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第9話


読みにくかった箇所を指摘してくれると助かります。

荒削りな文章ですみません;






 シェリと廊下で別れた後、僕は再びシェリの部屋の前に戻り警護を始めた。別荘にいる間は絶対に目を離すなと彼女の兄であるジェド様やハイク様から命令されている。そして、どのような相手が襲ってくるかということも。


シェリは絶対に守り抜かなければならない。僕が昔無くした”何か”を取り戻させてくれる少女。今やただの雇い主の娘とは思えないほど情が傾いている。数年の間に彼も変わりつつあるのだ。扉の向こうでは騒がしい声が漏れることがあるが、誰かの悪口?多分僕に対してだ。シェリが文句を言う相手は僕以外聞いたことが無い。うぅん、今日1日を振り返って癪に障ることをしただろうか・・・?


ガチャンッッ!!


突然ガラスが割れるような音。

シェリの部屋からだ!僕は急いで扉を開け中に入った。






――――――別荘内

家の中をひた走る一人の男。使用人達は何事かと囁き合い、不安が別荘全体を包み込む。



「父上!今しがたガラハイルの者が攻めて参りました!」


「なんだと!ジェドよ、早急に軍を動かし1人残さず討ち取れ!」


「それが、襲撃を受けた先がシェリの部屋なのです。シェリの部屋付近の外に多く兵を配置していたのですが皆生き絶えておりました。別荘の中を隈なく探し回りましたが、シェリの姿はどこにも見当たりません。恐らくは攫われたのかと」


「なん・・・だと。カズマは・・・カズマはどうした!護衛に付けていたはず、今はどこにいる!!」


ジェドは父の怒りに眉を寄せ、続きの言葉を紡いだ。


「彼は、妹と同じく消息を絶ちました」


父は今苦しい状況に追い込まれている。娘を見捨て首都へ帰還するか。この山周辺に捜索隊を送るか。見つかっても敵に捕らわれたままならば、シェリは交渉の材料として使われるだろう。交渉が成立したとしても無事に戻ってくる保証は出来ない。向こうが有利となる取引きでは我が国が危機に陥るほどの情報が狙われる。一番無難に終わらせるならば既に妹は死んでいると考え敵を包囲し・・・



「父上。ご決断を」




 決断を迫る。自分が親を苦しめる立場になろうとは。だが一国の軍を率いる身。命令が無ければ軍などただの方向性を持たない力でしかない。この国の中枢を司る父上に最も厳しい壁を叩きつける形となった。


父上は両腕の肘を机に付け両手で作った拳で額を支え、重々しい口調で言った。


「捜索隊を30分後向かわせよ。明け方まで捜索して無事ならば万々歳。だが敵に捕らわれていた場合は・・・」




「包囲し、向こうの話に耳を貸さず殲滅しろ。決して迷うな」


「はっ!!」






--







 ここはどこ?身体の自由が効かない。私は今どこにいるの?目を開けてるのに真っ暗で外の様子が見えない。猿ぐつわを噛ませられ、手足は縛られて身動きも取れない状態。もう、何なのよー!モゾモゾと体を動かしていると、


「袋の中で動くんじゃない。大人しくしていろ」


誰かにそう言われお腹を数回足で蹴られた。何回だったかは分からない。激痛で体が自然とくの字に曲がった。痛みで何も考えられない。ただ耐えるだけ。怖くて小刻みに震えだす。



 しばらくして私は袋から出され、幌馬車に置かれた大きな立方体の檻の中に入れられた。中央には3つのパンが乗った皿が置かれている。檻の中で状況を考えると、「私、・・・つ、捕まったわ」小さな声でささやく。


いえ、それはもう見ての通りなんだけど、捕まるのってあっという間なのね。抵抗らしいことさえ出来なかったわ。プロがやるとここまで手際が良いとは思わなかった。どうしましょう、助けを待つしかないのかしら。


馬車が止まり周りで大勢の人が動き出したのが分かった。私が別荘に向かっていた時のような賑やかな声は無い。服のこすれる音しかしないと、この後何が起こるのかと不安で胸が痛い。今外で何をしているの?誰か来て、助けてカズマ!



「お呼びですか、シェリお嬢様」


幌の垂れ幕ごしで見える男性のシルエットの影が月の光で映し出される。



「ひっ!・・・・・だ、誰?」


誰か来た、イヤ!もう痛いのはイヤなのよ!



「・・・じっとしてますから、蹴らないで・・・」

そう言うとシルエットでしか分からない男は、怒りだして叫ぶ。


「シェリになんてひどいことを!くそっ、僕がついていながらこんな目に合わせてしまって!」



相手が怒っていると次第に冷静になってきた。さっきの台詞を思い出すと、


「カ、カズマなの?」



尋ねてみると、幌が開け放たれ思っていた人物が目の前に現れた。



「遅くなってごめんよ、シェリ」



檻の鍵を氷で造られた鍵で開け、私はようやく外の様子を見た。そこには氷漬けにされた兵士達が乱立して並んでいる。銃を構えた人、剣を振りかざして襲って来ようとしていた人、木の上から様子を伺っていた人。いろんな人がいて、みんな固まっていた。元々氷を削り出して作った彫像と言っても信じられるほどに。あまりのことに言葉が見つからなくて声にするのに少し時間がかかった。


