新天地と夜逃げ
2本目ェ……次は久し振りに掲示板形式の話でも書きましょうかねぇ…長らく書いていないですし。
――バサバサバサッ――
「オイオイオイッ、何処にも居ねぇじゃねぇかクソッ!」
西の森を、東の洞窟を…〝翼の獣達〟は飛び回りながらそう叫ぶ。
――ドタドタドタドタッ!――
「ックソ…!――ガセネタ掴まされたんじゃねぇのか!?」
南の湿地を、北の荒野を、〝地を駆る獣達〟は踏み荒らしながら悪態を吐き捨てる。
生命が寝静まり、静かな〝自然〟の世界が…薄暗い悪意と欲望が犇めく〝騒乱〟によって妨げられる。
「――本当に居んのかよ、〝懸賞金1位〟…?」
彼等は…皆一様に〝同じ標的〟を目指し、其処に居た……そんな、四方の大地が静けさに目立つ騒がしさで林を木々を揺らす中――その〝街〟では――。
●○●○●○
「――ほーんと、〝雑魚〟は簡単に扇動出来て楽だわー♪」
不気味な程静かな街の中を…目深にフードを被った黒髪の〝幼女〟は、愉しげに笑いながら、その手に明らかに高価な〝貴金属〟を手に取り、弄んでいた。
「――こちとら〝自然の道理〟で互いに〝利用し合っていた〟のに、勝手に逆恨みされて挙げ句に此方の目的も妨げられたんだし…この程度の〝お詫び〟は貰ってもいいわよねぇ?」
彼女はそう言い、路地裏のなんてことは無い木箱の中に隠し入れていた〝財宝の山〟をインベントリに押し込み…自身のインベントリにズラズラと並べられる〝貴金属の装飾品〟の名簿を見ながら悪い笑みを浮かべる。
「――それじゃ、此処でやる事はあらかた済んだし…さっさと次のエリアに行きましょうか♪」
そひて、彼女が路地裏の闇に消えた時。
――ボオォォォンッ!――
その瞬間、霊樹の側に改めて再興された〝領主館〟に…閃光と共に凄まじい爆発が鳴り響き…その中から、聴くも恐ろしい〝怒りを孕んだ男の叫び声〟が響き渡った。
○●○●○●
――コンコン、ココンッ♪――
「ハァイ、ただいまレイナ♪……準備の方は――」
ご機嫌なノックと共に、ヒョコリと現れた幼女が愉しげに扉の先に視線を送る…すると、其処には1人の少女が、その皮のバッグを首から掛けて幼女へ視線を送っていた。
「――〝良さそう〟ね♪」
ソレを見た幼女は、そう言うとレイナの手を引き…外へ出る。
「なんだか…森が騒がしいですね」
「〝仕込み〟で賞金稼ぎ達を四方に散らしたからね〜……〝マオ・ディザイアは〇〇に居る〟…それなりの装いと雰囲気を作って単純な連中に話を持ちかければ、情報操作は茶を淹れるより簡単よ♪」
レイナの疑問に彼女はそう答えながら、自身の目の前に浮かぶ半透明のウィンドウを操作する…そして、お目当てのものを見付けると、ソレを取り出してレイナの首に掛ける。
「ッ…コレは?」
「〝消耗品の魔道具〟…街に住む違法商人の店から奪った物で、魔術の補助と魔術防御を高めてくれるわ、持っといて」
そうこう言いつつ、二人はやや開けた場所に辿り着くと…幼女はその手を離して、広場の中心に足を運ぶ。
「――〝変形〟――〝大鴉〟」
そして、そう呟くと共に…彼女の姿が大きく〝変貌〟する…。
「ッ!?」
ソレは、今のレイナにとっては初めて目にする光景であり…あまりにも異様な光景だった。
――ボコッ、ボコボコボコッ――
幼女の身体がボコボコと膨れ上がり、人の形を崩していく…背中からは肉とも泥とも判別の付かない赤黒い〝半個体状の何か〟が露出し…ソレはまるで〝鴉の羽根〟の様に大まかな形状を取り、彫刻家が細部を刻む様に、細かいディテールを創り上げていく。
泥が肉を作り、骨を作り、爪を、毛を、臓器を創り出していく…見る間にその姿は大人一人を軽々と掴み上げてしまいそうな程大きな鴉に姿を変え…その赤い瞳に確かな知性の光を宿し、レイナを視る。
人から〝人ならざる獣〟へと姿を変えた…魔術を齧るレイナには、ソレが〝魔術〟等の技術で変化した物では無いと理解出来るだろう。
『マオ・ディザイアは〝化物〟である』
その理解が彼女の脳にクッキリと消えない跡を残す…そして、その事実に彼女が呆然としていると、件の〝化物〟はレイナへ告げる。
「……さ、乗って頂戴な…手早くこの場所を抜けましょう…もう直〝感の良い連中〟が追ってくるわ」
その声は変わらずレイナを労るように優しさを持ち……その優しさを感じ取ったからこそ、彼女はその内に秘めた〝恐ろしい感情〟を呑み込み、彼女の下に近づく事が出来た。
――ボフッ――
「あ……フワフワ…」
「フフフッ、人を載せて飛んだ事は無いから…ちゃんと抱き着いておいてねレイナ」
そして、大鴉と少女は一塊になると…黒曜の様に鮮やかな翼は月の光を受けながら羽搏き…月を目指す…そうして、彼女達の夜の一幕は幕を明けた。
………。
●○●○●○
「……♪」
楽しげに、そう楽しげに……宇宙に出来た、あまりに不似合いで不可思議極まる〝雑貨店〟で、時計頭の店主は〝水晶に映る鴉と少女〟を眺め魅入る。
「へーえ?……随分楽しそうじゃん、■■」
そんな彼へ、不意に何処かの誰かが声を掛ける…鈴の音も無く、来客の報せもなく響くその言葉に、時計頭の店主は不思議そうに声の主を見る。
「ん?……あぁ、貴方ですか〝案内人〟」
そしてその姿を認めると、もうソレに興味がなくなったと言う風に再び〝彼女達〟へ視線を落とす。
――カチカチカチッ――
「いーいのかなぁ?…いいのかなぁ?…〝一個人に贔屓〟しちゃってさぁ?――〝公平な商人〟がそんな真似して良いのかなぁ?」
そんな彼へ、まるで彼の鏡合わせの様に同じ姿形をした…しかし、差別化の様に白衣と社員証を掛けた時計頭の男はそんな、嘲りを込めた問を投げる…それに。
「――〝公平〟ですよ、彼女は私の〝信頼〟を手に入れた、だから私も〝信頼〟の対価を支払っているだけ…窓口は幾らでもあり、〝商人の原則〟は守っているのですから問題無いでしょう?…少なくとも、〝案内人〟でありながら好き勝手している〝貴方〟には言われたく無いですね」
「ハハッ、其奴はご尤もで……でもまぁ、僕はそう言う〝役割〟だからね、仕方無いよね♪」
雑貨店の男はそう返す、すると白衣の男はそう愉快そうに秒針を揺らしながらそう返し…いつの間にやら出来た椅子にドカッと腰掛ける。
「それで?……此度は我が〝ラック・パール〟にどういった用件で?」
「フフ♪――此処に来たなら、決まってるじゃないか……少し、〝欲しい物〟が有るんだよねぇ♪」
そして、そう言うと…その歯車の集合体の先から、怪しい楽しげな〝光〟を雑貨店の店主に向け…チラリと、水晶の中を覗き見た。




