掃除
私が踊る日に、露店を出したいと言ってきた人が帰る。
暫くすると、稲荷神社の遣いの人が近づいて来た事に気がつく。
私は社に向かって、
「漸く、来たようですよ。」
と呼びかけた。これで、社の中に戻る事が出来る。
社の中から、佳央様の、
「そうみたいね。」
と答える声がする。私は、
「はい。」
と相槌を打ち、次の言葉を待ったが、誰も次の言葉を掛けてこない。
私は仕方がないので、
「では、佳央様。
出迎えるのに掃除道具を持っているのも変ですので、取りに来て下さい。」
とお願いしたが。佳央様は、
「別に、良いんじゃない?」
と心外な返事。
私は、
「古川様。
私も、中で待っていた方が良いですよね。」
と呼びかけると、古川様は、
「そう・・・ね。」
と同意した。私は、
「そういう事ですので、掃除道具の回収をお願いします。」
と改めて言うと、佳央様は、
「分かったわ。」
とゆっくり立ち上がった。
佳央様はこちらに歩くながら、
「でも、帰った後も掃除を続けるなら、片付けなくても良いんじゃない?」
と指摘する。私は、
「掃除は、参拝客に来た理由を尋ねるための口実でしたよね?」
と反論すると、佳央様は、
「そうね。
でも、そろそろ掃除をした方が良いんじゃない?」
と反駁。
すると、氷川様も、
「建物が新しいから気づかたんだが、やっておらんのか?」
とこの会話に入ってきた。古川様が、
「強力な呪いで、・・・保護しているから・・・ね。
当分は・・・不要・・・よ。」
と答えたが、氷川様は、
「それで傷は付かぬじゃろうが、最低限のは必要じゃろうが。
砂埃やら、落ち葉やら。」
と文句を付ける。佳央様が、
「気になるなら、氷川様がやれば良いんじゃない?」
と提案。だが、古川様は、
「面倒事を、・・・思いついた人がやれば良いというのは駄目、・・・かな。
それだと、・・・誰も提案しなくなるから・・・ね。」
と却下した。私は、確かに、それだと誰も指摘したがらなくなるなと思い、
「そうですね。」
と同意すると、氷川様は、
「うむ。
しかし、誰かがやらねばならぬ。」
と思案顔になる。
古川様が、
「氏子が沢山いたら、・・・当番制で人を出してもらう事も・・・出来るのだけど・・・ね。」
と少し溜息を吐く。私は、
「他所の神社では、そのようにしているので?」
と聞くと、古川様は、
「小さな神社や祠は、・・・近くの集落で・・・管理している場合が多いの・・・よ。」
と答えた。
氷川様が、
「稲荷神社では、自分達でやっておるが・・・。」
と首を捻ったが、あそこの神社は人手がある。
私は、
「竜山神社が、大きさ的にも参考になるかもしれませんね。」
と話すと、古川様も、
「そう・・・ね。」
と頷く。私が、
「では、明日の話し合いの後、それとなく聞いてみますね。」
と伝えると、氷川様は、
「そうじゃな。
あまりそういった話はせぬものじゃが、問題ないじゃろう。」
と許可を出した。古川様が、眉間に皺を作る。
私は、小言が始まる前にと思い、
「はい。」
と同意した後、ふと思い、
「・・・覚えていればですが。」
と忘れた時の為の予防線を張ったのだった。
本日、かなり短めです。
後書きも、お休みです。