体調は万全、ご飯は微妙?
久しぶりに全力でのダンジョン攻略を楽しんでいるハルトムートさんと、彼のテンションが高すぎてちょっとげんなりしているぼくたちです。
ぼくの『異世界レシピ』スキルの新しい能力「家庭の医学」で出現したぶ厚い本「人体組織図」を熟読し、治癒魔法に磨きをかけたオスカーさんの努力により、ハルトムートさんの古傷は無事に快癒されたみたい……です?
いや、だって、本人が「動いてみないとわからん」って言うから、この中級ダンジョンに来たんですよ。
そして、……ハルトムートさんは中級ダンジョンを単独踏破してしまいそうな勢いです。
たぶん……傷は治ったんでしょうね?
ぼくという弱小冒険者見習いを引き連れて、中級ダンジョンの高層階はやや危ないと判断していたけれど、ハルトムートさんの勢いは止まりません。
「このまま、今日中に中級ダンジョンを踏破してしまいそうですううぅっ」
治癒士のオスカーさんと一緒に後衛に控えているぼくは、ちょっと遠い目をしてしまう。
ちなみにぼくの肩から下げた鞄から、スライムのレオの見られてはいけない動きがビシバシ伝わってきます。
レオー、興奮しないでぇーっ。
「レオも暴れたいみたいだな」
微笑まし気にぼくの鞄を見つめるオスカーさんは、達成感に満足そうなお顔ではあるけど、目の下の隈が酷くて体調が心配です。
「おらっ、オスカー。上に行くぞ、上だっ」
満面の笑みでハルトムートさんは階段のところで足踏みをしてぼくたちを待っていました。
「ええーっ、まだ続けるのぉ?」
その近くには疲労困憊で半泣きのビアンカさんと、肩で大きく息をしているティーダさん。
ははは、みなさんお昼ご飯を食べに一旦、出ませんか?
ダンジョン内のセーフティーエリアでお昼ご飯を食べる事態にはならず、ハルトムートさんは「お昼ご飯」の言葉に耳をピクピクと動かして、素直に転移魔法陣のある階層まで移動してくれました。
ダンジョン外の広場にある休憩スペースは、初級ダンジョンにアタックしていたときよりも、広くなって日よけのフードもついてました。
いそいそとぼくがお昼ご飯の準備をしている横で、ビアンカさんとディータさんがダウンしています。
……かわいそうに……。
「ああ、オスカー、放っておけ。そんな体力回復ポーションなんて飲ませんでいい。もったいない」
ハルトムートさんはグビグビと水を煽ります。
「だが……」
ピクリとも動かないで倒れている二人が心配ですよね?
「メシを食えば元気になるだろう。ったく体力がなさすぎるぞ?」
ハルトムートさんは、ビアンカさんに「斥候の腕の見せどころ」と言ってパーティーの先頭を歩かせ……いや、ほとんど駆け足だったな。
しかも、途中の罠に気づかなかったら、わざわざハルトムートさんが罠を発動させてしまう始末。
「こんぐらいの罠はかわいいもんだ。今から解除に慣れておかないとこの先が辛いぞ」
ワハハハと楽しそうに罠にわざと小石をぶつけてましたよね?
おかげで、壁から毒矢がシュッパッと放たれたり、天井から魔物が降ってきたり、落とし穴があったりと散々でしたけど?
ディータさんはタンク役として、とにかく魔物と体当たりさせられていた。
中級ダンジョンの中階層で出現する魔物の強さもそこそこ強いけど、何よりも体躯が大きい魔物が大変だったみたいです。
まだ、盾の防具は新調していないから、ちょっと防御力が頼りないのに、そんな大きな体の魔物の体当たりは辛かったと思う。
オスカーさんも治癒魔法をバンバンかけていたけど、そのオスカーさんはちょっとニヤニヤしていた。
どうやら、今までの治癒魔法より「人体組織図」で知識を深めた今の治癒魔法のほうが効力が上らしい。
ディータさんの痛めた肩も腕もあっという間に治していた。
……ディータさんの精神的疲労までは無理だったけど。
「さあ、ご飯を食べましょう。今日は新しいメニューですよーっ!」
じゃじゃーんと大皿を幾つもテーブルの上に並べていく。
「お、とうとう例の穀物が届いたんだな?」
オスカーさんの言うとおり、とうとうハズレドロップとして手に入れた「コメ」が精米作業から戻ってきました!
和のおじさんに確認してもらったら、ちゃんと「ハクマイ」の状態になっているとお墨付きです。
まぁ、食べられるように炊く? のがたいへんだったけど、おいしくできたと思います!
でも……なんだが、みんなのリアクションが薄いような?
あれれれ? 食べないんですか?
「こ、これだけ?」
ビアンカさんが震える指で大皿の上に乗ったコメ料理を指差します。
「……」
ディータさんが無言で首を振りました。
「……坊主。おじちゃんは肉がないと力がでねぇなぁぁぁっ」
ハルトムートさんが耳と尻尾をぺしゃんと下げて呟きます。
「クルト。この白くて丸いものはなんなんだろう?」
オスカーさんがお皿に並べたものを一つ手に取って、困惑気味に問いかけてきました。
ぼくはみんなに向かって、えっへんと胸を張り堂々と料理名を教えてあげます。
ぼくの顔の横で和のおじさんも同じポーズで胸を張っていました。
「これは……おにぎりです!」
ドドーン!
どうだ、おいしそうでしょ?
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更新再開していきます。
不定期更新になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。




