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食堂のおばちゃn…お姉さんは見た。

調子に乗って本日2話目を投稿。




 はいな、こんにちは。

あたしはある学校で俗に言う「食堂のおばちゃん」というのを仕事にさせてもらっているそれなりに若いお姉さんです。


 初めはねー、なんであたしが食堂の、しかも母校で仕事なんかしなきゃいけないのさ!って苛立ってたけど。やってみたら、あら不思議。



 これが案外楽しいものだった。

年がわりかし在校生と近いからか仲良くやっていけてるし、なにより知り合いというか当時教えてくれていた先生もいる。


 先生もねー、あたしと再会したとき驚いてたなぁ!いやいやあたしが一番驚いたって!

まっさか、ハローワークで紹介された【定時キッチリ!接客と料理が出来る人にオススメ先!】が母校の食堂のおばちゃんだったなんて誰が思う?


 あたしは思わん。

どっかのファミレスのアルバイトでも持ってきやがって、ハローワーク入会金 5000円返しやがれ!って思ってたぐらいだし。



 そんなこんなで、予想外過ぎた就職先を見つけ無事就職出来たのがついこの間の話だったりする。

大学出たから就職活動って考えていたときだったし、職があるだけマシかーって、食い付いたあたしグッジョブ。




 ある意味ここはあたしの天職でした。




「おばちゃーん!フライドポテトちょーだい!」

「お姉さんとお呼び。はい、ポテト 110円ね」



 ニッコニコと、「あっごっめーん!」と110円と引き換えにポテトをゲットした男子生徒は走って去っていった。たぶん友達が待っていてくれてるんだろうなぁ、なんて昔を思い出す。

懐かしいわー。あたしにもあんな時期が合ったわね。



 人と関わることは嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。人を観察したり、話したり、聞いたりする、そういったことは好きだ。

 料理もそう。作って、自分で食べたり、食べてもらったりして、美味しいって言ってもらえることがなにより好きだ。

作ってよかったって、実感が湧いてくるのが嬉しいものだから。



 なにより、若い子たちの青い青春とやらを間近で見れたり出来るからね!





 最近のホットなニュースと言えば、我が母校における初めての超ハイスペックな御曹司美少年 ハヤマ君がとある女の子に猛アタック中!だろう。

うんうん青春だね!お姉さんもう動悸がバックンバックンだよ!息がハァハァだから!


 え、それヤバイ?病院行け?



「すみません、」



 おおっと、語りに必死すぎて仕事を疎かにしてしまっていた。

それでもあくまで大人の余裕を醸し出しながら対応しようじゃないか…って、




「いらっしゃい、カップ麺の子じゃない」

「その節は、どうもすみませんでした…。」

「いえいえ。それよりアレは…………食べれたの?」

「………アレはこの世の食いモンじゃ、ないッス…!!」






 食堂の窓口で顔を青ざめ震えだした目の前の少年はつい先週あたりに、とあるカップ麺という名の劇物を持ってきた(つわもの)君である。


 あたしはアレを忘れない。この母校で合った懐かしい思い出を塗り替えるほどの衝撃を喰らわせたあの“辛子&にんにく倍増!鯖味噌味大盛”なるカップ麺を忘れることは一生ない。



 しかし、その本人もやはりあの劇物を食べることはできなかったッポイ。

うん、悪いことは言わない。あれは食べないで正解だったとあたしも思うよ少年。



「で、今日はどうしたのかな?何か買いに来たの?それとも食券の方?」

「……い、えっ。その、」

「ん?」

「これ、お願いできますかっ!?」



 視線をキョロキョロさせ何かをつき出してきた。視線あったかと思うと(つわもの)君の目がどこかしら濁っていた。濁っていたというより、かなり遠い目をしている。


 …………まさか。いやいやいやそんなわけが。

なんてことを考えつつ、あたしは(つわもの)君に差し出されたブツを、そぉっと見る。




「な、ンだ、と…!?」




 (つわもの)君が持っているブツ、“唐揚げ抹茶カプチーノ添え マイルドスープ特盛!”とデカデカと書かれたカップ麺だった。


 唐揚げに抹茶カプチーノ添えってなに?え、そもそも唐揚げってカップ麺にするもの?唐揚げって単体だよね?抹茶カプチーノに至ってはなぜぶっかけた?いや、この場合は添えんなよ!が正しいのかな。

いやいや、マイルドスープ特盛ってなに!?マイルドってなにがマイルドなの!?抹茶カプチーノ?まさかの抹茶カプチーノがマイルドなの!?



 こ、これまた、さらに衝撃を喰らう劇物を持ってきたな…!




「コッ、コレを、食べるの?ほんとに?“唐揚げ抹茶カプチーノ添え マイルドスープ特盛!”を食べるの?」

「……………………くぅっ…!!」



 あ、食うんだ。涙目というか、すでに泣いてるし。



「ほほ、ほかにまともな何かはないの!?お金は?200円でもあったらパンは2つ買えるよ!?」

「か……母ちゃんがそれしかないってええ!こんな日に限って金忘れてきたんですぅぅうううわあああああ!!!!」



 おかああああさん!!??

お宅の息子さん泣いちゃいましたよおお!?




「よっ、よし!今日はお姉さんが(つわもの)君にパン2つとポテトを奢ってあげよう!!後ろのみんなも先生に言っちゃダメだよ!!」



 大人としてこんな劇物食べさせるわけにはいかない!あたしだってその立場になったらゼッッッタイ食べたくないし!


 後ろにいた数々の在校生が頭を縦に振っていた。カップ麺の味を知って、尚且つ(つわもの)君のガチな反応に納得したんだろう。



「ほら!この劇ぶ…んんっ、カップ麺はお姉さんが処分してあげるから、きみは好きなものを選びなさい」

「お姉さんっ…っ…!!ありがとうございます!!!!」



 (つわもの)君、もとい真田くんは必ずお金を返すと泣きながら礼を言い、食堂にいた全生徒から生暖かい視線を送られていたのは言うまでもない。


 その日の夕方。食堂のおばちゃん先輩'sと例の劇物を食してみました。

 結論から言いましょう。

あれは人が食べるべき食べ物ではありません。



 ………真田くん、あなたのお母さんは一体この異形なカップ麺をどこで手に入れているの…?





『食堂のおばちゃn…お姉さんは見た。』



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