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「異世界レシピ」スキルで新人ギルドを全力サポートして、成り上がります!  作者: 沢野 りお
ギルド

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ギルドハウスのリフォーム案 1

元成り上がり男爵家の屋敷だったこのギルドハウスは、地下一階、地上三階建てで、表庭裏庭のスペースも充分あるそこそこ広いものである。


「クルトの言う通り、ギルドで使うスペースとあたしたちが使うプライベートスペースはきっちり分けておきたいわね」


「そうですね。とにかくぼくはここが無駄なスペースだと思っています」


ビアンカさんが器用に描いた屋敷の間取り図の一階、二階まで吹き抜けになっている大きな階段をトントンと指し示す。


「ああ……。そうよねぇ。でもオスカーたちはこの階段見ても何も考えなかったのかな?」


どうやら、庶民なぼくとビアンカさんは最初見たときから大階段の存在に呆気に取られていたが、生粋な貴族のオスカーさんたちには見慣れたものだったので、ギルドにこんな大階段があることを不思議に思わなかった……らしい。


「この階段の吹き抜け部分を塞いでしまえば、二階のスペースが広がると思うんです」


「同感。メンバーだって増えるかもしれないしね」


「はい。それにオスカーさんはギルドマスターだからといって特別な扱いはしなくていいと言ってましたけど、マスターの執務室は必要だと思います」


「……確かに。あたしが世話になったギルドは大きい組織じゃなかったけど、あったわよ、マスターの執務室」


「ですよね? しかもこんなに大きな屋敷のギルドハウスですよ? これでマスターの執務室がないのは、ちょっと……」


ぼくとビアンカさんは腕を組んでうんうんと頷きあう。

ぼくの足元でレオもみょんと出した触手で腕を組んでいるフリをしている。


「それに、オスカーが侯爵家の人間だってわかれば、貴族からの依頼が舞い込んでくるかもしれないわ。そのときに貴族の使者をそこら辺に座らせておくことできないし」


だいたい貴族の依頼なんて秘密保持が絶対なんだから、執務室以外のどこで話をするのよ……とビアンカさんはため息をついた。


「じゃあ、それを踏まえて、まずはスペースを振り分けましょう」


「そうしましょう」


ぼくとビアンカさんは主にに屋敷の一階と二階に必要な部屋を書き込んでいった。

ぴょんぴょんとレオも間取り図を見たがっていたから、途中からテーブルの上に体を移動させてあげた。


そして、決まったことは……まず、一階はオスカーさんが壊した正面扉の位置をややズラしてギルド側の出入り口とする。

一階と二階は二つに分けて仕切りの壁を作ることに。

ギルド側の一階には、受付スペースと商談スペースとして小部屋をひとつ、他には医療処置室と武器庫、トイレ。

ギルド側には裏口も作って、裏庭からも出入りできるようにして、基本ギルドメンバーは裏口から出入りする。

裏口から地下に降りる階段も新しく作っておく。


「ねぇクルト。なんでギルドハウスから地下に直接行けるようにするの?」


「前にオスカーさんが地下に魔法の練習場を作りたいって言ってました。裏庭で剣や弓など武器を使う練習場を作るので、ギルドハウスから各練習場に直接行けるようにと思って」


それに、ビアンカさんと相談してお風呂とトイレは男女で場所を分けることにしたからね。

地下に男性用のお風呂を作ろうと考えてます。


「そして二階にマスターの執務室とメンバー同士が話し合うスペース、サロンを作りましょう。あ、そうなるとお茶やお酒が楽しめるように簡易キッチンが欲しいかも……」


お酒、飲みますよね? とビアンカさんの顔を確認すると満面の笑顔で力強く頷いている。


「あ、お茶菓子も欲しいわ。あと、おつまみも」


「わかりました!」


うん、簡易キッチンは絶対必要ですね!













ギルド支部での講習を終えて帰ってきたオスカーさんとディーターさんにも、早速晩ご飯後に書き込みした間取り図を広げてリフォーム案を説明しました。


「ふむ。なかなかよく考えられているな」


「ああ」


オスカーさんは最初、ギルド側二階のマスターの執務室に眉を顰めたけれど、ビアンカさんとディーターさんの説得で渋々了承してくれた。


「まずは地下だな」


地下はオスカーさん希望の魔法の練習場をメインに、現在も使用している食料保管庫とワインセラー、ぼくの希望としてポーションなどを作る調合室。


「魔法の練習場はいいが、魔法障壁を張ってもらうのに金がかかるだろう?」


ディーターさんが厳しい顔でオスカーさんに問いかけるが、オスカーさんは笑って首を振った。


「いや。まずは前衛のメンバーを加入させたいが、いずれは魔法使いも加入させたい。そのときに魔法の練習場があるギルドハウスは勧誘のいい目玉になる。お金はかかるが仕方ない。どうせなら上級魔法攻撃にも耐えられるものを張ってもらうさ」


「……あのぅ、調合室はいいんですか?」


これは完全にぼくの要望で、正直必要な部屋かと言われたら「否」と答えるものだ。


「なんとなくだが……、そのうちクルトかスラ……レオが調合ができるような気がしてきた」


オスカーさん、そんな死んだ魚の目をして言われてもぼくは嬉しくないです。

期待するなら、もっとキラキラした目でぼくとレオを見てくださいよ。


「まあまあ、次は一階ね。正面扉はギルド側にだけにして、プライベートスペースは裏庭からの出入りにしたわ」


一階の半分はギルド部分にして、受付や商談室、医療室に武器庫、裏口と地下に降りる階段。

もう半分はプライベートスペースなんだけど、今とあんまり変らずキッチンとダイニング、リネン室と洗濯室。

ギルド側とプライベート側とにそれぞれトイレを設置。


「ギルド側とこちら側を繋げるドアは受付のカウンター内に設置か……」


「はい。受付の人だけがこちら側と行き来ができるように考えました」


「それでね、クルトがギルド側の詳しい間取りは受付のミアちゃんを交えて決めたいって言うの」


ぼくはニッコリとオスカーさんに笑ってみせた。


リフォーム案の説明をする前に、ビアンカさんが言ってくれましたが、ぼくの親友レオもギルドメンバーとして迎え入れようって。

それにオスカーさんはびっくりしたように目を大きく開けて暫し時間が止まったように動かなかったけど、「そう……だな」と認めてくれました。

ディーターさんと一緒にレオの頭部分を優しく撫でて「これからよろしくな」と挨拶までしてくれたんです。


スライムのレオを仲間にしてくれたのなら、ギルドに正式雇用されている受付のミアさんって人を無視するのはよくないです。

しかもギルド側のスペースで一番時間を長く過ごすのは、受付の人です。


「だから、ミアさん? って人の意見も入れて決めないとダメです!」


ぼくは拳を握って力説してみました。


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