猫の逆襲と魔狼の怨嗟
遅れましての投稿。
明日は…明日は確定で2本出るんで!
――ブンッ――
〝入った〟と言う確信がヴォルフの内に宿る…精霊の娘は動かない、回避の余地がない故に、防ぐ余地がない為に…シュテンもまた、動かない、〝動けない〟…その行動を取るには遅過ぎたと…理解した故に。
ドクターも同じく、安堵を浮かべる…張り詰めた戦闘の、一度の終着に…驚異の排斥に成功した事実に…緊張を解く。
それから、僅か数秒とせぬ内に…彼等四人が脳裏に浮かべた同じ〝光景〟に、到達するだろう。
誰もがそう…〝確信した〟――。
「何が勝っただッ、巫山戯んにゃー!!!」
――ゴッ!――
ヴォルフ目掛けて迫る〝影〟が…そう言いながら、ヴォルフの顔に飛び蹴りを入れるまでは。
『ッ!?』
四人の顔には、一瞬にして驚きが満ちる…厳粛な闘争の空気は一瞬にして砕け散り、其処には喜劇に満ちた道楽的な…いや、直球に言えば〝ギャグ〟の様な気の抜ける空気が満ちていた。
――フシャァァァァッ――
「なぁに四人で盛り上がってるニャこのバカチン共ッ、ナチュラルに出番カットされた私の見せ場を返せニャーッ!」
四人が呆然と見据える先には、怒りに全身の毛を逆立たせ、プンスコと擬音を響かせる様に怒り、地団駄を踏む猫の小娘…ニャミィが居た。
「…七m――ニャミィ、ちょっと落ち着いt」
「シャラップチサッち!――チサッちは良いニャンねたっぷり見せ場が有って!…オマケに長身ガチムチイケメン鬼いさんと良い雰囲気じゃニャイですか!――ズルいッ!」
「……」
場の殺気が完全に薄れ、毒気を抜かれたチサトが、ニャミィを宥めようとする…しかし、そんなチサトの何かがニャミィの逆鱗に触れたのか、ニャミィは目を真っ赤にしてチサトの頬を抓り、荒れ狂う。
「…おい、チサト…コイツァどうすりゃ良い?」
「……昭和のテレビ」
「オーケー、把握した」
「カーッ、カーッ!…何ニャその歴戦の相棒感はッ、くそぅ、くそぅッ、ニャミィだってそんなムーヴしたいのに、己作者絶対許さ――」
――ゴンッ!――
猫か鴉か分からない娘の錯乱が、シュテンの〝気付け〟によって収まる…すると、その小娘は頭にテニスボール程は有りそうなタンコブを頭に付け…地面から飛び上がる。
「ハッ、此処は戦場ッ、私はクールビューティーお姉さん系猫耳戦乙女!?」
「…まだ直ってなかったか」(グッ)
「ニャギャッ!?――ウソウソジョーダンジョーダンッ…魔獣の皆のお友達、ニャミィさんですよぅ!」
そして、漸く熱暴走を終えた猫の娘ニャミィがシュテンとチサトにそう弁明して居た…その瞬間。
――ドッ!――
「――フンッ!」
地面を蹴り穿ち…ニャミィに蹴り飛ばされたヴォルフが、背後からニャミィに拳を振るう。
――ブンッ!――
完全に背後を取って放たれた一撃は、ニャミィの背を死角にシュテンとチサトの反応を直前まで遅らせる…二人の目が、ヴォルフの拳を捉えた時には既に遅く…ヴォルフの拳はニャミィの頭蓋を打ち据え――。
「ニャフッ――2度同じ手は食らわんニャ♪」
ようとしたが、…ニャミィがそう言うと共に身を屈め…くるりと姿勢を反転させてその拳を躱す…気付けばヴォルフは伽藍堂の腹をニャミィに晒し、絶好の攻撃機会を得たニャミィは、その瞬間先程の雪辱を晴らしてやるとでも言いたげな、牙を剥いた野蛮な笑みを浮かべ…その手に爪を生やし…魔力を過分に込める。
「そして喰らえぃッ――〝猫斗百裂爪拳〟――又の名を狂化&連撃コンボ!」
――ザザザザザンッ――
その瞬間、狂奔な黒い魔力によって強化された五体と爪を用いたニャミィの連撃は、瞬く間にヴォルフの身体を削り殺してゆく…。
――ザザザザザンッ!――
一撃一撃は、浅くとも…〝狂化〟による、物理ステータスの大幅強化と、ニャミィが有する〝ある能力〟によって、その火力は無視出来ない物となる。
「ニャニャニャニャニャニャッ!!!」
「グッ……ォォォッ…コレ…は…!」
遂にその攻撃がヴォルフにとっても、驚異と成り…その肉を抉り裂く頃には、ヴォルフの四肢はその機能を失い…抵抗の余地など与えられよう事は無かった。
――ズドォッ!――
そして、ニャミィの拳はヴォルフの胸を貫き…ニャミィは、その手に確かに感じる〝鼓動〟とヌルヌルとした〝脈動〟に…ソレを引き抜く…ソレは。
――ボタボタボタッ――
ヴォルフの〝心臓〟だった…ソレが引き抜かれた瞬間、ヴォルフはその口から大量の血反吐を吐き…崩れ落ちる…。
「〝夜賢狼の心臓核〟…ニャッフッフッ!…普通の戦いじゃ到底敵わない相手の〝貴重品〟ニャね♪…このお宝に免じて、さっきの〝雪辱〟はチャラにしてやるニャ♪」
倒れ伏し、死に向かいながらもニャミィを睨み付けるヴォルフに、ニャミィはそう言い上から睨見つけながら…薄く嗤う。
「―さぁ、次は〝お前〟だニャ、ドクター〝アルス・アスクレス〟…特に恨みは無いが私の出番とまだ見ぬお宝ゲットの為…早急に首を差し出すニャ!」
そして、その視線を…今まさに魔術をけしかけていたドクターへ向けた…その瞬間。
――グルルルルッ!――
「〝死誓の呪詛〟――〝魔狼の怨恨は決して晴れず〟」
ニャミィの足元から…〝獣の唸り声〟が響き渡り…ニャミィを、無数の視線が貫き…その視線に、ニャミィはその主を探す…そして。
――ジッ――
ニャミィは、己の周囲に広がる〝影〟と…目が合った。
――ドッ!――
その瞬間…影は本来有るべきその役目を放棄し…自らを生み出す〝実像〟を喰らい尽くし…それから、その赤黒い眼をニャミィへ向ける。
「グルルルァァァァッ!!!!」
「キィィィヤァァァァァッ!?!?!?」
そして、間髪を入れず…咆哮と共にニャミィへと飛び掛った。




