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半刻(30分)もしないうちに

 屋敷まで帰って昼食を()った後、また、神社に移動する。

 外は、佳央様が『今の時期にしては(めずら)しい』と言う程の快晴。午前中、空に浮かんでいた雲は、すっかりなくなっている。

 そんな中、私は午前中と同じく、ひたすら藁叩(わらたた)きをしていた。


 (かたわ)らには、叩き終わった藁が積んであるが、まだ、終わっているのは全体の5分の1程度。

 まだまだ、時間がかかりそうだ。


 そんな事を考えていると、佳央様が溜息(ためいき)()いて、横槌(よこづち)を振るう手を止めた。

 そして、


「和人。

 これ、重さ魔法使っちゃ駄目(だめ)?」


と聞いてきた。私には判断がつかないので、


「古川様。

 いかがでしょうか?」


とお伺いを立てると、古川様は、


「えっと・・・、問題ないわ・・・よ。」


と答えた。私が、


「だそうです。」


と言うと、佳央様は、


「そう。」


と一言。早速、重さ魔法で藁を(つぶ)した。

 そして、


「どう?」


と言って藁を私に差し出した。横槌で(たた)いた場合に比べ、同じ方向に潰れているように見える。

 私の中で答えは出ていたが、少し藁をしならせて確認し、


「何方向からかやったほうが良さそうですね。」


と結果を伝えると、佳央様は、


「あぁ。

 そういう事ね。

 解ったわ。」


と返した。私が藁を返すと、佳央様は、少し藁を回転させながら、何度か重さ魔法を掛けていった。

 そして、


「これならどう?」


と藁を差し出し、再確認を求めてきた。先ほどと違い、均一に柔らかくなっているように見える。

 私は、


「良さそうですね。」


と返事をしながら藁を受け取り、実際にしならせて確認をした。

 予想通り、問題ない。

 私は、


流石(さすが)、佳央様です。

 この調子でお願いします。」


()めながら藁を返すと、佳央様は満足気に藁の感触を確かめてから、藁叩きが終わった方の山に、それを加えた。

 上出来だったので、私も重さ魔法で潰す方法に切り替える事にする。


 先ずは一握(ひとにぎ)り分、叩いていく。

 途中、前に道を作っていた時の事を思い出す。

 あの時は、私が大雑把(おおざっぱ)に草を抜いた後、大月様と更科さんで残った草を抜き、佳央様が重さ魔法で道を(なら)していた。


──土と藁で違いはあるが、あの時の佳央様のように(めん)で重さ魔法を使えば、一気に藁叩きが出来るのではないだろうか?


 そう考えた私は、床に藁を並べ、なるべく均等(きんとう)に力を加えるよう気を付けながら、面で重さ魔法を使った。

 予想通り、一気に藁が潰れる。

 だが、これで出来上がりではない。

 先程、佳央様にも指摘した通り、いろいろな方向から力を掛ける必要があるからだ。

 藁を手で()でるように(ころ)がし、また、重さ魔法で藁を潰す。

 これを何度も繰り返すと、藁は丁度(ちょうど)良い塩梅(あんばい)の柔らかさになった。


 私は、


「これなら、早く終わりそうですね。」


と声を掛けると、佳央様も私の様子を見ていたらしく、


「そうね。」


と同意した。更科さんが、


「重さ魔法で潰すなら、藁叩きする量に(こだわ)る必要はないものね。」


と説明する。私は、


「はい。」


と返事をして、


「ですので、古川様と更科さんは、一先ず今叩いているのが終わったら待っていて下さい。」


と二人に作業を中断するように言った。

 更科さんが、


「分ったわ。」


と承知し、古川様は、


「なら・・・、(なわ)を編んでるわ・・・ね。」


と次の作業に入ってくれる模様。私は、


「はい。

 そうして下さい。」


と指示をして、佳央様と二人で藁叩きの作業を続けた。



 重さ魔法を使って、藁をどんどん潰していく。

 すると、半刻(30分)もしないうちに、藁叩きの作業が終わった。

 言わなかったが、『午前中のうちに提案してくれれば良かったのに』と、(うら)み言を(こぼ)したくなった。


 更科さんが、


「これから、どうするの?」


と質問した。私は、


「はい。

 これから、大七五三縄を作ります。」


と答えると、更科さんは、


「大七五三縄ね。

 それで、どうやって作るの?」


と聞いてきた。私が、


「先ずは藁を大きく(まと)めて、継ぎ足しながら大きな縄を作ります。

 そして、これを3本作った後、根っこの方を縄で結びます。

 あの、古川様が編んでくれているやつですね。」


と言うと、更科さんが、


「あぁ、あれね。」


と古川様が編んでいる縄を指差した。

 私は、


「はい。

 あれです。

 それで、その縄でんで、後は()るようにしていけば完成ですよ。」


と残りを説明すると、更科さんは、


「そうやって作るのね。」


と感心した様子。古川様が、


「もう作るなら・・・、人手・・・、呼ぶわ・・・ね。」


と念話を始めようとした。普通、大きな七五三縄は、大人でも一人で()む事は出来ない。

 だが私には、ある算段(さんだん)があった。

 私は、


「いえ。

 重さ魔法でやれば、恐らく、ここにいる人手だけで作れる筈ですよ。」


と言うと、佳央様は、


「どうやるか知らないけど、出来るの?

 私、作った事ないわよ?」


と不安な様子。私は自信があったので、


「大丈夫ですよ。

 ちゃんと、指示しますから。」


と伝えると、佳央様は少し考え、


「分ったわ。

 一応、やっては見るけど、上手く行かなくっても文句は言わないでよね。」


と乗り気ではなさそうだが了承してくれた。

 私は、


「はい。

 勿論(もちろん)です。」


と安心してもらうために笑顔を向けると、佳央様は、


「分ったわ。

 ちゃんと指示してね。」


と返したのだった。


 本日も少し短めです。(--;)

 今回はねたを仕込めていませんが、最近、太陽の活動が活発なのでそちらからひとつ。


 オーロラは太陽の活動が活発になり磁気嵐が発生したときに見られる現象なのだそうです。

 このオーロラですが、江戸時代の明和7年(1770年)の秋に京都でも見えたという記録があるのだそうです。

 東羽倉家の日記に記載されていたそうで、日本で見られるオーロラは低緯度オーロラとなるため空が赤くなったと思われます。

 遡って1200年頃に藤原定家も見たそうで、当時は「赤気」と呼ばれ、不吉とされたとのこと。更に日本書紀にも赤気の記載があるそうですが、当時は磁気緯度(じきいど)が10度高かったので、今よりもオーロラが見られる条件が整っていたのだとか。


・江戸時代のオーロラ絵図と日記から明らかになった史上最大の磁気嵐

 https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20170920.html

・オーロラ

 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%A9&oldid=100291266

・地磁気

 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%9C%B0%E7%A3%81%E6%B0%97&oldid=97951641

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