対立する二陣、視えざる三つ巴
3本目…ギリギリ達成!…2本目と繋げた方が良かったなと若干思わなくもないですが…まぁ良いでしょう。
最近はちょくちょく何時もより長めのお話投稿を心掛けているのですが、どうでしょうか?…作者としては、長いだけで中身の薄い話になっていないか不安です…まぁ、毎日不安だらけなんですがね。
次の話では、そろそろ戦闘描写も入れたいですね…数話続いてあまり血が流れてないし…もっと血を流せ。
「……」
「……」
二人は睨み合う…いや、正確には静かに相対し、相手の動きを待つようにその場に留まり…沈黙を貫いていた。
(冒険者…じゃ、ない…?)
レイナは相対するソレを見て…心の中でそう違和感を吐き出す。
「…」
それは、レイナが培った直感の様な感覚と言えばいいだろうか…若くとも、その才に見合う聡さを持ち合わせた彼女の知識と経験が、導き出した…無意識の違和感。
冒険者と呼ぶには装備がお粗末…かと言って一般人と呼ぶにはその出で立ちはあまりに威圧感に満ちていた。
魔術師にしては触媒を持ち合わせず、武器も無く…狩人、斥候と言うには気配の消し方すら粗末に過ぎる。
見れば見るほど不気味で怪しいその存在に…レイナの触媒を持つ腕に力が籠る…そして。
――ザッ…!――
その男が動き出そうとした…その時――。
――カッ…カッ…カッ…!――
不意に、背後から音が響き…レイナは勢い良く振り向く…其処には。
「見つけたわレイナ…随分探したわよ?」
黒い外套を羽織り…黒いドレスを着こなした夜の美女が、そう言い戯けながら現れる。
「マオさん?…」
見知った顔と声色に、張り詰めていた緊張の糸が解け…レイナはホッと息を付く。
「どうかした?…何か殺気立ってたみたいだけど…」
「…あ、えっと…その、其処に妙な人間が――」
そして、美女の問いにレイナがそう言い指を指す…しかし。
――……――
「え…?」
先程まで不気味な存在感を放っていた〝ソレ〟は、影も形も無く消え去り…其処には無人の街道だけが広がっていた。
「……居ないわね」
「でも…確かに……気の所為、だったんですかね?」
「ふむ……まぁ、それは置いておくとして…〝この街の状況〟も少し分かったし…一度帰って考えを練らない?」
「…そう、ですね…と言っても、私の方はあまり有益な情報が無いんですけど…」
「まぁそう都合良く情報が集まるなんて思っちゃいないし、気にしない気にしない…それより集めた情報を纏めて次の動きを考えましょう?」
そんな街中で、二人はそう言いその場を後にする…そして夜は明け、朝が昇る…この街を血で染めて。
●○●○●○
「――はい、そう言うわけで早速情報を整理しましょう!」
拠点に帰ると、私はまず地面に盤面を作り、其処に触手の駒を置いていく。
「先ず、現在人間の街では〝連続殺人事件〟が起きています!」
「はい…出没時間は夜間の間…ですので、一般人の夜間外出は制限されている訳ですね?」
「その通り!」
そして、前提知識として…レイナと私で情報の齟齬が無いかを確かめてゆく。
「そして事件解決の為に夜間は冒険者と聖獣…〝人間側の同郷〟が協力して犯人を探しているのが現段階…此処数日は変化が無く、被害が増えるだけだったみたいだけど…どうやら昨日に進展が有ったらしいわ」
そして、此処からは私が拾い集めた知識を元に、この街の情報を精査、推測してゆく。
「〝黒妖虫〟…連続殺人事件の実行犯として、この魔物が候補に挙げられ、ほぼ確定している…確かレイナの買っていた書物に魔物の生態記録が有ったわね?」
「はい…黒妖虫…コクヨウチュウ…コ……〝コレ〟ですね」
