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インフルエンサー失踪事件  作者: たま


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13/14

奇策

「私はこういうのは専門では無いのだが…」と前置きしながら遠藤医師が紙にペンを走らせる。

「こういう仕掛けをして猟奇殺人鬼を誘き出すのは、どうだろう?

そして、動画配信者達に噂としてネットに潜む猟奇殺人犯の話を流させネットの誰もが狙われていると言う恐怖を煽らせるんだ。あくまでネットの噂話として。」と紙を差し出した。

「分かりました。ありがとうございます。」鬼丸はその遠藤医師のメモを胸ポケットに収めた。

「さあっ、コレから浮浪者達が来る時間だ。昼間は住人に遠慮して来れないからね。区役所から怒られてるが、早朝の公園で死体を見るよりマシだと思うけどな。」赤ひげが腕まくりをして診察室を開けるとガラス扉の向こうには年を取った浮浪者がボーッと覗いている。

「ヒッ!」潤は悲鳴を上げる。

浮浪者は亡霊と人間のちょうど中間みたいな気配がある。実体を持った亡霊に近い。

「さあ、皆まず検温だ!それから不調を聞く!待ち合い室に並んで座ってくれ!」と戸山公園の赤ひげが浮浪者を招き入れた。

すっかり暗くなった公園の中を突っ切り西早稲田の地下鉄入り口まで着いた。やはり都内最凶の心霊スポットと言われるだけあって夜の公園内は不気味だ。

「ふう、あの人、ただの医者かな?なんか違う気がする。」鬼丸が胸ポケットに手を当てて首をひねる。

(こころざし)がある医者なんじゃないの?普通では無いわよ。

都内の医者は皆ビジネスくさいのに良い医者じゃない?」潤は好感度MAXだ。

「う〜ん、それはスゴいんだけどさ。」鬼丸がクシャクシャと頭をかく。何か腑に落ちないのだろう。


池袋に戻り明智にメモを渡す。

「ありがとう。僕が動けないから助かったよ。

ネットの会話機能は信用してないんだ。匂いと気配と手や足の所作の方が大事だからね。見えない物ほど重要なんだよ。」と鬼丸の様子を見てる。

「…あの人は、ただの医者ではない気がします。大事な部分はメモを渡すし…盗聴されてる事を念頭に置いてた気がします。」鬼丸が言葉を選びながら話す。

「君が感じたならその通りだと思う。

それにこの彼の作戦は有効だと思う。私が警察と通じてることも念頭に置かれてる…イヤな奴だな。」メモを見ながら明智が言葉とうらはらにニヤついている。

「先生でも、そんなイヤらしい顔するんですね。」潤は明智がスケベ顔になる事に驚いた。

性欲の欠片も感じない男だが。

鬼丸と同世代だと思うが、70過ぎの文代さんとの2人暮らしに満足してるようだ。彼が他者との関わりにこんな表情するのが意外だ。

「緑川夫人もそれなりにそそられましたよ。でも、遠藤先生はもっと甘くて蠱惑的(こわくてき)だ。」と謎な発言をした。

「あの…50がらみのオヤジですよ、遠藤医師は。」潤はだんだん気持ち悪くなってきて思わずツッコんでしまった。

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