ぼくはギルドの雑用係
お客様二人から少し離れた所で、ぼくたちはこそこそと話し合います。
「どうするんだ、オスカー?」
ハルトムートさんは呆れた視線を二人のお客様に注ぎながら、ギルドマスターであるオスカーさんの判断を促しました。
「強いことは強いんでしょうけど」
「……ちょっと変人だな」
ビアンカさんとディータさんもギルドに入れるのに少し不安そう。
「あいつらギルドクラッシャーなんやろ? 危険だと思う」
ミアさんの耳と尻尾がへにょりとしてしまった。
「う、ううーん。しかし断るのもなんだか心が痛むような」
オスカーさんの顔が苦悶に歪んでいます。
わかります、わかります! なんだかあの二人を見捨てたら、お腹を空かした子供を見捨てるような罪悪感に苛まれますよね?
ぼくは、トコトコと二人に近づき無邪気を装い質問をしてみました。
「あのぅ、お二人はこのギルドで恋人とか探すつもりですか?」
「「は?」」
「だって、前のギルドでは揉めたんですよね? イロコイ問題で」
ぼくの質問にお二人の顔がカァーッと真っ赤に染まる。
「いや、いやいやいや。だ、大丈夫だから、本当に、大丈夫だから!」
ドラゴニュートの男の人、ユリウスさんは顔の前で両手を振って否定しまくります。
「私も……特に恋人とか必要じゃないし。仕事とプライベートは分けるタイプだもん」
「ぷら? ぷらいべーとですか?」
何のことだろう? エルフ語なのだろうか?
そして、ぼくたちの会話が聞こえたビアンカさんがドシドシと足音を鳴らして来ました。
「ちょっとー、アタシだってそういう意味では大丈夫よっ」
ふんっと両手を腰に当てて、ぷくっと頬を膨らませています。
そして後ろではなぜか怒りまくったハルトムートさんをオスカーさんとディータさんで羽交い絞めにして抑えてました。
「てめーっ! うちの娘じゃ相手にならねぇつーのかっ! 表に出やがれっ、ぶん殴ってやる!」
落ち着いてください、喧嘩はダメですよー。
荒ぶるお父さんを宥めるのに少々の時間はかかりましたが、なんとか落ち着いてもらって、今はギルド加入予定者二人にギルドハウス内を案内しています。
ぼくだけでいいのに、ぞろぞろとみんなで案内しています?
うん? ヒマなのかな?
「ここがぼくたちの居住部分で、一階が食堂とキッチンです」
ギルド部分は案内済ですので、一旦裏口から出ていつもの出入り口から入ります。
「広いのね」
「元男爵家の持ち物だって?」
キョロキョロと見回す二人への応対はオスカーさんたちに任せて、ぼくはテーブルとイスのチェックをします。
だって、二人もメンバーが増えるんだもん。
テーブルはかなりの大きさがあるので二人増えても大丈夫。
椅子もまだ四脚あるから、間に合うみたい。
肩からさげた鞄からレオがポヨンポヨンとぼくの体にアタックしてくるのは、「早く紹介してくれ」という催促だろうけど、まだもうちょっと待っていてね。
「じゃあ、次は二階へ」
二階はぼくたちの部屋があります。
二階も三階もまだ部屋は余っているので、好きな所を選んでください。
「個室なのか」
「嬉しいわ」
二人は空き室の扉を開けては中を確認して、うんうんと頷いてる。
それから、トイレとお風呂と地下の訓練場、食材置き場とワインクーラーの場所も教えます。
「食材とワインは勝手取らないように!」
ぼくが怖い顔で注意すると、二人は少し笑いを堪えながら「わかった」と応えてくれました。
「ああ、でもお風呂があって毎日入れるなんて嬉しい!」
「トイレもキレイだったし、外と地下の訓練場は整っているし、いいな」
そうでしょう、そうでしょう。
なんとなくぼくらが自慢げに胸を張っていると、二人は「はーっ」と肩を落としてため息を吐いた。
「でも、俺たちじゃこのレベルを維持するのは難しいなぁ」
「ええ。掃除も困らない程度にしかできないもの」
「なんのことです?」
「だって、当番制で掃除やら料理やら家事をしているんだろう? 高ランクギルドになれば専門の人間を雇うこともできるけど」
「……ぼくがやりますから、大丈夫ですよ?」
お掃除もお料理も、庭仕事だってぼくに任せられています!
お休みの日もありますが、そのときだけ自分のお部屋やトイレを掃除してくれればいいんです。
ご飯は外に食べに行ったり買ってきたり、最近はカズたちに習って自分で作ったりもしていましたね。
「「えっ?」」
二人がビックリした顔でぼくを見るので、ニッコリ笑って頷きました。
「はい。ぼくはこのギルドの雑用係ですから」
だからギルドハウスは、あちこちどこもピカピカなんです。
「おい……おい、オスカーとか言ったよな? ここのギルドマスターは?」
「ええ。確か、あなただったわよねぇ?」
ズモモモモと地の底から響くような低い声がお二人の口から洩れて、オスカーさんの両肩をガシッと掴みました。
「な、なんだ?」
オスカーさんがちょっとビビッてます。
「こんな子供をこき使うなんて!」
「まさか、人身売買とかじゃねぇだろうなっ」
「ええーっ!」
ご、誤解です、誤解ですぅぅぅぅっ。
ぼくは二人とオスカーさんの間に入って涙目になりながら、オスカーさんとの初めての出会いから今までの経緯を話したのでした。
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お読みくださりありがとうございます!
次章までしばしお休みをいただきます。
更新再開しましたら、またよろしくお願いいたします。
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