今までのハズレドロップ
さて、今までのダンジョンアタックで手に入れたハズレドロップを整理してみよう。
まず初級ダンジョンでは、「ショーユ」と「ショーガ」と「コメ」である。
ショーユで味付けした肉料理や魚料理や野菜炒めなど、もうショーユなしではギルドの食卓は有り得ません。
ショーガも味付けはもちろん、魚や肉の臭み消しにも重宝しています。
コメはパンよりお腹にたまる主食として、食いしん坊たちに大人気です。
おにぎりとか片手で食べれるのも、デスクワーク中のオスカーさんから好評で、中の具材はなんでもオーケーとくれば飽きもきません。
次に中級ダンジョンで得たハズレドロップは……、まあ、そこまでの衝撃なアイテムではなかったんですけど。
中級ダンジョンはタワー型のダンジョンで最上階が三十階だ。
五階毎にボス部屋があるんだけど、ボスモンスターが出現するのは十階毎で、中ボスクラスのモンスターが出現するのは五が付く階数。
転移魔法陣があるのは五階毎と親切設計のダンジョンです。
最初のボス部屋五階を踏破したときに出たハズレドロップは「ゴマの油」でした。
セサミを絞った油……って必要なの?
花油や木の実油とか、油の種類ならそれなりにあるじゃない?
でも、カズは大感激でその日から揚げ物料理が増えました。
天ぷらという料理です。
……甘いお芋の天ぷらがおやつにもなっておいしいけど、ゴマ油じゃないとダメなのかな?
十階のボス部屋では、「ワサビ」という辛い根っこ。
食べるとヒーヒーする辛さじゃなくて、鼻の奥がツーンとする辛さで、ぼくは悶絶しました。
このワサビの良さがわかるのは、ハルトムートさんとオスカーさんだけで、他のみなさんはマスタード派でした。
ぼく? ぼくは辛いのはまだ早いから遠慮します。
十五階では、乾燥した「緑の葉」でした。
なに、これ? と不思議に思っていると、カズが「お茶だ」と教えてくれました。
紅茶用のティーカップで淹れたらカズに微妙な顔をされたけど、味はサッパリとしてちょっと苦味がある食後にピッタリなお茶でした。
ディータさんが気に入ってよく飲んでいます。
二十階の部屋では、「ミリン」がでました。
……え? 弱い酒精の甘いお酒じゃないの? と味見して思ったんだけど、カズが「ミリン」と主張するのでミリンという調味料らしいです。
酒精があるよ? え? 火を通すから大丈夫? ぼくが酔っ払ったらどうするのさ。
そして、ここで爆発するのです。
「ワレの分野のドロップアイテムがないーっ!」
今までドロップしたのは、主にカズが得意とする分野のアイテムだったらしくで、チュウのレシピでも使うけどもっと必要なアイテムがドロップしてほしいんだってさ。
「だから、ギョーザを作ったじゃないか」
おいしかったけど、皮づくりがたいへんだったよ。
餡を包むのもチマチマとしていて面倒だし、レオが神業でパッパッと作ってくれなかったらぼくは途中で心が折れていたかもしれない。
まあ、ギルドのみんなが沢山食べるから作るのがたいへんなんだけど……。
今日も朝からお弁当とおやつ作りに励みます。
中級ダンジョンもハルトムートさんの怪我が完治したので最上階踏破を目指し、ますます過酷なチャレンジになるでしょう……ぼくには。
ハルトムートさんなんて、元々は高ランク冒険者なのだから一人で最上階まで行けそうですし、ビアンカさんやディータさんもかなりダンジョンに慣れてきましたし、足を引っ張っているのはぼくだけです。
別にへこんではいませんよ?
だって、ぼくはダンジョン攻略したいとか、冒険者として名を上げたいとか思っているわけじゃないんです。
ただ、このギルドの攻撃力不足を補うためと、ハズレドロップを採取するために参加していたので、冒険者としての成長がなくても全く悲嘆していません。
だったら、ダンジョンに行かなければいいじゃないか、と思うでしょ?
そんな簡単に物事は進まなかったのです。
ぼく抜きでダンジョンに潜ったこともあるんですよ。
そして、そのときのハズレドロップは、全て……本当にハズレでした。
あの「ショーユ」のはずの黒い液体も……ただの塩辛い液体でした。
カズも顔を顰めて、「こりゃ、ちがうな」と首を捻っていましたもの。
どうやら、『異世界レシピ』スキルのぼくがいることで、ダンジョンのハズレドロップは『異世界』の食材や調味料となるらしいんです。
つまり……これからもぼくはダンジョン攻略に同行してハズレドロップを拾わないといけないのです。
「はあああーっ」
ハッキリ言って、弱弱のぼくには気が重いミッションです。
レオはダンジョンで遊ぶのが大好きなんですけどね。
さあ、今日もがんばってハズレドロップを拾いましょう。




