表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/680

思ったよりも伸びてないな

 田中先輩が唸っていると、外から組合長室の扉が叩かれ、


「会議中、申し訳ありません。

 横山さんと、その、ニコラ様というお連れの方がいらっしゃいました。」


と声がした。声からして里見さんだろう。

 ただ、私はニコラ様というのを知らなかった。他の人を見回したのだが、私と同じく知らなかったようで、首をひねっていた。

 田中先輩が、


「横山さんは竜の里に一緒に行ってきたから、部屋に入ってもらって構わないだろ?・・・ですか?」


と言うと、上野組合長は、


「うむ。

 問題なかろう。」


と言った。そして、


「ニコラというやつは何者か聞いているか?」


と質問した。田中先輩は、


「聞いたこと無い・・・です。」


と言った。雫様も、


「うちも、知らんで。」


と言った。上野組合長はこの二人が知らないなら、私と更科さんに聞いても仕方がないと思ったのか、


「里見はどうだ?」


と聞いた。里見さんは、


「なんでも、()()()()()王国の元宮廷魔法師長だとか言っていました。」


と言った。田中先輩が、


「?!

 ()()()()()か?」


と驚いた声を上げると、里見さんは、


「確か、そのような感じの国の名前でした。

 その、私は海外には(うと)いのですが、どのような国なのでしょうか?」


と聞いたのだが、上野組合長は、


「・・・うむ。

 用件が終わるまで、別室で待ってもらえ。」


と難しい顔をして指示だけ出した。私も里見さん同様、()()()()ル王国がどんな国か興味があったので、出来れば答えて欲しいところだったが、指示を出す事で誤魔化したように見えた。

 暫くすると、横山さんが組合長室に入ってきた。

 まず横山さんは、


「すみません。

 ハプスニル王国の元国家魔法師の方が来ていたので、遅くなりました。」


と話した。元々、私の鑑定をするために来ると言っていたので、本当は遅刻ではないのかもしれないが、上野組合長は、


「来るなら、もっと早く来るように。」


と注意ていた。

 そして上野組合長は、途中から来た横山さんに配慮して、


「まず、今までの話を(まと)めるぞ。」


と前置きしてから、


「一つ、竜の里で揉め事が合った場合、田中が呼ばれる。

 一つ、山上()が竜人格となられた。

 一つ、佳央様が山上()と暮らすことになった。

 これの他に、何か報告はあるか?」


と呼ばれてからここまでの話を列挙した。田中先輩は良い声を作って、


「俺・・・私からは特に・・・ありません。」


と言った。私も、


「田中先輩に同じです。」


と言うと、上野組合長は、


「そうか。」


と頷いてから、


「では、横山さんには、ハ()スニル王国の件を説明してもらえるか。」


と同行者について説明を求めた。

 横山さんは、


「はい。

 まず、ハプスニル王国というのは、この国から(はる)か西にある王国です。

 今回、盗賊団の本拠地が東方にあるということで、こちらまで殲滅(せんめつ)しに来たそうです。

 ここに来たのは、その中の元宮廷魔法師長のニコラ様とその従者のレモン様の二人です。

 あと、道中の護衛役として超級冒険者の久堅(ひさから)様、道案内として、王立魔法研究所の韮崎(にらざき)がついて来ております。」


と説明した。更科さんが、なぜか嫌そうな顔をした。ひょっとすると、韮崎さんという人は、王立魔法研究所での更科さんのことを知る人物なのかもしれない。

 雫様が、


「それで、何しに来たんや?」


と質問した。横山さんは、


「ニコラ様は、竜和国で無詠唱魔法文化がどんな風に発展してきたか見聞するために来たそうです。

 それで、最初は王立魔法研究所に来たのですが、そこで山上くんが魔法を色で見ることが出来ると聞いて興味を持たれたそうです。

 それで急遽(きゅうきょ)、山上くんに会うためにここまで来られたとのことでした。」


と返事をした。上野組合長は、


「では、これから引き合わせるのか?」


と横山さんに尋ねたのだが、横山さんは、


「一応、蒼竜様にお伺いを立てるくらいはしたいと考えています。」


と言った。上野組合長は、


「なるほど、その方が良さそうだな。

 それで、蒼竜様はいつ頃、お見えになるのだ?」


と聞いた。横山さんは、


「すみません。

 今日、こちらに来るとしか聞いていません。

 ですので、山上くんの鑑定を先に行おうと考えています。」


と言った。そして、


「どうも、ニコラ様には鑑定の能力もあるようでした。

 ですので、二人が合うだけで竜人様にとって門外不出にしたいような情報が抜かれるかもしれません。

 そこで、蒼竜様が来るまでは山上くんはどこかに監禁したいと考えています。」


と付け加えた。上野組合長は、


「そういうことか。

 なら、一旦、大杉の冒険者組合の方に行ってみてはどうだ?」


と言った。雫様は、


「で、そのニコラとかいうやつに、どう説明するんや?

