明後日にするって
座敷にて、夕食前の雑談をやっていると、下女の人達が近づいてくる気配がした。
佳央様が、
「蒼竜様から、伝言よ。」
と話しかけてきた。私は、
「竜帝城に集まる件ですか?」
と確認すると、佳央様は、
「ええ。」
と頷き、
「正式には、明日の午前中、屋敷に来るそうだけど、明後日にするって。」
と内容を伝えてくれた。私は、
「ありがとうございます。
明後日ですね。」
と反復すると、更科さんから、
「竜帝城に出かけるの?」
と内容を聞いてきた。
私は、
「はい。
今回は、巫女様達が総出で、里の瘴気の流れを制御する事になりまして。
その打ち合わせに行ってきます。」
と話すと、更科さんは、
「へー。」
と感心したように声を出した。
ここで、下女の人が座敷横の廊下に到着する。
そして、
「夕食にございます。」
と声をかけてきた。佳央様が、
「ええ。」
と許可を出すと、障子が開く。
下女の人が、膳を運び込む。
皿の上には、中央に茶色がかった黄色で四角いものがあり、松の葉が添えてある。
卵料理には違いないのだろうが、どのような味か、想像がつかない。
他は、大根と人参の膾、白菜のお漬物、もやしの味噌汁と、後は白いご飯だ。
私は、
「この四角いやつが卵料理でしょうかね。」
と言うと、更科さんは、
「多分、そうね。」
と返事をした。
佳央様が号令をし、食事が始まる。
先ずは、味噌汁。そして、ご飯。
いよいよ、謎の卵料理。
箸で一口で食べられる大きさに切り、口に運ぶ。
茶色は醤油の色かと予想していたが、全く違う味。
私が、
「これは、甘いですね。」
と言うと、更科さんは慌てて口の中を片付けてから、
「そうね。」
と返した。が、その一言だけ。更科さんは、私が感じている以上に、これを気に入ったようだ。
──話しかけたら、怒られるな。
そう思った私は、更科さんが箸を置くまで、話しかけるのを控える事にした。
食事が終わり、雑談の時間となる。
古川様が、
「また、厄介な事になったものじゃな。」
と話しかけてきた。どうやら、竜の巫女が憑依しているようだ。
私は、
「ひょっとして、結界がなくなったのでしょうか?」
と確認すると、古川様は、
「とっくにな。」
と返してきた。佳央様も、
「だから、蒼竜から連絡、来たんじゃない。」
と追い打ちをかける。私は、
「そう言えば・・・。」
と苦笑いすると、古川様が、
「ただ、稲荷神の方は解けておらぬようじゃな。」
と付け加えた。私が、
「そうなのですね。」
と首を傾げると、古川様は、
「まぁ、この件は、あまり詮索せぬ事じゃな。」
と言ってきた。私は、
「どういう事でしょうか?」
と確認すると、古川様は、
「言うた筈じゃが?」
と質問を受け付けない様子。
私は、少しくらい良いじゃないかと思いつつも、
「分かりました。」
と返事をした。
所用のため、本日、かなり短めです。(というか、タブレットを落っことして画面にヒビが・・・(T-T)
作中の「掌程の葉っぱの上に、茶色がかった黄色で四角いもの」は、梅仁卵の想定となります。
この梅仁卵、出典は万宝料理秘密箱で、梅の種の硬い殻の中に入っている白い仁を取り出し、お湯に浸して灰汁抜きした後、すり鉢ですって細かくし、砂糖と古酒を加えて更にすり、卵を加えて混ぜた後、四角い容器に入れて蒸した料理となります。
因みに、「梅は食うとも核食うな、中に天神寝てござる」という言葉がある通り、梅、特に青梅の仁は毒素が含まれていますので、生で食べるのはやめましょう。
梅干しの仁については、既に毒素が抜けていますので、割ってそのまま食べても大丈夫です。
・梅仁卵・求肥卵
https://codh.rois.ac.jp/edo-cooking/tamago-hyakuchin/recipe/065.html.ja
・ウメ
https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%82%A6%E3%83%A1&oldid=105072810




