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「異世界レシピ」スキルで新人ギルドを全力サポートして、成り上がります!  作者: 沢野 りお
初級ダンジョン 探索編

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新メンバー

ハルトムートさんがこのギルドに加入する?

え? だって、ハルトムートさんは足の怪我が原因で冒険者を辞めたんですよね?

ミアさんだって、お父さんが冒険者だって教えたらギルドからの勧誘があるかも? って心配して、ぼくたちにハルトムートさんのことを黙っていたんですよね?

なのに、このギルドに入る?


「ハルトムート。申し出は嬉しいが……怪我はいいのか?」


オスカーさんがちょっと困り顔でハルトムートさんに意志確認をします。

ビアンカさんとディーターさんは、何かを祈るような表情で見つめています。


「そうや、父ちゃん。いい加減なことを言いなや。ギルドに入るって、戦えないでしょうが」


ミアさんのジト目にやや狼狽えるハルトムートさん。


「いや、確かに足の怪我は治っちゃいねぇが、初級ダンジョンや中級ダンジョンの中階層までなら、こいつら守って行けるぜ?」


「……中階層」


中級ダンジョンは初級ダンジョンより階層が多いダンジョンで、実は洞窟型の初級ダンジョンとは違いタワー型のダンジョンになっています。

地上三十階建てなので中階層だと十五階辺りまでは、ハルトムートさんは攻略できると言い切りました。


「いいわね。中階層まで攻略したギルドだったら、ランクだって上がるし、名前だってギルド内では知られるようになるわ。そこまでいけばメンバー確保もできるわよ」


興奮して頬を赤く染めたビアンカさんが希望的観測を口にすると、ディーターさんもそれに重々しく一つ頷きました。


「そうだな。だが、ハルトムートの怪我が気になる。もし、無理をして悪化したら……」


チラリとハルトムートさんの足へ視線を飛ばすオスカーさんに、パンパンと自分の太腿を叩いてみせるハルトムートさん。


「ああ。気にするな。完治はしていると医者には言われている。ただ……感覚が狂っているんだ。強い魔物と対峙したとき、ほんの僅かな違和感が致命傷となる。だから、俺は冒険者を辞めただけで、そこら辺の魔物なら単独討伐できるぞ」


ガハハハッと豪快に笑ったあと、ぼくを見て「これ、おかわりできる?」とプリン皿を差し出す。


「あ、はい」


いっぱい作りましたから、お代わりはありますよ。

そういうとハルトムートさん以外の全員がお皿を差し出してきた。


「レオは?」


ツツーっと出されるプリン皿。

ぼくは、収納袋からプリンを人数分、もちろん、ぼくの分も出したのだった。












デザートを食べて満足したら、テーブルの上を片付けます。

そこへ、ハルトムートさんがウエストポーチからゴトリと重い音を立てて愛用の武器をのせた。


「双剣……ですか?」


「おうよっ。俺は獣人の特徴を生かした戦闘スタイルでな、敏捷性と機動力重視なんだわ」


その代わりどちらかと言うと攻撃が軽くなるため、急所を狙うか、双剣で同じ所に攻撃を加えるかになるとか。


「前衛の攻撃はハルトムートさんに任せられそうですね」


剣士として前衛に立っていたオスカーさんへ、ぼくはキラキラとした顔を向ける。


「ああ、そうだな。私の肩の荷も下りたよ。まあ、剣は手放せないけど」


ディーターさんもホッとした表情になっている。


「お前らが前衛向きでないのは聞いているが、いい機会だから他の武器にも馴れておけよ。俺が教えてやる」


「へ?」


「ん? オスカーは剣を。ビアンカちゃんは弓だろ? ナイフも教えてやるよ。あと、そっちの、盾のヤロウは斧系か槍でも覚えな」


あれ? ハルトムートさんってばディーターさんに対して態度が冷たくないですかね?


「ハルトムートのおじさん、弓とかできんの?」


「一応な。これでもギルドはいろいろと渡り歩いたから、一通りの武器は扱えるぜ。このギルドハウスはすげぇ設備が整っているのは見た。外の訓練場も地下の魔法訓練場もいいよな。これだけの設備があるなら使わないともったいねぇ」


ハルトムートさんはご機嫌な様子で尻尾もユラユラ揺れている。


「オスカーのは貴族で習う剣術だろう? それも悪くないが実戦で使うならもう少し変えるべきだ。行儀よく襲ってくる魔物なんかいねぇしな」


「そうですね。私も本来の職業以外にも鍛える必要があると思ってました」


「え? ぼくもですか?」


ぼくは、冒険者としての能力向上は考えていませんでしたけど?


「クルトはすでにいろいろと役に立ってくれているじゃないか。家事や私たちのフォロー、ダンジョン攻略と。これ以上、無理はさせられないよ」


「おう。クルトの坊主は問題ないだろう」


「……あ、そうだ。ぼくの代わりにレオを鍛えてあげてください! ものすごくダンジョン攻略楽しみにしているんです」


ほらっ、と二人の前にレオを抱えて見せると、オスカーさんつつーっと視線を反らし、ハルトムートさんは目を丸くして凝視した。

みょんとレオが触手を片方だけ出して、ハルトムートさんにご挨拶。


「ずいぶん、けったいなスライムだな」


いえいえ、レオの素晴らしさはダンジョンに行けばわかってもらえます。

特に、ボス部屋アタックのときにね!


「なら、父ちゃん。ここに引っ越すことにしていいんやね?」


「おう。お前が心配するから言わなかったが、立ち退きがうるさくなってきたし、俺の悪評がバラ撒かれたらしく仕事も見つけられん! 正直、ギルド関係の職を探さなきゃと焦っていたところだった」


「なんですってー!」


ここから、ミアさんたちの親子喧嘩が始まりました。

ぼくたちは唖然と見るだけしかできません。

だって、二人とも凄い早口で何を言っているのかよくわからないし、そのうちミアさんがハルトムートさんをボコボコに叩き出したから。


「落ち着け、ミア。とりあえず、殴るのはやめてやれ」


はっ! といち早く正気に戻ったディーターさんがそっと後ろからミアさんの両手を握り、一方的な暴力を止めた。


「ディーター……」


こちらもはっ! と我に返ったミアさんが振り上げていた両手をそっと下ろす。

ミアさんからの攻撃がなくなったのに、ハルトムートさんの体はブルブルと小刻みに震えだしてるけど、え? どうしたの?


「き、貴様ーっ、ミアから手を放せ」


ガオーッと咆哮し、べしんとディーターさんの手を叩き落とすハルトムートさん。


「父ちゃん?」


「貴様にミアはやらん!」


ひしっとミアさんを抱きしめて、ディーターさんを睨むハルトムートさんの尻尾はピーンと立ち毛が逆立っていた。


「え?」


ディーターさんは叩かれた手を摩りながらも、ポカーン顔です。


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