表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
557/681

雪掻(ゆきか)き

* 2023/9/16

 誤記を修正しました。

 分け御霊、白狐との話し合いが続く。

 勿論、話題は私の借金の返済方法についてだ。

 私は、


「すみません。

 私も一つ案を出しましたので、次は白狐に出していただいても宜しいですか?

 先程は、流石(さすが)(さく)でしたし。」


と聞いてみた。すると白狐は、


<<他にか?

  色々、あるじゃろうが。>>


と面倒くさそうに言ったが、


<<例えばじゃ。

  崩れた山に、元々生えていたものを再生すれば、文句も言われまい?

  小童(こわっぱ)は、青魔法(植物魔法)が使えるのじゃからな。>>


と、またしても私が思いつかないような案を出してくれた。

 先程は、地権者を取り込めて踏み倒す話。

 今回は、山を復活させて、なかった事にしてしまおうという話。


 私は、


「そのような手がありましたか!」


と感心したのだが、分け御霊が、


「そういう手もあるの。

 じゃが、崩れた範囲は広いのじゃ。

 全体に青魔法(植物魔法)をかけるは、無理があるぞ?」

 

と否定した。言われてみれば、確かにその通りだ。

 だが、この案自体に現実味はないにしても、何か思いつくきっかけになるかもしれない。

 私も、


「・・・仰る通り、無謀(むぼう)ですね。」


と分け御霊に同意しつつ、


「ですが、私に見えている物がいかに(せま)いか、気付(きづ)かせられました。」


と白狐もヨイショした。白狐が、


<<そういうのは、要らぬわ。>>


と苦笑いし、分け御霊まで、


(まさ)に。」


と微妙な顔をする。

 先程、『やりにくい』と文句を言われたばかりだったので、私も苦笑いしたのだった。



 分け御霊が、


「少々、長居(ながい)が過ぎた。」


と上を見上げると、白狐も、


<<もう、朝ですか。>>


と一言。どうやら、そろそろ起きる時間らしい。

 分け御霊が、


「では、また神社での。」


と消えていく。私も、


「はい。」


挨拶(あいさつ)を返し、


「では。」


と目を覚まそうとした所、直前に白狐から、


<<筍の他にも、色々考えてみるがよいぞ。>>


と提案した。確かに、他の作物も行けるかもしれない。

 私は、


「ありがとうございます。

 そうします。」


と答えてから、目を開けたのだった。



 まだ、日の出前。

 雨戸も締め切られているので、目を開けても()(くら)

 その雨戸から、ガタガタと鳴る音はない。恐らく、今は風が()んでいるのだろう。

 私は、晴れていると良いなと思いながら、(かわや)に行くべく布団から抜け出した。


 ブルリと震えが来て、思わず、両手両足を体につけて丸くしゃがみ込む。

 思ったよりも寒いので、スキルで温度を確認してみると、冷たい時に見える青を通り越し、白っぽい所がちらほら。室内とは思えない寒さだ。

 黄色魔法(身体強化)を集め、寒さ耐性を強化する。

 それでも寒いので、誰も見ていない事を確認し、丸くなったまま、爪先(つまさき)だけで廊下の方に移動した。


 障子を開けると、廊下が一面、真っ白になっていた。

 なるべく体の熱を奪われないよう、爪先(つまさき)立ちでお勝手に向かって移動する。

 (はた)から見れば可笑(おか)しな体制で、移動する。下女の人と()わないよう、常に気配を確認しながら前に進む。

 途中、見回りの下女と思われる人が近づいてきたので、寒いのを我慢(がまん)して立ち上がる。


 すれ違いざま、


「おはようございます。」


と挨拶をすると、下女の人が、ペコリとお辞儀(じぎ)で挨拶を返した。


 下女の人をやり過ごした後は、すぐにまた丸くなる。

 が、温度が下がった着物が肌に張り付き、また、ブルリと震える。

 それでも、立っているよりは増しと思い、爪先立ちでの移動を再開する。


 お勝手まで辿(たど)り着き、外に出るために草履(ぞうり)()く。

 戸の向こうは、もっと寒いに違いない。

 引き戸に手を掛けるのが、これを引くのが躊躇(ためら)われる。

 だが、ここで立ち止まるわけには行かない。


 もう一段黄色魔法(身体強化)を集め、寒さ耐性を強化する。

 不安に思いながらなかなか開かない戸を無理やり開けると、戸の半分の高さまで雪の(かべ)が出来ていた。


──こんなに雪が!