私がレイナにそう言うと、レイナは本棚から分厚い書物を取り出し…その中の一頁…あの写し絵を開き見せる。
「生態の詳細は後で確認してちょうだい…それで、原因として〝黒妖虫〟の存在が確認された事で、事態は一気に解釈の余地が広がり…不明瞭だった勢力図に線引きが出来た――」
ソレを一瞥し、私は新たに?マークの触手を作り、それと虫型の触手を並べ、人間たちとの間に壁を作る。
「現在…推定〝魔獣側の同郷〟が、人間達を襲っている可能性が出て来た…それもかなり手強い相手みたいね…魔物を使役し、自身の力を強化してる…恐らく私と同等かそれ以上の相手と見て良いかも知れないわね」
「マオさん以上…ですか」
「えぇそうよ♪…私以上〝敵〟が居る…」
そして作り出された敵対構図と、私の言葉にレイナが沈黙する…確かに、自分達以上の敵が相手に居るなんて言われちゃ、誰だってそう険しい顔をするでしょうね…でも。
「――コレは〝チャンス〟よ、レイナ♪」
「ッへ?」
険しい顔のレイナに私がそう言うと、レイナは思わずと言った様に呆けた顔で私を見る。
「相手は人間に目を付けられている…って事は、人間を誘導して、〝事件の元凶〟と争わせる――」
「……?」
――プルプルッ――
言葉を紡ぎながら、脳裏に想像する…姿形も分からない〝元凶〟と…それと相対する冒険者達。
「――争わせるだけ争わせて、傷付いた、疲弊した所を私達で乱入、斬獲する…!」
「……マオさん?」
――ブルブルブルッ――
凌ぎを削り合い、疲弊する両者…弱り果てた先から撤退する〝人間〟と、〝魔獣〟…その両者を身を隠し、気付かれる前に仕留め、一方的に経験値を掠め取る。
「――レベルを押し上げ、進化と成長を繰り返し、行く行くは弱り切った両雄の〝主力〟を喰らう…♪」
「――」
真っ向からの力競べも嫌いじゃない…けれど、知略を駆使して相手を貶めるやり口も、偶には悪く無い〝趣向品〟になるでしょう。
――ガタガタガタッ――
「――フフフッ、フフフフフッ♪」
考えが巡り、表情が歪む…あぁ、堪らない…想像の中で創り上げられた彼等のその表情はが…恐怖と、怒りと、憎悪と、殺意に満ちた…ヘドロの様な獣欲が…。
「――あぁ、堪らない…是非、〝生で見たい〟」
そして、その〝全て〟を…粉々に――。
「〝マオさん〟!」
「――ッ!」
其処まで思考が果てた時…私は、私の熱暴を冷ます鋭い一声に我に返る…声の先にはレイナが居て…私の周囲では、無数に伸び触手が鋭く殺意と悪意の籠もった形状で…地面を引き裂き…悶えていた。
「――あぁ、ごめん、ごめん…ちょっと〝遊び〟が過ぎたわ、ごめんなさいレイナ」
「ッ…い、いえ…!」
思考を侵す熱暴を、私はスッと押し込めて…深く呼吸し、自身の過ちを身に刻む…そして、レイナに謝意を告げると…レイナは慌てたように私に首を振り、気不味そうに沈黙する。
「――兎も角、〝この機会〟をみすみす見逃すのは惜しい…この〝騒乱〟に介入し、彼等の想定を掻き乱す…そして、〝私達〟が…悉くの利益を〝収奪〟する…!――って言うのが理想だけど…どうかしら、レイナ?」
「まだ何とも言えません…でも、やってみる価値は有りますね…」
「そう!――だったら決まりね!」
その沈黙を打ち破り、私とレイナは言葉を交わして私達の〝目的〟を設定する…そして方策会議も一段落し、一息付くと…私はレイナの手を引き…外へ向かう。
「そうと決まれば、先ずは〝甘い物〟でも食べましょうか!…次はパンケーキにしましょうレイナ!」
「もう…そんなに贅沢すると資金が枯渇しますよ?」
そんな私の言葉にレイナはそう言いつつも、口端を緩め、私の後を追い…人の街へ繰り出すのだった。