 いろいろ使えるんやったら、探知くらい出来るやろ。

 山上は探知したら特殊な見え方すんねんで。

 多分、ここにおるんもバレとる筈や。」


と言った。上野組合長は、


「特殊な見え方か。

 では、今のままニコラ様に監視でも付けて待機してもらうしか無いということか。」


と言うと、秘書の崎村(さきむら)さんに指示を出した。

 崎村さんが、組合長室から退室する。

 横山さんは、


「鑑定は、どの部屋でやればいいですか?」


と沼田さんに確認した。沼田さんは野辺山さんと相談し、更に、上野組合長とも相談してから、


「ここで鑑定をして下さい。」


と言った。横山さんは、


「分かりました。

 では、道具を取ってきますので、暫くお待ち下さい。」


と言って、沼田さんと一緒に部屋を退室した。暫くすると、横山さんと沼田さんが戻ってきた。

 横山さんは、


「それでは始めたいのですが、場所がないので、そこの机を空けてもらえますか?」


と、組合長の席を指でさした。上野組合長は、


「すまんが、あれは私の席だ。」


と言って、自分の席に戻り、


「その空いた席を使いなさい。」


と指示をした。横山さんは、


「分かりました。」


と言って、接客用の机に道具を広げた。

 前回よりも、鑑定の道具の種類が多い気がする。


「山上くん、ここに来て。

 鑑定するわよ。」


と指示すると、せっせと鑑定を始めた。

 私は、


「一人銀1匁でしたっけ?」


と聞くと、横山さんは、


「そうね。」


と静かに、気も(そぞろ)という感じで答えた。更科さんから、


「仕事中なんだから、話しかけちゃ駄目よ。」


と注意された。ごもっともである。

 少しして鑑定が終わり、鑑定結果を紙に書き出してくれた。

 横山さんは、


「どうせ、(みんな)に見せるでしょ?」


と言ってきたので、私は思わず、


「はい。」


と答えた。野辺山さんは、


「本来は怒るところなのだろうが、竜人様に竜に、立場上、職員は見ることになるし、田中は上司か。

 更科も身内だし、まぁ、問題はないか。」


と納得した。横山さんが鑑定結果を書き出した紙を机の中央に置く。


────────────────────────────────────────


 名前     :山上 広人

 年齢     :十五歳

 性別     :男

 職業     :歩荷

 物理攻撃レベル:八(第一武器:鉈) 五十二(第二武器:素手)

 持久力    :六十

 物理耐性   :四十四

 魔法耐性レベル:四十四

 魔法レベル  :二百三十八

 魔法属性   :重さ→八十八、火→五十六、風→四十四、雷→十二

         身体強化→三十五、植物→三

 保有魔法属性 :なし

 スキル    :(わら)編み、黒竜の威嚇、重量軽減、魔力色鑑定

         闘気色鑑定、温度色判定

 保有魔法   :魔力集積、重力弾、着火、冷却

 魔力集積副魔法:身体強化、植物育成、岩石破砕


────────────────────────────────────────


 田中先輩は、


「思ったよりも伸びてないな。

 というか、お前、本格的に拳骨(げんこつ)一本だな。」


と苦笑した。野辺山さんも、


「確かに。

 普通、主に第一武器が伸びるんだが・・・、拳骨だけがどんどん伸びている感じだな。」


と明らかに笑い出しそうだ。雫様は、


「いや、これ、ネタやろ。

 ありえへんで。

 まぁ、な。

 確かに、二つ名通りやけどな?

 これは無いわ。」


と既に笑っている。

 私は、


「それで、一般的にはどのくらいの冒険者に当たるのでしょうか。」


と聞いてみた所、野辺山さんは、


「そうだな。

 あくまで目安だが、超級冒険者に手がかかったくらいのレベルだな。」


と説明した。私は、そんなに上がっているのかと思ったが、田中先輩が、


「まぁ、超級冒険者になるためには、試験があるからな。

 漢字が書けない山上は、どれだけ実力があろうとも、中級止まりだな。」


と言った。沼田さんは、


「今のところは、中級冒険者になるための講習も受けていないから、初級冒険者止まりですけどね。」


と付け加えた。野辺山さんは、


「せっかく実力があるんだ。

 ちゃんと漢字を勉強して、超級冒険者まで登るようにしろよ。

 勿体(もったい)()いんだからな!」


と資格試験を受けるように促してきた。

 田中先輩は、


「まぁ、資格が在ったほうが(はく)も付くしな。

 ただ、超級冒険者は、座学で覚えることが結構あるらしいからな。

 結構、時間取られるそうだぞ?」


と脅してきた。私は、


「そうですか。

 でも、ひとまず会社でも時間を取ってくれそうですので、講習は受けて中級冒険者に上がっておこうと思います。」


と言うと、上野組合長は、


「下の連中に『これだけ実力があっても、中級にしか上がれない』と勘違いさせたら、やる気も失せるでしょう。

 山上様には是非とも、超級冒険者になるまで十分に勉強をお願いします。」


とこちらも資格を取得するように勧めてきた。

 私は、本格的に漢字を勉強しないといけない状況になって、面倒なことになったなと思ったのだった。


 徐々に外堀を埋められて、勉強を強要されている山上くん。。。

 この手の話は、どこに行ってもあるようです。(^^;)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