第126食 奇跡の二枚引き! 超すごい新入生と、もっとすごい在校生!
ミツルの愛するラッキーガール・秋風ノイチがやってくれた。
画面に映し出されていたのは、奇跡ともいえる、まさに神引きの新入生たち――。
まずは投手のネームプレート。
真っ赤に染まる、長方形のタグに刻まれていたのは『鵜飼』の二文字。
「いやぁ……」
この時点で、ミツルのテンションはダダ下がりしていたが、もっと悪いことに、捕手の方でもミラクルが起こっている。
キャッチャー・鵜飼。
「なんかすごくない? こんなこと、あるんだね?」
「うーん……」
そういう引きはいらなかった。
鵜飼が二人揃ってしまったら、余計に思い出してしまう。
というかそれはもう、現実再現と言って差し支えなかった。
「あ、名前変えられるじゃん。どうしよう……みちゅは、どっちがウカウカ先輩だと思う?」
「……青いほうじゃない?」
やっぱり、そういう流れになりますか。
ぶっちゃけ、どっちでもいいし、どうでもいい。
ただ、金髪の姉の方が嫌いなミツルは、賢そうな青色のネームタグだけは、あの女に与えたくなかった。
「よし! じゃあ、ピッチャーが『所長』……で、キョッチャー? キャッチョー?」
「……キャッチャーね」
このレベルから始まります。
ポジション名もままならない、しかし名前の入力は終わり、いざ『栄冠ナイン』プレイ開始――。
「ねぇ! 始まったよ、みちゅ!」
「そうだね。楽しそうだねぇ、ノンちゃんは」
不意に現れた、デジタル鵜飼シスターズによって、ミツルの気持ちはすっかり冷めかけていた。
「どうすればいいの、これ!?」
だが、ノイチが本当に楽しそうに尋ねてくると、不思議と心がホットになっていく。
ミツルは一つ深呼吸をして、彼女に優しくレクチャーを始めた。
「まぁ、ゲームなんだから、好きなように楽しめばいいんだよ。赤いマスだけは、悪いイベントが確定で起こるから、そこだけ踏まないようにして……」
「白ばっかじゃん! このマスは、止まるとどうなるの?」
「白マスはランダムイベントだから、何が起こるか、俺にもわかりません」
「えぇ……大丈夫かなぁ?」
意外と、ビビり。
ノイチのこういったところが、ミツルのハートをくすぐってくる。
「不安だったら、止まらないようにすれば大丈夫。カードに書かれてる数字の分だけマスが進むから、とりあえず、そこにある青マスでも目指してみたら?」
「青はなにが起こるの?」
「いいことが起きます」
「行く!」
秋風ノイチ、発進。
すごろくのようになっているマス目を移動したミニキャラが、青マスの上に止まる。
ボタン連打&連打。
ピコーン♪という効果音と共に、高速でメッセージが流れていく。
》》所長の練習効率が上がった
》》先輩の練習効率が上がった
》》王の練習効率が上がった
》》フタコブラクダの練習効率が上がった
「ちょっと待ってもらっていいかなぁ!?」
化け物OBを思わせる部員の名前と、助っ人外国人にしては、やたらとアニマル成分の強い名前の表記が見えた。
「どうしたの?」
「いや、なんか……」
どっちからツッコめばいいのやら。
思わず躊躇する。
どちらにせよ、ステータス画面を開かなければならない。
「ごめん。少しだけ、チームメイトの能力を確認したいかも。コントローラー、貸してくれる?」
「うん、いいよ」
インターフェースをペペペと動かし、ステータス画面を開く。
「これか……」
三年生部員の中に、それはいた。
ネームプレートは、内野手を表す黄色。
間違いなく普通の黄色だが、転生OB【世界の王】だと思うと、金色に輝いて見える。
カーソルを合わせ、いざ、『王』のステータスを確認する――。
選手名:王 陳皮
ポジション:三塁手
ミート:B
パワー:A
そのほか全部:G
特殊能力:広角打法 威圧感
「いや、誰だおめぇ!!」
サード、王陳皮。
残念ながら【世界の王】ではなかったが、しっかりと強いのがまた腹が立つ。
「紛らわしい……」
でも、でも、でも。
まだ、問題児は残っている。
『フタコブラクダ』は、どう考えたっておかしい。
ゴビ砂漠から、はるばる野球留学をしに来たのか。
そんなことを思いながら、見つけたその名前。
二年生。
ネームプレートは王陳皮と同じ、内野手の黄色。
今度は、そちらのステータスを確認する。
選手名:フタコブラクダ 輝義
ポジション:一塁手
走力:A
守備力:B
そのほか全部:G
特殊能力:走塁E 盗塁E
「…………」
足腰が丈夫でいらっしゃる。
野球じゃなくて、陸上の方が向いているのでは。
思うところはいろいろとあったが、すべてが噛み合わないその能力値を見たミツルは、無言でノイチにコントローラーを返した。
すると彼女は、珍しくオドオドとした様子で尋ねてきた。
「ど、ど、ど、どうなの?」
純粋なまなざしが見つめてくる。
チクチクと胸を刺されるような思いをしたミツルは、彼女にこのゲームを楽しんでもらいたい一心で、言葉を紡ぐ。
「……大丈夫。このチームは強いです」
「ほんと!? よかったぁ」
これでいいんだ。
しょせんは、ゲームなのだから。
名前がどうとか、能力値なんてものは、どうでもいい。
隣にいる、ワンダフル・スペシャルガールが嬉しそうに遊んでくれれば、それが正解。
「六月に練習試合ができるようになるから、まずは、そこまで進めてみようか?」
「うん!」
深夜の栄冠ナインは、始まったばかりだった。