 私は、そのまま外に出るのも難しいだろうと思い、雪掻(ゆきか)きが出来る道具がないかと、周囲を見回した。

 戸の(わき)に、木製で1尺(約30cm)も幅のある木鋤(こすき)が置いてあるのを見つける。

 これを使って、雪掻(ゆきか)きをしろという事に違いない。

 その隣には、3尺(約90cm)四方の木の板に紐が付いている物もあるが、使い方が判らない。


 鋤を手に取り、先ずは、鋤を縦に持ち、1尺半(約45cm)程、雪に差し込んでは抜いて切れ目を作る。

 次に、鋤の幅で、もう一本、切れ目を作る。

 更に、鋤を水平に持ち、2本の切れ目を入れた下側に差し込んで、重さ魔法で軽くしつつ雪を持ち上げる。

 雪は、お勝手の中に捨てるわけにも行かないので、なるべく遠くに放り捨てる。


 鋤の幅を置いて横にもう一本、縦の切れ目を入れる。

 そして、また水平に鋤を差し込み、雪を持ち上げる。

 これで、除いた雪が2尺(約60cm)程の幅になる。

 持ち上げた雪は、勿論(もちろん)、なるべく遠くに放り捨てる。


 これを下に、下にと何度も繰り返し、雪が膝下(ひざした)になるまで()り下げる。

 膝下まで掘れば、後は踏み固めれば良い。


 これを繰り返し、道を作っていく。

 だが、掘れども掘れども、厠どころか井戸にさえ辿(たど)り着けない。


 私が途方に暮れながら奥に4尺(約120cm)ほど掘り進めた所で、見回りと思われる下女の人がやって来た。

 下女の人が、


「おはようございます、山上様。」


と挨拶をする。私も、


「おはようございます。」


と挨拶を返すと、下女の人は、


「昨晩は、思いの外、雪が積もっていたのですね。

 後は、私の方で雪を溶かしますので、山上様は少しお休み下さい。」


と言ってきた。私は、


「いくら竜人とは言え、この高さの雪は大変ではありませんか?」


と聞くと、下女の人は、


「そのような事はありませんよ。」


と返事をし、赤魔法(火魔法)でどんどん雪を溶かし始めた。

 そして、


「このようにすれば、さほど時間もかかりませんので。」


と説明した。下はぐしょぐしょ。だが、私が雪掻きするよりも早いのは間違いない。

 私は、


「助かります。

 すみませんが、宜しくお願いします。」


とお願いしてお勝手で少し休む事にした。



 暫くして、お勝手に佳央様がやってくる。

 佳央様が、


「下女の人にお願いしたのね。」


と一言。私は、


「おはようございます、佳央様。

 はい。

 始め、私が雪掻きをしていたのですが、途中で下女の人が来て、変わってくれると申し出てくれましたので。

 今、赤魔法(火魔法)でどんどん溶かしてくれていますよ。」


と現状を説明した。だが、佳央様は、


「これだと、足元が濡れるのよね。」


と文句を付けた後、


「明日からは、重さ魔法で押し固めて。

 ぐしょぐしょは(いや)だから。」


と言われてしまった。私は、あまり上手く行く気はしなかったが、


「重さ魔法ですか?

