あっ、100円足りない。
お久しぶりです!
ホンットーに久しぶりに投稿しました(○_○)!!
明日は、我が家の暴君こと麗しいオネエサマの大切な誕生日だ。
手の中にある財布の中身を見ながら俺は思う。
「…ああ、今年はどんな無茶ぶりを言われるんだろう……!」
涙で霞む視界をどうにかしようと1人ベッドに倒れこむ。
だいたい、姉ちゃんは酷い。酷すぎる。小遣いが月1,000円という少ない収入でどうにかやりくりをしているカワイイ男子高校生たる弟に、毎年毎年バカ高いプレゼントを強制的に買わさせる。
去年はよく知らないブランド物のバック ¥15,000円。一昨年は柑橘類の香水 ¥8,000円。その前はワンピース ¥7,400円。
…頭ん中で小銭の音が鳴るわ鳴…る……って、…あれ、今気づいたけど年々値段上がってねぇ?
え、なに…?俺は知らず知らずのうちに姉ちゃんに貢がされていたってこと、か…!?
今更ながらに気付いてしまった事実に、俺は寝転がっていたベッドから跳ね起き姉の部屋がある方向へ向かって腹の底から叫んでやった。
「ふっっざけんなあー!」
「武!煩いわよ!何時だと思ってるの!!」
「げっ母ちゃん!ごめんなさい!!」
大声を上げたら母ちゃんに怒られた。当たり前か、だって今は夜中の1時なんだし。
俺は静かにいそいそと布団の中に潜る。姉ちゃんも怖いけど、母ちゃんはさらに怖い。
でも俺は悪くないと思う。悪いのは二十歳越えても実家暮らしで毎年高額のプレゼントを弟にねだる姉ちゃんの方だ!
と、明らかな責任転嫁だがそうしか思えない。
プレゼントが欲しいなら彼氏にでも好きなだけ買って貰えってんだ!なんでわざわざ高校生の弟に成人した姉ちゃんが買わせ……。
ハッ、そうか!姉ちゃんにはそういう相手がいまだに居ないのか!!
うわっ、姉ちゃん彼氏いないからって八つ当たりとかねぇわ。
「そりゃ彼氏いないわ」
「ほ〜、だぁれに彼氏がいないって〜?」
「誰ってあの怪力ババアに決まってんじゃ…ん…………」
「へ〜、怪力ババア、ねぇ?」
よくマンガで使われる“錆び付いたナニか”のように俺はギギギッと、悲鳴をあげる体に鞭打ち布団から顔を出す。
「やぁね。あたしはこれぽーっちとも バ バ ア になった気はないわよ?」
怪力は否定しないのかよ。なんてことは間違っても口にしなかった俺は偉い。
しかしそれを口にしようがしなかろうが、俺が口走ってしまった失言により建設された死亡フラグは消えてはくれない。
扉の前で腕を組み、般若の顔で立つ姉ちゃん。ベッドに隠れている俺。
あ、だめだ。逃げ場なんか元からねぇじゃん。
「…ねっ、ねえちゃん。いつから、そこに」
「そーね、アンタがあたしの部屋に向かって叫んだ2分後くらいにいたわよ」
それってつまるところ最初からいたってことじゃね!?
「あ、そうだ武」
「なんだよ!?」
いきなり名前を呼ばれたため思わずまた時間を忘れ大声で返事をしてしまった。
分かってるよ。アレだろ。今年の誕生日プレゼントでも言うんだろ!
なんて見構えていたら、姉ちゃんは俺が想像もしなかったことを言ったのだった。
「明日から誕生日プレゼントいらないわ。厳密に言えば今年からだけど」
「え、」
それはあまりにも衝撃的で、いや、今年から高いプレゼント買わなくて済むとか思ったら嬉しいんだけど。
「きゅっ、急にどうしたんだよ、姉ちゃん?」
「あたし明後日 結婚するから」
――あれ?お母さんから聞いてなかったの?
なんて首をかしげる姉ちゃんに、俺は固まる。
え、ちょ、まってくれ。姉ちゃんが、ケッコン?
「はあぁぁあ!?ね、ねえちゃんがケッコン!?なにそれ俺知らないんだけど!!」
「彼氏がいないとか言ってたからまさかなーって思ってたんだけど…予想通りだったとは」
まあ、だから今年からプレゼント要らないからね。って言って、手をヒラヒラさせて部屋を出た姉ちゃん。
階段を降りる音が聞こえる。たぶん、姉ちゃんは母ちゃんがいるだろうリビングに行ったんだ。
俺は固まったままだった。でもその数分後、気付いたら体は静かに部屋を出て、1階の電気が着いているリビングのドアの前に立っていた。
ドアの向こうからは母ちゃんと父ちゃん、それから姉ちゃんの声が聞こえた。
――姉ちゃんは声を聞く限り、泣いていた。
「ありがとう、あたしがんばるから、たけしのことよろしく」なんてあの我が儘で勝ち気な姉ちゃんから聞いたことない弱っちい声。
「…………、朝イチで、ねえちゃんが好きなショートケーキ、ワンホール買ってやろ」
姉ちゃんのことだ。ワンホールなんか食いきれねぇとか、太ったらどうすんだって言いそうだ。
そうだとしても買って、絶対1人で食いきってもらおう。んで、カワイイ弟からのささやかな仕返しぐらい受け取れって言ってやるんだ。
さっきとは別の意味で視界が霞だした俺は、リビングのドアから離れ部屋に戻った。
――それから約8時後、行きつけのケーキ屋でショートケーキのワンホールを買いに行ったら、俺はあることに気付き固まってしまったのは言うまでもない。
『あ、100円足りない。』




