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午後にまた

 朝の(みそぎ)が終わり、朝食の時間になる。

 更科さんと二人で座敷に行くと、既に古川様と佳央様が座布団に座っていた。


 私は、


「おはようございます。

 遅くなりました。」


と話し掛けながら座敷に入ると、佳央様が、


「たまたまよ。」


と返した。遅れた事に、特に思う所は無いようだ。

 下女の人が、


「失礼します。」


と断り、朝餉を運び始める。

 膳の上には、芋巻卵(いもまきたまご)とその横に緑のくるりと巻いた物、輪切りの大根の味噌煮に黒い何かがかかった物、後は梅干しと白いご飯、蕪菜の味噌汁が乗っている。

 私は、


「この緑のは何ですか?」


と聞くと、下女の人が、


「それは、青海卵(せいかいたまご)と申しまして、卵の白身に青菜の汁を加え、蒸したものです。」


と説明してくれた。私は、


「あぁ、これは青菜の色でしたか。」


と納得すると、下女の人は、


「はい。」


(うなづ)いた。



 食事が終わる。

 私は、もういい加減聞かないといけないだろうと腹を(くく)り、


「古川様。

 本日は、どのような行事があるのでしょうか?」


と確認すると、古川様は、


「今日は、・・・掃除(そうじ)・・・よ?」


と言った。私が、


「掃除ですか?」


と反復すると、古川様は、


「もうすぐ、・・・年末だから・・・ね。」


と説明した。大掃除という事のようだ。

 私は、


「先日、建ったばかりなのにですか?」


と確認したのだが、古川様は、


「行事だから・・・ね。」


と返事をした。私は、


「行事ですか・・・。」


(あきら)めたのだった。



 谷竜稲荷(ろくりょういなり)に移動し、掃除を始める。

 私は、意味はあるのだろうかと思いながら、天井の隅々(すみずみ)まで竹の先に(ささ)を付けた道具で掃除した。

 それが終わり、道具を手に(やしろ)の外に出る。

 すると、外で大月様が待っていた。

 私は、


「こんにちは、大月様。

 このような所で、どうなさいましたか?」


挨拶(あいさつ)すると、大月様は、


「山上か。」


と挨拶を返し、


「掃除は、終わったか?」


と聞いてきた。私は、


「いえ。

 先程、天井をやったところですので、次は壁や戸の方をやっていきます。」


と答えると、大月様は、


「まだ、掛かりそうだな。」


と一言。私もそう思ったので、


「はい。」


と返すと、大月様は少し困った表情(かお)で、


「午後にまた、竜帝城に登城(とじょう)する事は出来るか?」


と確認してきた。私は、


「少々お待ち下さい。」


と言って社に入り、古川様に、


「すみません、古川様。」


と声を掛けた。古川様は、


「話は、・・・聞こえてた・・・わ。」


と返し、


「午後なら、・・・大丈夫・・・よ?」


と言ってくれた。私は、最後が疑問形だったのにひっかかりは感じたが、


「ありがとうございます。」


と返事をすると、古川様は、


「変わりに、・・・外の掃除を、・・・大月にやらせて・・・ね。」


と付け加える。

 私は、


「・・・聞いてみます。」


と返事をし、また社の外に出た。

 大月様が、


「聞こえておった。

 こちらも次の予定を確認するゆえ、少々待て。」


と聞こえていた模様。私は、


「分かりました。」


と返事をしたものの、二人で直接離してくれればいいのにと苦笑いしてしまった。


 暫くして、大月様が、


「手伝えそうだ。」


と返事をする。私は、


「だそうです!」


と少し大きめの声で古川様に呼び掛けたのだが、古川様は返事をしてくれなかった。

 私は社に行き、


「古川様?」


と声を掛けると、古川様は、


「山上。

 面倒でも、・・・ちゃんと動いて・・・ね?」


と軽く(しか)られてしまった。私は、


「聞こえているのにですか?」


と確認したのだが、古川様は、


「そういうもの・・・よ。」


と返してきた。どうやら、仕来りだったようだ。

 私は、


「分かりました。

 それで、何を手伝ってもらえばよいでしょうか?」


と確認すると、古川様は、


「熊手で・・・ね。」


と指示を出す。私は、


「分かりました。」


と返事をて社の外に出ると、大月様に、


「すみません、大月様。

 聞こえていたとは思いますが、熊手での掃除をお願いします。」


と依頼した。大月様が、


「うむ。」


と了承する。私は、


「では、後ほど。」


と挨拶をして、社の中で壁の掃除を始めたのだった。


 本日、かなり短めです。


 作中、「緑のくるりと巻いた物」が出てきます。

 こちらは、女中の人の説明でもありましたが、青海卵(せいかいたまご)を想定しています。

 例によって、出典は「万宝料理秘密箱」(通称、「卵百珍」)からとなります。


 また、「輪切りの大根の味噌煮に黒い何かがかかった物」は、大こん土亀汁(どんがめじる)となります。

 大根の皮を剥いた後、1寸(約3cm)に切り、よく茹でて味噌汁に入れて良く煮た後、黒ごまと山椒を擂った物を掛けた物なのだそうです。(誤訳していなければ・・・)

 こちらの出典は、「大根一式料理秘密箱」(通称、「大根百珍」)からとなります。


 もう一つ、作中の掃除は「煤払(すすはら)い」の想定です。

 この煤払いですが、旧暦の12月13日に行われていたそうで、江戸時代の頃、多くの地域でこれが終わった後に鯨汁(くじらじる)を食べる習慣があったのだとか。


青海卵(せいかいたまご)

 http://codh.rois.ac.jp/edo-cooking/tamago-hyakuchin/recipe/008.html.ja

卅六(さんじゅうろく) 大こん土亀汁(どんがめじる)

 https://dl.ndl.go.jp/pid/2536547/1/22

・掃除

 https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E6%8E%83%E9%99%A4&oldid=94809890


〜〜〜

 最後、4/1の時にも書きましたが、今年のGWは数年ぶりに実家に帰省する予定です。

 GWの更新は行わないか、行っても超短文となる予定ですので、悪しからず。。。(^^;)

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