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昨晩の件は口実で

 竜帝城の中にある竜帝の間にて、赤竜帝への説明が終わる。

 赤竜帝が、不知火様、佳央様、大月様と私を残し、後の人達を下がらせる。


 赤竜帝は竜人化をすると、着物を着始めた。

 そして、着替えが終わると、


「ここからは、普段どおりで良い。」


と言いながら、こちらにやって来た。ふんわりとした、柔らかな香りが(ただよ)う。

 不知火様が、


「そうは言っても、(わきま)えろよ。」


と一言。赤竜帝は、


「硬い事を言うな。」


(おっしゃ)ったが、不知火様は、


玄翁(げんのう)様が、蟄居(ちっきょ)したのだ。

 俺も別に良いとは思うが、誰かが指摘する役をすべきだろうが。」


と苦笑い。赤竜帝は、


「そのような役、無くても良いぞ?」


と軽く笑ったのだが、不知火様は、


(ひと)()がりが(あや)うい事は、赤竜帝も知っているだろうが。」


眉間(みけん)(しわ)()せる。

 赤竜帝は、


「まぁ、そうなのだがな。」


と赤竜帝に軍配が上がらなかった様子。

 不知火様が、


「まぁ、指摘も形だけだがな。」


と苦笑いすると、赤竜帝は、


「それでも、身を(ただ)す役に立つ。」


と答えた。すると不知火様は軽く頭を下げ、


勿体(もったい)ないお言葉。」


謝意(しゃい)を示した。赤竜帝は、途中までは冗談で返していたが、最後だけきちんと返したといった所か。



 赤竜帝が、


「さて、本題に入るか。」


と一言。表情は穏やかなので、悪い話ではないに違いない。

 私は、


「何か、御用でしょうか?」


と確認するうと、赤竜帝は、


「何か気づかぬか?」


と聞いてきた。私は、何の事だろうと思いながら、周囲をキョロキョロして、前との違いを探す。

 が、さっぱりわからない。

 私は、


「申し訳ありません。

 判りません。」


降参(こうさん)し、他の人はどうだろうと思ったので、


「佳央様、判りますか?」


と話を振った。すると佳央様は嫌そうな顔をして、


「そうね・・・。

 天井が綺麗になってるとか?」


と指摘する。赤竜帝は、


「確かに、今朝別の絵柄の物に取り替えたが、他には気づかぬか?」


と当たってはいるものの、当てて欲しい回答ではなかった模様。

 私は天井を見上げながら、


「なるほど、これは立派な絵ですね。

 (まぶ)しいくらいです。」


と感想を言うと、赤竜帝は、


「そうなのだが、他にもあるだろう?」


と袖を振りながら聞いてきた。


──まさか、新しい着物だとか?


 だが、赤竜帝がそんな事でいちいち言う分けがない。

 私は、


「大月様は、如何(いかが)ですか?」


と確認したが、大月様も首を(かし)げ、


「いや。」


と答える。

 私は、先程から赤竜帝が袖を降るたびに香りがする事に気が付き、


「気を悪くしたらすみません。」


と前置きし、恐る恐る、


「ひょっとして、この香りでしょうか?」


と聞いてみた。竜帝の間に、蒼竜様が入ってくる気配を感じる。

 赤竜帝は、


「うむ。

 良い香りであろう?」


とやや自慢げに言うと、後ろから蒼竜様が、


「他国から取り寄せたそうだからな。」


と赤竜帝が自慢した根拠を説明した。

 赤竜帝が、


「それを先に言うな。

 蒼竜。」


と困った顔で言うと、蒼竜様は、


「昨夜、白檀(びゃくだん)が届いてからこればかりではないか。」


とこちらも困り顔。赤竜帝は、


「・・・まぁ、そうだな。」


と認めた。私は、昨晩の件は実は口実で、この(にお)いを()がせるのが目的だったのではと疑いつつ、


「好きな物なのですから、仕方ないのではありませんか?」


と助け舟を出してみたのだが、赤竜帝は、


「そうだな。」


と少々決まりが悪そうに返した。

 どうしたのだろうと思い、何となく蒼竜様の方を見ると、蒼竜様は問題ないとばかりに頷いた。

 私は、どうして蒼竜様が頷いたのだろうかと不思議に思ったのだった。

 

 本日も短め、、、というか、後書きを書きたいがためだけのお話。。。(^^;)


 作中、竜帝城の天井についての記述がありましたが、城の天井には色々な絵柄が描かれており、例えば、二条城では花をモチーフにした絵が多く描かれていました。

 これになぞらえて、竜帝城でも、天井には花をモチーフにした金箔を用いた絵が(えが)かれている想定です。


 もう一つ、作中で白檀(びゃくだん)が出てきますが、こちらはご存知の方も多いとはお思いますが、香木の一種となります。

 白檀は日本には仏教とともに入ってきましたが、日本では栽培できませんので、当時から輸入物のみとなります。(小笠原諸島に近縁種が生息しているそうではありますが)

 この白檀、絶滅危惧の入口のVUというものに分類されているそうです。


 あと、「匂いを嗅がせる」という表現がありますが、香道(こうどう)では、匂いは聞くものなのだそうです。


・二条城

 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E4%BA%8C%E6%9D%A1%E5%9F%8E&oldid=94816816

・ビャクダン

 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%83%93%E3%83%A3%E3%82%AF%E3%83%80%E3%83%B3&oldid=92278548

・「白檀(びゃくだん)」の輸入について

 https://www.customs.go.jp/kobe/boueki/topix/h27/2015_4sandalwood.pdf

香道(こうどう)

 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E9%A6%99%E9%81%93&oldid=92800252

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