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念話が

 瞑想(めいそう)を終え、目を開ける。

 今更だが、先程の瞑想に、子狐達が出てこなかった事に気がつく。

 周囲を見回したが、ここにいるのは、古川様、氷川様、佳央様の3名。

 (やしろ)(すみ)にも、子狐達はいない。


 私は、


「子狐達を見かけませんでしたか?」


と確認した。氷川様が、


「白狐の所ではないのか?」


と指摘する。私は、


「いえ。」


と答え、


「先程、いませんでしたので。」


と付け加える。

 佳央様が、


「なら、逃げたんじゃない?」


と苦笑い。私は、


「昨晩は、ちゃんと待っていたのですよ?

 流石(さすが)に、あれから1刻(2時間)で逃げ出そうとは、しないと思うのですが・・・。」


と反論したが、佳央様は、


「でも、いないじゃない。」


と事実を突きつける。

 私は、


「確かに、そうなのですが・・・。」


と困り顔で返すと、古川様が、


「やられたようじゃの。」


と笑いを(こら)えるように指摘してきた。

 私は、


「笑う所ではありませんよ。」


と文句を付けたが、


「まだ、笑っておらぬじゃろうが。」


と、もう笑っていると言って良い顔で返してきた。

 ここで、古川様の口調が(なめ)らかな事に気がつく。

 竜の巫女(みこ)様が、古川様に憑依(ひょうい)していたようだ。

 私は、


「いやいや。」


と反論し掛けたが、相手は目上。

 私は、一つ頷いて気持ちを切り替え、


「すみません、巫女様。

 子狐達が、今、どこにいるかご存知(ぞんじ)ありませんか?」


と質問をした。

 古川様が、


「どうやら、仲間の所に戻ろうとしておるようじゃな。」


と答える。

 佳央様が、


「尾行に行く?」


と嬉々とした目。だが、私達は場所を把握(はあく)していない。

 私が、


「巫女様が判るなら、()っておいても良いのでは?」


と水を差すと、佳央様はシュンとして、


「そうだけど。」


とまだ尾行したい模様。

 だが、私は、


「このまま、行き先をお願いしても(よろ)しいでしょうか?」


と巫女様に言うと、古川様は、


「対価はあるのか?」


と聞いてきた。私は、


「お金を取るので?」


と聞き返してみた。だが、竜の巫女様たちは金の亡者。

 (あん)(じょう)、古川様は、


「当たり前じゃ。」


と返してきた。

 私は冗談で、


「では、私の借金の一部を差し上げますよ。

 それで、如何でしょうか?」


と提案すると、古川様は、


たわけが。」


と苦笑い。私も、


「そうですよね。」


と返した。佳央様が、


「じゃぁ、尾行?」


と笑顔になる。私は、正月の準備を任せて出掛けようと、


「氷川様。

 お願いできますか?」


と確認した。氷川様が、


「行っても良いが、また、術に掛けられるやもしれぬ。

 良いのか?」


と聞いてきた。どうやら氷川様は、自分に尾行に行って欲しいのだと勘違(かんちが)いしたようだ。

 私は、


「いえ。

 正月の準備を、お願いしようかと。」


と伝えると、氷川様は、


「それならば、当然じゃ。」


了承(りょうしょ)してくれた。古川様が、


「すると、誰が行くのじゃ?」


と確認をする。私は、


「何か合った時に対処しないといけませんので、古川様にお願いしようかと。」


と伝え、佳央様が真剣な表情だったので、


「後は、佳央様にも。」


と付け加える。すると古川様は、


「なるほどの。

 じゃが、子狐達の処遇は山上に任されておった筈じゃ。

 山上も、行かねばならぬぞ。」


と指摘した。子狐達については、既に、一晩反省した事で終わりにしている。

 だが、竜の巫女様からそう言われると、これもその一環(いっかん)のように思えてくる。

 私は、


「もちろんです。」


と分かっていたように話し、


「申し訳ないのですが、今の場所だけでもお教え願えないでしょうか?」


とお願いした。古川様は、


「まぁ、仕方あるまい。」


と了承してくれた。



 子狐達の追跡を、早速、開始する。

 谷竜稲荷(ろくりょういなり)の社を出た所で、私は、


「すみませんが、先導をお願いします。」


と古川様に依頼する。すると、古川様は、


「えっ・・・と?」


とキョトンとした顔。事情が飲み込めていない模様。

 私は、仕方がないと言っていたのに、無責任なと思いながら、


「申し訳ありません。

 先程、竜の巫女様から子狐達の居場所を教えていただける事となりまして。

 確認していただいて、宜しいでしょうか?」


とお願いすると、古川様は、


「えっと・・・。

 一先ず、・・・念話(ねんわ)するわ・・・ね。」


と目を閉じた。が、


「繋がらないわ・・・ね。」


と困惑顔。私は、


「庄内様とか、坂倉(さかくら)には如何でしょうか?」


と確認したが、古川様は、


「分かった・・・わ。」


と言ったものの、念話後は、


