表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
654/680

ご神木に

 竜山神社に向かう私達の一行(いっこう)に、偶然(ぐうぜん)会った蒼竜様と雫様が加わる。

 蒼竜様は、何らかの事件を追って竜山神社に向かう途中との事。

 また、雫様は、『妙な気配』を追ってここまで来たのだと言う。

 その『妙な気配』について佳央様に確認した所、出所は竜山神社がある方角という事で、一緒に行動する事となった。


 (しばら)く、雪道を歩く。

 空気は冷たく、空は分厚い雲に(おお)われている。

 今にも雪が降り出しそうだが、今の所は持ってくれている。


 竜山神社があると思われる道に、差し掛かる。

 私は雫様に、


「やはり、妙な気配は濃くなっているのですか?」


と質問をすると、雫様は、


「そやな。」


と肯定する。やはり、妙な気配の出所は、竜山神社のようだ。

 蒼竜様に、


「この件、荒事(あらごと)になったりするのでしょうか?」


と確認すると、蒼竜様は、


「判らぬ。」


と答えた。そして、


「向こうの出方(でかた)次第(しだい)ゆえな。」


と付け加える。私は、


「そうですね。」


と頷き、


「話し合いだけで決着するなら、それが一番なのですが。」


と気持ちを伝えると、蒼竜様が、眉根(まゆね)()せる。

 私は、


「やはり、荒事になるので?」


と、もう一度確認をすると、蒼竜様は、


「それは、いればな。」


と返した。私は、


「誰がですか?」


と確認すると、蒼竜様は、


「山上も、あれを追ってきたのであろう?」


と首を(かし)げた。

 私達が探しているのは子狐達なので、話し合いで済ませる事が可能だ。

 だが、蒼竜様が探しているのは、別の犯人に違いない。


 そう考えた私は、子狐達の発言を思い出し、


「ひょっとして、第三の巫女の事ですか?」


と確認すると、蒼竜様は少し考え、


「なるほど、第三の巫女か。」


()に落ちた顔。私は、


「違うので?」


と聞くと、蒼竜様は、


「恐らく、同一人物なのであろうな。」


と答えた。雫様が、


「第三の巫女?」


と首を傾げる。私は、


「子狐達がいなくなる前、仲間だの、巫女様だのという言葉は聞きまして。」


と説明したのだが、雫様は、


「山上。

 話が見えへんのやけど。」


と文句を付け、


「稲荷神社で()ってた子狐を、その第三の巫女っちゅうんが連れてって、悪ささせとったっちゅう事か?」


頓珍漢(とんちんかん)な整理をした。私は、


「いえ。」


と否定し、


「子狐達は、前に白狐が使っていた子狐です。

 その子狐達を、悪さをするように(そそのか)す巫女が拾いまして。

 それで昨日、その子狐達を捕まえたのですが、今朝、白狐の下に戻る約束をさせたのに、午後になっていなくなりまして。」


と詳しく伝えた。だが、雫様は佳央様に、


「で、どうゆう事や?」


と説明を求めた。どうやら、私の説明では伝わらなかったらしい。

 佳央様は、


「無理やり纏めるなら・・・。

 ・・・そうね。」


と前置きし、


「元々白狐の所で働いていた子狐達がいたんだけど、白狐が和人に()いた時に行き場がなくなったみたいね。

 で、その子狐達を巫女が拾って手下(てした)にしたのよ。

 だけど、その巫女。

 悪い巫女だったみたいでね。

 竜山神社を中心に、手下にいろんな悪さをさせてたみたいなのよ。

 で、色々あって、私達は子狐達を連れ戻しに行く所なんだけど、途中で蒼竜様と会ってね。

 蒼竜様の方は、多分、元締(もとじ)めの巫女の方を捕まえたいんじゃないかな。」


と説明した。すると、雫様は、


「そうなん?」


と蒼竜様に確認する。

 自分とあまり変わらない話をしているのに、雫様は話の内容が分かったのだろう。

 そう考えると、少しもやっとするが、私の感情とは関係なく話が進行する。


 蒼竜様は、


「まぁ、そのようなものだ。」


と答え、雫様も、


「そか。」


と頷いた。

 話しているうちに竜山神社に近づき、この話は終了となる。



 竜山神社に到着したので、境内(けいだい)を確認する。

 そこには、年季の入った(やしろ)と、それに見合わない大人二人でようやく囲えるような大きな木が一本。

 恐らく、この木がご神木なのだろう。

 私は、


「立派な木ですね。」


と見上げると、佳央様も見上げつつ、


「そうね。」


と同意する。

 私は、上を向いたまま周りを歩き始めると、佳央様も着いてきた。


 佳央様が、


「あれ、見て!」


と指を指す。

 その先を見ると、私の頭よりも高い位置に、いくつか五寸釘(ごすんくぎ)が刺さっているのが見えた。


 スキルを使い、魔法を確認する。

 薄っすらと、紫色。つまり、呪い(紫魔法)が見て取れる


 私は古川様に、


「あれは、(のろ)いでも掛けていたのでしょうか。」


と声を掛けると、古川様は、


「多分、・・・そう・・・ね。」


と返事をした。私は少し(いか)りを込めて、


「ご神木に、このような事をしても良いのでしょうか。」


と言うと、古川様も、


「そう・・・ね。

 ご神木を・・・汚す行為だから・・・。」


と同じく少し怒っている声。雫様が眉間に(しわ)を作り、


「どこでも、おるもんやな。」


と言うと、蒼竜様も、


「うむ。」


と頷く。私は、


「これ、辿(たど)れないですかね?」


と確認したが、古川様は、


(ひも)もないし、・・・難しい・・・かな。」


と駄目な様子。私もよく見たが、確かにこの呪い(紫魔法)からは、紐のような物は出ていない。

 私は、


「どうしましょうか?」


と聞くと、古川様は、


「そうね・・・。」


と少し考え、


「今は、・・・念話も使えないみたいだから・・・。」


と困っている様子。私が、


「重さ魔法で、呪い(紫魔法)を取っちゃいましょうか?」


と提案すると、古川様は、


「そう・・・ね。」


と答えた。私は、


「では、そこの石にでも。」


と早速、(こぶし)程の大きさの石を(ひろ)った。そして重さ魔法を使い、五寸釘から呪い(紫魔法)を引き()がし、石に移した。

 古川様が(あわ)てて、


「えっと・・・。

 まだ、・・・考えていたんだけど・・・。」


と困惑顔。私は、


「『そうね』と言いませんでしたか?」


と指摘したが、古川様は、


「考えるための、・・・『そうね』・・・よ。」


と言われてしまった。どうやら、当然、移すだろうと思い込んでいた結果、そのように聞こえてしまったらしい。

 私は失敗したと思い、


「そうでしたか・・・。」


と半分(うつむ)くと、古川様は、


「ご神木への影響を・・・少なく出来るかもしれないし・・・問題ないと思う・・・わ。」


(なぐさ)めの言葉。が、


「それに、・・・やってしまったものは・・・仕方がないし・・・ね。」


とチクリ。私は、


「申し訳けありません。」


と頭を下げると、古川様は、


「大丈夫だから・・・ね。」


(ゆる)してくれた。私は、


「ありがとうございます。」


と返し、ホッとしたのだった。



 本日も若干短め。

 後、後書きもお休みです。

 (五寸釘(ごすんくぎ)のネタ、「置いてかれるばかりね」で既出だった。。。(^^;)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