 もし、何か良い方法があるなら、教えてくれませんか?」


と聞いてみた。すると、佳央様は、


「あったでしょ?」


と言いながら、戸の脇を指差した。

 そこにあったのは、用途不明の紐の付いた木の板。

 私は、


「それですか?」


と首を(ひね)ると、佳央様は、


「そうよ。」


と肯定し、それを持ってお勝手の外に出た。私も佳央様の後ろについていき、外に出る。


 佳央様は、


「見てなさい。」


と指示を出すと、それを雪の上に置いた。

 そして、器用にその上に乗ったかと思うと、重さ魔法を使った。


 板が、ズンと雪に沈む。


 佳央様が、


「解った?」


と聞きながら板をどけると、そこの雪が、板に押されて綺麗に固まっていた。

 私は、


「なるほど、そうするのですか。」


と感心し、自分でもやってみたくなったので、


「すみません。

 貸していただいても良いですか?」


とお願いすると、佳央様は、


「良いわよ。

 慣れるまで大変だけど、頑張ってみて。」


と板を貸してくれた。


 それを受け取り、雪の上に置く。

 そこによじ登ろうとしたのだが、板が傾き、ズルリと(すべ)る。

 私は、


「これは、確かに大変ですね。」


と苦笑いした。

 単に板を載せ、重さ魔法で板を重くする。

 これだけでも少しは沈むが、せいぜい1尺(約30cm)ちょっとだけ。佳央様の半分も沈まない。

 佳央様が、


「なるほど、先に軽く固めてから乗るのね。

 今度から、私もそうするわ。」


と言った。私は、本当はそういうつもりでやったのではなかったのだが、


「はい。」


と肯定して、板の上に乗った。

 そして、重さ魔法で一気に沈ませる。

 なるほど、こうすると深くまで沈む。

 板をどけ、恐る恐る、自分で固めた所に乗ってみる。

 すると、思ったほど足も沈まず、大きな問題はなかった。


 佳央様は、


「明日から、出来そうね。」


と笑顔になったので、私も、


「はい。」


と笑って返した。

 更科さんがやってきて、


「楽しそうね。」


と笑顔を向けてきた。私は、


「はい。」


と肯定し、


「佳織、ちょっと見ていて下さいね。」


と断って、早速、私は、板を雪の上に置いた。

 そして、重さ魔法で一段沈ませた後、自分も上に乗り、重さ魔法を使う。

 一気に下まで下がった所で、私は、


「こうやって、雪に道が作れるのですよ。

 面白くありませんか?」


と言うと、更科さんは、


「そうね。

 でも、私には無理かも。」


と雪を踏んでみせた。

 私は、更科さんもやりたいのだろうと思い、


「そうですね。

 二人で乗ってみますか?」

 

と提案すると、佳央様から、


「これだから、新婚は・・・。」


と苦笑いされてしまった。

 下女の人が戻ってきて、


「厠まで通しました。

 どうぞ、お使い下さい。」


と言ってきた。私は、


「ありがとうございます。

 助かりました。」


とお礼を伝えると、下女の人は、


「いえ。

 また、何かありましたらお声がけ下さい。」


と返したが、私が持っている板を見て、


「雪掻きでは、呼ばれないかもしれませんが。」


と付け加えた。

 私は、


「どうでしょう。

 佳織がお願いするかもしれません。」


と伝えると、更科さんから、


「私は、これがあるから。」


と言って、足元を指差した。

 見ると、かんじきを履いている。

 私は、こんな便利な道具を持っていたのかと思いながら、


「かんじきですか。

 雪の上では、便利ですよね。」


と苦笑いすると、更科さんは、


「昨日、(もら)ったのよ。

 和人にも貸すから、使いたかったら言ってね。」


と申し訳なさそうに付け加えた。私は、


「ありがとうございます。

 では、その時は宜しくお願いしますね。」


と更科さんの頭を()でたのだった。


 本日、ネタを仕込み損ねたので、後書きはお休みです。


 後、来週土曜日は人間ドックに行くのでお休みの予定です。

 悪しからず・・・。(~~;)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