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夜への再戦

2本目?…1本目?…審判、コレは一体…!?


そろそろこの章の山場を描きたくなってきた私です…もう暫くお待ちを。

――ザッザッザッ…――


暗い夜…月の光のみがこの世界を灯す輝きである、そんな夜更けこそ…彼等、〝夜の獣〟の世界である。


昼の陽射しが彼等を差す事は無い…彼等は日に背を向けた者達である為に…熱の冷めた余燼を這い、陰鬱な世界を狡猾に生きてきた。


「グルゥ…」


そんな彼等の内…一匹の獣、逸れ狼の〝影色狼〟は…その鼻が捉えた〝その匂い〟に歩みを進める。


それは…噎せ返る様な血の匂い…この世界にあって珍しい、煮詰めに煮詰めた濃い〝死臭〟…ソレが、彼を誘う。


「バウ…」


そして、その匂いの素が目と鼻の先である事を理解すると、彼はその気配を影に溶かし…音も無く、静かに〝先〟を伺う。


彼等とて、馬鹿ではない…こうまで強い血の匂いに警戒するだけの知性が有る…何故こうまで香るのかを考える事は出来ずとも、ソレが罠という可能性がある事を考えられる程度には、彼等は狡猾だった…。


――ジッ――


木陰から、その先へ視線を送る…其処は、開けた広場だった…そして。


――ポヨンッ――


影色狼は、その開けた広場の中心で…空からの月光を一身に受ける〝ソレ〟を…確かに捉えた。


――〝スライム〟――


この世界に蔓延る、矮小な魔物…脆弱で白痴、しかし異常な繁殖力と適応能力でその存在を保つ〝弱者〟…ソレに酷似した〝魔物〟が…月光の蒼を纏い、鎮座していた。


――グニョンッ――


己が知る〝ソレ(スライム)〟と異なり…1回り2回りは大きいソレの姿に違和感を覚えながらも、影色狼は奇襲の為に…気配を薄く、薄〜く溶かし…近付く…しかし。


――ビシッ――


不意に、スライムの身体から生み出された触手が己を指差し…静止する…その行動に、影色狼は思わずと立ち止まり、目の前のソレを信じられないと言った面持ちで見詰める。


――〝見つかっている〟――


愚鈍な筈のソレが、確かに己を指し示した…〝見えている〟と言わんばかりの振る舞いで…その衝撃たるや、影色狼の常識を崩すには充分な程に強く…思わず立ち止まる…すると。


――ヒュンッ――


ソレの触手が空を切る…それは威嚇の所作と言うよりは、寧ろその逆…挑発…戦いを望む様な触手の振るい方だった。


「ッ…グルゥ…」


重大な困惑から立ち直った影色狼は、改めて目の前の〝ソレ〟を見ると暫しの間黙考に耽り…。


「ガウッ…!」


遂に、その〝挑戦状〟を受け取り…木陰から一歩、足を踏み出す…その影色狼の選択に…。


――プルプルプル――

「ミミミ♪」


大きく肥えたスライムは、嬉しそうにそんな鳴き声を…奏でた。



○●○●○●


――ザッザッザッザッ…――


日暮れから、僅か十分と経たずに目的の魔物と相対する…何たる僥倖だろうかと、私は小さく喜んだ…。


――――――

【影色狼】LV14/20

HP:1700/1700

MP:780/780

満腹:80%

――――――


ざっと、表示されたステータスに目を通す…レベルは以前出会った同種よりやや下がるものの、格上である事には変わり無い…。


「――〝再戦相手〟には、申し分無い相手って事ね!」


気を改めて引き締め…私と、目の前の影色狼は距離を詰めて行く…。


――ザッザッザッ…――


互いに距離を詰めながら、その間合いを探る…。


――ズッズッズッ…――


一歩、また一歩と進む毎に互いの緊張は高まり…集中に歩みは遅くなる…そんな、〝極限の集中〟の中――。


――グニィィッ――


「――〝掴む〟…!」


最初に動いたのは…私だった。


――ブゥンッ――


私の身体から生成された触手が、圧縮され…押し出されるように影色狼との距離を詰める…その間合いは既に私の範囲内、触手が影色狼の身体に巻き付こうとする…だが。


――ジャキンッ!――


影色狼の研ぎ澄まされた鋭利な爪が、私の触手を切り裂くと…触手は力なく地面に転がり、溶解する。


(凄まじい反射神経、今の一瞬で切り捨てられた…!)


切り裂かれた触手を自分に戻しながら、私はこの行動を観測し…頭の中で展開を構築する…対して、次は此方の手番とばかりに影色狼が私に肉薄する…その速さは目を見張るものがあり、驚異的…ではあったが。


――ブンッ!――


「グルゥ…!?」

「〝見えない程〟じゃない…!」


〝見える〟…奴の攻撃の軌跡が…この眼でしっかりと認識し、対応が出来ている。


「〝触手〟――〝掴む(グラップ)〟」


そして、影色狼の動きは脅威で有ると同時に〝好機〟でもある…肉薄すると言う事はそれだけ彼我の距離は狭まり、双方共に攻撃への回避行動が難しくなると言う事だからだ。


――ビシッ!――


「グルゥ…!?」

「〝掴んだ〟…!」


三本の触手で影色狼の身体を捕縛する…ソレに一瞬歓びが過るが…その瞬間触手に送り込まれる〝力の反発〟に、その歓びを失せさせる。


(強いッ…ステータスは上がっているのに押し返される…私のステータスより更に1段上か…!)

「――ぬぅぅぁ!!!」


捕縛、拘束を諦め…私は触手に全力を込めて、奴を外縁の樹木に投げ飛ばす…その一撃に影色狼は身動きを取ることも出来ずそのまま樹木に叩きつけられてしまう。


――ズシィィンッ――


「ギャンッ!?――グルルルルッ…!」

「長時間の力比べは不利、一瞬なら何とかね…!」


その一撃を受けて、蹌踉めきながら立ち上がる影色狼のダメージを確認しながら私は思考を巡らせ続ける。


――――――

【影色狼】

HP:1403/1700

――――――


(ダメージの通りは悪く無い…単純計算で300近いダメージなら、理論値で後5回同じ攻撃を食らわせれば仕留められる)

「勝機は十二分に有るわね…!」


距離の空いた間に分析を挟みながら…私はこの接戦のヒリ付きに笑みが溢れる。


「ウフフッ…フフッ…〝楽しい〟わ…!」


そんな私の声が、夜に溶けて消え…私は笑みを顔に貼り付けながら、迫る第2ラウンドの動きを思考する。


「さぁ、まだまだ行くわよ!」

「ガルゥッ!」


そんな夜の再戦の第2ラウンド…私と彼との戦いで、2回目の膠着…その沈黙を破ったのは、彼の方だった。

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