござるか?」


「そうだな……俺は戊辰戦争が終わってから新選組の関係者などに会ったり、探してたりした。板橋で斬首された近藤局長の首を探して墓を作ったり、色々したぜ。我が物顔で歩いていた京都を、頭を下げて歩くというのは不思議なもんだった……本当に、時代ってのは急速に変わりやがったよ……」


 切なげな顔で永倉殿は言う。

 その哀愁漂う顔に、拙者はその新時代の断片を感じた。

 この人にこういう顔をさせるというのは、官軍の作りし新時代とはよほどの別世界だったのだろう。


「お気持ちは多少は察する。かつての貴方とは違うようだが、本質は変わらぬようだ。時代に呑まれながらも誠を失わぬ貴方を拙者は倒すでござるよ。清流鬼神流せいりゅうきじんりゅうを受け継ぐ者として」


「殺し合いに清流鬼神流せいりゅうきじんりゅう北辰一刀流ほくしんいっとうりゅう天然理心流てんねんりしんりゅうもあるまい。アオイ、相変わらず細かい事を言いやがる。そんなお前には――ガアァァァァァム!」


 ズウウオオッ! と嵐のような斬撃が迫る。


「うおおおおおっ!」


 拙者も、それに対抗する。

 ズガガガガガガガガガッ!!!

 この空間にだけ、嵐が生まれているでござる!

 どうやら拙者も永倉殿の剣乱舞に対抗する剣腕があるでござるな。

 そして、このまま勝たねばならない!


「老人にまでなった貴方の剣とは思えぬ素晴らしさでござる!」


「そうだ! 元の世界じゃ、俺は新選組の中でも相当長生きしたぜ。何せ十の時代も生きたからな」


「確かに十の時代は長い……。では本当に官軍の、西郷の作った世界に順応したでござるな?」


「順応? 確かにな!」


 ガッ! と永倉殿の地面への一撃で後方へ飛び、石つぶてを回避する。

 べっ……と口にくわえていた草を吐き出し、空を見上げ言う。


「確かに生きたぜ。西郷の……官軍の作った世界をよ。けど、あの野郎は何を血迷ったか……」


「血迷った?」


 ふと、拙者の脳裏が弾けるように錯綜し、背後に嫌な気配を感じた。

 途方も無い暗闇で、胃の中のものを全て吐き出しそうなほどの闇。

 その闇は幕末にて拙者が殺めた者達。

 その者の手が、足が、全身が絡みつき精神を奪われる。

 そんな這い寄る心の闇は、一つの言葉で拙者の心を突き刺した――。


「西郷は自決したぜ。政府に反逆し、明治十年に起きた大規模な士族反乱の西南せいなん戦争でな」


「……!」


 ……自決した?

 あの西郷が?

 あり得ぬ……新時代を作る為に悪を体現して来た西郷隆盛が、新政府に反逆し自決に至るなど……。

 混乱する拙者に永倉殿は言う。


「西郷の話はいい。俺達は俺達の決着をつけるぞアオイ」


「その構えは、北辰一刀流のみにある鶺鴒せきれい!? 何故、神道無念流しんとうむねんりゅうの貴方がそれを!?」


「言ったろ? 俺は十の時代を生きて、良くも悪くも変わった。剣は強ければ流派問わず受け入れる。それは時代を受け入れるという事だ。貴様には……わかんねーか?」


 まるで、何かを諭すような瞳でその北辰一刀流のみにある鶺鴒の尾の構えの永倉殿は言う。

 北辰一刀流の剣術には一切の神秘性がなく、ただひたすら技術のみを追求し指導方法も合理的であり、他の道場においては三年かかる修行がこの流派で修行すれば一年で完成してしまうと言われた流派でござる。

 剣を青眼に構えてから、切っ先を鶺鴒せきれいの尾のように動かして、次の動作への移行を素早く行いかつ自分の攻撃の意図を相手に悟られないようにして更に俊敏に攻撃が出来るようにする技。素早い攻撃が可能だが、竹刀剣術ならば特有の打撃の弱さがある。しかし、この男にそれな無い。

 鶺鴒とは水辺に住む燕に似た小鳥。体は黒灰色、腹は白色で、河原の石にとまり長い尾を上下に動かすのが特徴らしいでござる。

 これは先制して仕掛けるのが吉でござる――。

 拙者は腰をかがめ、清流刀の切っ先を突き出し叫ぶ。


清流鬼神流せいりゅうきじんりゅう華厳けごん刺龍しりゅう!」


「ガアァァァァァム!」


 シュンッ! と両者は交差し、風が流れた。

 ブシュッ……と拙者の肩から血が吹き出す。


「倒したと思ったが、生きていたでござるか」


「ボケが。俺の方が深手だ」


 腹部に穴が空き、粒子が舞う永倉殿は言う。

 確かに、拙者の勝ちのようだが、まだ互いに本当の力を見せてはいない。

 そして、刀を納める永倉殿は言う。


「……人間化の限界時間だ。もう霊体に戻る。百鬼夜行で会おうぜアオイ!」


「わかったでござる……とは言いたくないな」


 拙者の言葉を聞く前に、永倉殿は粒子となり消えた。

 そしてミツバに傷の手当をしてもらう拙者は言うでござる。


「おそらく、土方殿はこのエイプリルの三つの街にはいないでござるな」


「え!? どうして?」


「あの人は攻撃するならば奇襲するはず。でなくば先の戦いはあそこまでいきなり攻められなかったはずでござる。こうも堂々と沖田殿や永倉殿が出てくるのは満月の夜までの時間稼ぎがしたいからでござろう。ミツバ、この周囲の森などから捜索しよう。自然を利用するのも古来よりの兵法者の心得でござる」


「オッケー! このミツバちゃんがクンカクンカして新選組のアジトを見つけ出してやるわよ!」


 ミツバは犬のように鼻を利かせ、エイプリルの町の外を探索する。

 そして拙者も土方殿の潜伏する場所を探すでござる。

 百鬼夜行までの満月の夜は明後日。

 明日までには、土方殿と新選組を倒さねばならぬ!

 ……にしてもミツバ。

 その本物の犬のように探索するのは人目もあるからやめるでござる……。

 ほーほー。




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