「・・・・・・人前で魔法を、使ったのね?」



「あぁ、使ってしまった。君を守るためにはもうこれしかなかった・・・」





 夜遅く、カズマは私の手を取って近くにあった洞穴で火を炊いた。煙に気付いて探しに来てくれるはずだ、と。洞穴の周りを雪で固めて火が消えないようにし、中が暖かくなるようにしてくれた。そして私がどんな目にあっていたのか聞いてさえしてくれ、いつもの彼より優しく気が利いていた。頼もしいわ、とモゴモゴしながらだけど褒めておく。たまには飴を与えないと伸びる子も伸びないもんね。


「ごめんね。折角の誕生日がこんな・・・」


カズマが謝ってる。でもどうして謝ってるかが分からない。むしろこっちがお礼を言いたいくらいなのに。


「別に構わないわ。ありがとうカズマ、助けてもらったのはこれで二度目ね?」


「助けただなんて、僕は君につらい思いをさせてしまった。それが悔しいんだ」


「人間だもの。いつかは痛く苦しいことがあるわ。それが今日だったのよ、そうでしょ?」


「うん、でも僕は・・・今日じゃなくても良かった気がするんだ」



静かに彼の目から二筋の涙が零れ落ちる。初めて泣いているのを目にして私は慌てた。いつも私の見本として、先生として道を示してくれた彼を、もっと仲良くなりたいと思っていた彼をどうしたら励ましてあげられるの?カズマの頑張りに応えたい、その一心で。


考えた末にシェリはカズマの背中にのしかかる。カズマの涙をペロッと舐めるとしょっぱい味が口の中に広がった。全身で抱きしめ、あやす様にゆっくりと前後に揺する。野営でずっと傍にいた時感じた胸の高鳴りが蘇ってくる。



「シェリが無事だったのはカズマのおかげ。シェリが生きているのはカズマが頑張ったから。・・・違う?」


「胸を張っていいのよ?命の恩人なんだもの。

シェリはカズマが大好きよ、これから先もっともっと好きになる。絶対に離したりなんかしないんだから」



私の一大決心を聞いて耳を赤くする彼を見ていると、こっちも顔が熱くなる。今この瞬間自分の気持ちが本物だと強く感られた。私は、出会った時からカズマが、好きなんだわ。


でも告白した彼の口からは思ってもない言葉が返ってきた。




「ごめんね、シェリ。僕はその気持ちには答えられそうにないんだ」




「!?どうしてっ!なんでよっ!」

身体を離して反射的に私は叫んだ。


「状況が許してくれそうにない。僕のことがガラハイルに知られてしまったこと。そして、魔法が使えるという情報も。シェリにプレゼントした結晶はまだ持ってる?」


そういえば、服の下に隠しておいたけど取られて・・・あった!


「肌身離さず持っているわ。取られていないから安心して」



「なら丁度いい。君を守るために送ったそのプレゼントだけど、もしも災いをもたらすようなら捨ててくれて構わない」


カズマは私に贈ったものが危ないのだと言う。苦笑いしながら、言う。それでも私は、


「捨てない!最後の最後まで捨てないわ!悪い方へ考えないのがシェリだもの」


「はははっ!相変わらずだね、シェリは。それでも君には生きていて欲しい。最初で最後のお願いだ、危なくなったら捨てるのを躊躇ってはいけない。いいね?」


「・・・前向きに検討してみる」「うーん、あんまり採用されなさそうだ」







・・・・おーい!・・・・・・・・かそこに居るかーー!!・・・・おーい!・・・・・・・




 遠くで誰かが呼ぶ声がする。助けが来たのかしら。


 ねぇ、カズマ。迎えが・・・

「・・・カズマ?え、どこ?」


彼がいた場所には小さな氷の欠片を載せた封筒があり、封を開けて読めば

【お誕生日おめでとう!親愛なるシェルティカ・ウェントワースへ】と書かれたバースディカード。


「ねぇ、隠れてないで出てきなさいよ。命令よ!早く出てきてよーー!!!」


振り向くと彼の姿は影も形もなく、救出された時には泣きじゃくる私しかいなかった。





 その後誘拐事件は瞬く間に国中に広まり、氷の彫像と化した敵国の兵士達を見たスィルタイトの軍は口々に、白のご加護がもたらした結果だとか、白の女神の力だとか騒ぎ立てた。

お父様は私が生きて帰ってきたことに涙を流して喜び、お母様やジェド兄様も優しく抱きしめてくれた。でもここにいるはずの人が見当たらない。カズマはどこ?と聞いても皆は首を振るばかり。助けてくれたのはカズマなのに・・・。事情を話すとお父様は驚き、捜索願を出してくれると約束してくれた。





ねぇ、今どこにいるのよ?シェリを置いていかないで・・・

ある雪の日に泥んこまみれになった少女は、手を貸してくれる少年の手を求め宙を仰いだのだった。







これにて完結です、最後まで読んで下さった方に感謝を^^


もしかしたら続くかもな終わり方です。頭の中では物語がぼんやり進行中でして、続きを書いて欲しい声があったらいつか書きます。

ではこの作品で冬の童話祭に参加します。いってきます!



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