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石段で屯(たむろ)してる人達

 闇世の中、稲荷神社の石段に到着する。

 見上げると、階段には何人かの人影があった。


 私は佳央様の耳元で、


「何者でしょうか。」


と聞くと、佳央様も判らなかったようで、


「さぁ。」


と返事をする。私は、


「そろそろ返事が来ないと、困るのですが。

 取り返しの付かない事になってもいけませんので。」


と暗に竜の里が大火(たいか)に包まれないか心配している事を伝えると、佳央様は、


「そうね。」


と同意する。私は、


「参拝するふりをして、横を通ってみますか?」


と聞いてみると、佳央様は、


「多分、それは駄目よ。

 だって、その後、戻ってこれなくなるでしょ?

 それよりも、ここで様子見をした方が良いんじゃない?」


と返事をした。私は、


「どうしてですか?」


と理由を尋ねると、佳央様は、


参拝(さんぱい)するか迷ってたって、説明できるでしょ?

 こんな時間に、石段で(たむろ)してる人達がいるんだから。」


と答えた。確かに、夜中に屯している集団というのは、怖いかもしれない。

 私は、


「なるほど、そうですね。」


とその案を了承した。だが一つ、この案には確認しないといけない事がある。

 私は、


「それで、どうして夜中に参拝するのかと聞かれたら、どう答えれば良いので?」


と確認すると、佳央様は首を(ひね)って悩み始めた。

 どうやら、そこから先は考えていなかったようだ。

 私が、


百度参(ひゃくどまい)りでしょうか。」


と思った事を言ったが、佳央様は、


「それ、1人でこっそりやるものよ。

 でも、今は2人居るんだから。」


と苦笑い。私は、


「確かに、そうですね。

 ですが、他に代りの案もありませんよ?」


と聞くと、佳央様は、


「それを考えてるのよ。」


と返した。

 佳央様が突然、


「あ、今、古川様から来たから待ってね。」


と連絡が来たことを告げ、目を(つむ)る。

 私は、もう解決したと言ってくれないかと思いながら、佳央様を見つめたのだった。



 (しばら)くして、佳央様が目を開ける。そして、


「もうちょっと、待って。

 確認するから。」


と言うと、すぐにまた目を瞑る。


──一体、何を確認するのだろうか?


 私は、もやもやしながら、もう一度目を開けるのを待った。

 佳央様は、また直ぐに目を開けると、


「不知火様に聞いたわ。」


と何故か古川様以外の人の名前を出した。私は面食(めんく)らって、


「古川様ではなくてですか?」


と確認すると、佳央様は、


「忘れてたわ。」


と苦笑いし、


「さっき、『あの一団は役人』って言われてね。

 真偽(しんぎ)を確認してたの。」


と答えた。その前に、次の火付けはあるのか、ないのか、私としては、そちらの方が気になる。

 だが、順番なのだろうと思い直し、私は、


「そうでしたか。

 それで、どうでしたか?」


と質問した。すると、佳央様は、


「ええ。

 本物だそうよ。」


と返し、


「ここは問題ないわ。」


と付け加えた。私は、


「そうでしたか。

 それで、元々問い合わせていた火付けの続きはあるのですか?」


と確認すると、佳央様は、


「今夜はないって。」


と答えた。私は、


「そうでしたか。」


一息(ひといき)着いたのだが、改めて考えると、『今夜は』と限定した。

 そして、佳央様が、


「ただ、どうも火付けの犯人は違うみたいね。」


と付け加えたので、次があるのだと確認する。私は、


「つまり、別の日に火付けがあるという事ですか?」


と確認すると、佳央様は、


「そうみたい。」


肯定(こうてい)し、


「私達、大月様の方に行ったけど、多分、別の方に逃げたんだと思うわ。」


と犯人の行動を推測する。私は、


「なら、あの2人は無実だったのですか?」


と聞くと、佳央様は、


「あの2人に誘導されたのは、間違いないみたい。」


と答えた。私は、


「つまり、始めから3人目が動いていたという事ですか。」


と状況を確認した。佳央様は、


「そういう事ね。」


と同意した。私は、


「その逃げた犯人を探しませんか?」


と提案したのだが、佳央様は、


「それは、役人の仕事よ。」


一蹴(いっしゅう)。そして、


「もう遅いし、帰るわよ。」


と苦笑いした。私は心配で、


「確かにそうなのですが、大丈夫なので?」


と確認すると、佳央様は、


「こういうのは、私達、門外漢(もんがいかん)でしょ?」


と返した。私は知識不足で、


「えっと・・・、すみません。

 ・・・『もんがいかん』と言いますのは?」


と尋ねると、佳央様は、


「専門家じゃないって意味よ。」


と答えた。私は、


「あぁ、そういう意味でしたか。」


と納得し、


「確かに、そうですが・・・。」


と返す。すると佳央様は、


「小火が起きたでしょ?

 あれで、役人が動けるようになったそうよ。」


と言った。私は、


「不知火様の判断で動いても大丈夫なので?」


と確認すると、佳央様は、


「違うわ。

 巫女様の先見で、小火以降は動いて良いと出たそうよ。」


と返した。私は、それならそうと、始めから説明してくれれば良いのにと思いながら、


「分かりました。

 なら、(まか)せて帰りましょうか。」


と帰宅するのに合意した。



 屋敷に戻り、佳央様と分かれる。

 そして私は、更科さんの待つ部屋に入ると、


只今(ただいま)、戻りました。」


と挨拶をした。

 更科さんが、


「おかえり。

 無事みたいで良かったわ。」


と私を心配していた事を伝え、


「それで、どうだった?」


と現状を確認する。私は、


「今日の所は、問題ないそうです。

 ですが、別の日に又、火付けがあるかもしれないと言っていました。」


と答えると、更科さんは、


「そっか。

 じゃぁ、また夜に出掛けるのね。

 でも、あまり無理をしないでね。」


と心配そうだ。私は、更科さんが安心するようにと思い、


「はい、分かりました。」


と笑顔で答えたのだった。


 本日も少し短めです。


 作中の百度参(ひゃくどまい)りは、同じ寺社(じしゃ)に百回(百日)お参りをする事で願いを成就(じょうじゅ)し易くしようという、参拝の様式の一つです。

 この百度参り、人に見られないほうが良いだとかいう話もあり、夜中にする人が多いとの事です。このため、作中でも山上くんは、百度参りに偽装してみてはどうかと提案しました。


 ちなみに、元は百日参る形態だった様ですが、日数的に無理という願い事もありますので、神社の入口と出口を百回往復して参拝する形に変わったのだそうです。そして、これを数え間違えないようにと、百度石(ひゃくどいし)という物が(もう)けられたのだとか。


・百度参り

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