「こっちも、・・・駄目・・・ね。」


と繋がらない様子。私は、


「巫女様達に、何かあったのでしょうか?」


と確認したが、古川様も、


「判らない・・・わ。」


と困り顔。私は、


「これも、子狐達のいた組織にいると思われる、謎の巫女様の仕業(しわざ)でしょうか?」


と確認すると、古川様も、


「判らない・・・わ。」


と答えあぐねている模様。私は、社の中では出来た事を思い出し、


「社の中に入って、もう一度確認をお願いしても?」


と依頼。古川様は、


「分かった・・・わ。」


と頷いて、皆で社の中に戻った。

 氷川様が、


流石(さすが)じゃな。

 もう、見つかったか。」


と感心する。私は、


「いえ。

 外で、念話が出来ませんでしたので。」


と説明すると、氷川様は古川様を見て、


「そのような事があるのか?」


眉根(まゆね)()せる。古川様が、


「ええ。」


と頷くと、氷川様は、


「里の中程度で、普通はありえぬのじゃが。」


と目を瞑る。恐らく、念話が出来るか(こころ)みてくれているのだろう。

 古川様も座り、目を瞑る。


 すると、先ずは氷川様が、


「確かに、繋がらぬの。」


と困惑顔となり、続いて古川様も、


「やっぱり、・・・駄目・・・ね。」


と念話が出来ない様子。社の内外は関係ないらしい。

 つまり、社の外に出た時に、何者かが念話の妨害(ぼうがい)を始めたという事か。

 私は、これは一大事だと思い、


「少し、瞑想します。」


と言って、目を(つむ)った。



 早速、白い空間に入る。

 先程は稲荷神の()御霊(みたま)禍津日神(まがつひのかみ)の分け御霊、白狐がいたと言うのに、今は、周囲には誰もいない。


 前も後ろも、右も左も、念の為、上も下も確認する。

 だが、白い空間が広がるのみ。

 この状況、一体誰に聞けば解決するのだろうか。


 仕方がないので、瞑想を止めて状況を説明しようと思ったが、ふと、ある疑問が頭を()ぎった。


──白狐までいないのは、不自然ではないか?


 なにせ、私の中は二階建てになっていて、白狐はその上にいる筈だ。

 そして、(たま)に出掛けるようだが、今は稲荷神の分け御霊もいる事になっている。


 私は、


「稲荷神の分け御霊はいらっしゃいませんか?

 白狐でも良いので、お答え下さい!」


と呼んでみた。

 すると、薄っすらと影が出てくるのが分かった。

 私は、その影に、


「稲荷神の分け御霊ですか?

 それとも、白狐ですか?」


と声を掛けると、その影から、


「違うが。」


と出てきたのは、禍津日神の分け御霊だった。

 私は、


「事情が今ひとつ飲み込めないのですが、ご説明いただいても宜しいでしょうか?」


と頭を下げてお願いをすると、禍津日神の分け御霊は、


「まぁ、良いだろう。」


と了承してくれた。そして、


「先ず、何者かによって、この周辺に強力な結界が貼られた。」

 そして、それに伴い、稲荷神の力と念話も封じられておる。」


と答えた。私は、


「なるほど、だから念話も出来ないし、稲荷神の分け御霊に姿も見えないのですね。

 ですが、白狐はどうして見えないのでしょうか?」


と質問すると、禍津日神の分け御霊は、


「狐は、稲荷神の眷属(けんぞく)だろうが。」


と当然のように言ってきた。つまり、稲荷神の力が封じられたのだから、眷属も見えなくなるという事らしい。

 私は、


「そういう事情でしたか。

 禍津日神の分け御霊様は稲荷神様とは関係がないから、見えたのですね。」


と納得すると、禍津日神の分け御霊様も、


「うむ。」


と頷いた。

 私は、


「一先ず、この周辺だけだというのでしたら、場所を移動して確認する事にします。」


と伝えると、禍津日神の分け御霊は、


「その程度、対策されておると解らぬか。」


と苦笑い。どうやら、固定の結界ではないらしい。

 私は、


「一人だけ、少し離れて念話すればよいかと考えたのですが・・・。」


と伝えたが、禍津日神の分け御霊は、


「今考えたのだろうが。」


と、また苦笑い。私も、


「筒抜けなのでした・・・。」


と苦笑い。禍津日神の分け御霊は、


「まぁ、それでも可能ではあるだろう。」


と一応、答えてはくれたが断定はしなかった。離れる距離によるからなのかもしれない。

 私は、


「有難うございます。

 他に、場所とかもお教え願えないでしょうか?」


と聞くだけ聞いてはみたが、禍津日神の分け御霊は、


「高く付くぞ?」


と一言。禍津日神の分け御霊との取引なので、不幸が増すに違いない。

 私は、


「今回は、()めておきます。」


と質問を打ち切る事にし、


「今、聞いた話だけでも十分に助かります。

 有難うございました。」


とお礼を伝えたのだった。


 本日、PC不調のため、後書きはお休みです。(--;)

 (OSから再インストールだと辛いので、いろいろ試行中。。。)

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