新居と御掃除
――ザンッ――
「――良いわね〈斬撃〉♪」
ソードマンとの戦いを経て、私とレイナは最初の目的である〝洞窟〟を探し…現在、件の洞窟にたどり着き…その中に巣食っているゴブリン共を順繰りに仕留めていた。
「〈打撃〉と違ってダメージの通りが良い、〈貫通〉よりも範囲が広く、扱いに癖がない…普段使いに便利ね」
――ズバンッ――
私は、ソードマンを倒した際に手に入れた新たな戦技〈斬撃〉の使い心地を試しながらそう言い、洞窟の奥に逃げ込んでいくゴブリン達を斬り殺して行く。
「ギャッ!?」
「ギギィッ…ゲァァッ!」
そんな私の殺戮に、数匹のゴブリン達が逆襲を掛けてくる…しかし。
「6…3…8…大したレベルじゃないわね……〝レイナ〟」
勇敢にも、無謀にも私達へ遅い掛かってきた連中のステータスを見て、私は後方にいるレイナへ呼び掛ける…すると、その一拍後――。
「――〝魔弾〟」
そんな命令と共に、レイナは自らの手から〝魔力の固まり〟を生み出し、ソレをゴブリン達に撃ち込んでゆく。
――ドドドッ――
その弾幕は大半が外れたとは言え物量は申し分無く…撃ち抜かれ続けたゴブリン達は、やがて命を落とし…その糧をレイナへ捧げる。
「あ、レベルが上がりました!」
「良いわね…この調子で刈り尽くしましょうか」
現状…レイナが保有する〝魔術〟は3つである。
〝1つ〟は…先程から行使している〝魔弾〟…魔力を放出し、弾丸として飛ばす技。
(魔力消費とダメージのコストパフォーマンスに優れた攻撃技…レイナの主力だ)
そして、2つ目――。
「ギ…ギアァ!」
地面に倒れていたゴブリンが、起き上がりレイナへ突撃する…死んだふりだったのだろう…背後からの強襲が私達へ襲い来る…しかし。
「―〝魔力壁〟」
その強襲は、レイナの祝詞と共に生み出された不可視の防壁に阻まれ、届くことは無い…コレが〝2つ目〟…〝魔力壁〟…自身の指定した範囲に不可視の防壁を展開する魔術…コレは魔力の消費が大きい分、かなりの攻撃を耐えられる代物だ…。
「――助かったなら、さっさと逃げればいいのに…馬鹿な魔物ね」
――ドスッ!――
馬鹿なゴブリンの脳髄を貫き…-その死体を吸収する。
「あ、スライムさん…連戦続きで魔力が減っているなら回復しますよ?」
「そう?…ならお願いするわ」
そして〝3つ目〟…レイナが私の触手に触れ…その魔力を私に流し込む…コレが〝魔力供給〟…自身の魔力を他者に譲渡する力。
コレが現在レイナが行使できる魔術の全てだ…一見地味だが、この構成は中々手堅く厄介なものだ。
攻守共に優秀な魔術を持ち、魔力の消費も軽微という…まだ初期段階の魔術としては優秀も優秀…。
「是非、私にも御教授願いたいわね」
…まぁ、それも追々の話…今は〝新居〟の確保が最優先。
「――んッ…もう良いわ」
私は自身の魔力が補充された事を確かめると、レイナの手を解き…進路の奥に進む。
「さて…それじゃあ最後の大掃除といきましょうか」
そうして、私達はこの洞窟の最奥…一際濃い魔力と、気配のする場所に足を踏み入れた。
――ヒュンッ!――
踏み入れた瞬間…私達を出迎えたのは…〝上位種のゴブリン〟が放つ、一本の矢だった。
「―〝魔力壁〟」
「ゲギッ…」
その矢は私に触れる瞬間、レイナの魔術によって防がれ、虚空に突き刺さり…そして、落ちる。
「――流石に…此処の心臓部はそう簡単に明け渡さないわよね」
その矢を放った下手人は、私の視線を受けると…忌々しげに舌を打ち…物陰から姿を現す。
「〝小鬼の弓兵〟…と…もう一人」
「ゲギャアッ!」
そんな弓兵に私達が視線を集中させた瞬間…真横から、姿を隠していたゴブリンが私に短剣を振り上げる。
――ガシッ――
「ギッ!?」
しかし、その刃は私に触れる前に私の触手に絡め取られ…奇襲者のゴブリンが驚きに目を見開く。
「ッ――ゲラァ!」
そして、弓兵がそのゴブリンに警告を飛ばすと、そのゴブリンは短剣を手放し、直ぐにその場を飛び退き…弓兵の方に着地した。
――ドドドッ…パラッ…――
「チッ…もう少し遅ければ殺れたのに」
(奇襲、短剣…筋力は無く、機動力が高い…〝暗殺者〟タイプの上位種ね)
――――――
【小鬼の弓兵】LV16/20
HP:1100/1100
MP:600/600
――――――
――――――
【小鬼の密偵】LV17/20
HP:950/950
MP:1150/1150
――――――
《〈看破〉のレベルが上がりました!、〈戦技:弱点看破〉を獲得しました!》
「〝上位種が2体〟…最後の戦いだけあって厄介ね」
(とは言え、ソードマンの時と違い、此方ももう防戦一方で戦う必要は無い)
――グニィッ――
「〝速攻〟で…ケリを着ける!」
「ッ――ギィッ!」
「ッゲァァ!」
地面に触手の槍を突き立てる…それと同時に地面を跳ね…突き出された触手の勢いに乗って、2匹のゴブリン目掛けて肉薄する。
――ゴポッ!――
「――〈斬撃〉…!」
そんな私の行動に、二匹は左右に飛び退き、回避を試みる…その行動に対して私は空中で触手を更に生成し、二匹に其々無数の触手をけしかけ、切り刻む。
――ザザザザザンッ――
「ギィッ!?」
「ギャァゲギャッ!」
乱雑に振るわれた触手は出鱈目な軌道で大地を、壁を、空を切り裂きながら其処に至るゴブリン達もを切り裂いてゆく…。
「真正面からの戦いは慣れてないわね?」
ゴブリン達の一連の動きを見て、私はそうほくそ笑む。
「ソードマンと同レベルの相手だったらちょっと厄介だったけど…コレなら梃子摺る事も無い」
そして、着地と同時に…迫る矢を掴み…ソレを手折る。
「――私ばかりに意識を向けるなんて馬鹿な子ね」
その矢を放った張本人は、その瞬間、横合いから放たれた魔力の弾丸に撃ち抜かれ…止まることのない弾幕に打たれて姿を消す…そして。
「――さ、続きね…〝シーフ〟」
私は、目の前に居るゴブリンの密偵にそう言い…一方的な蹂躙を始める…。
《レベルが、上がりました!》
その結果は明白に、ただ…暫くの騒乱の後は、静かな静寂と…噎せ返る様な血の匂いだけが、其処に残っていた。




